「夢のとりで ーディプラス登場ー」
『ウルトラマンダイナ』第23話
1998年2月14日放送(第23話)
脚本 大西信介
監督 小林義明
特技監督 佐川和夫
深海竜ディプラス
全長 155m
体重 5万2千t
耐圧シールドに反応して海底研究基地トライトンJⅡを破壊した。
触覚から赤い光線を撃ち、巻き付いた相手に電流を流す。
ガッツマリンによるコウダ怒りのブレイクシャーク全弾発射で触角を破壊され、ダイナ・フラッシュタイプのソルジェント光線で倒された。
名前の由来は「深海(ディープ・シー)」かな。
物語
コウダの研究生時代の同期だった藤倉が海底研究基地トライトンJⅡごと何物かに襲われた。
アスカと共に生存者救出に向かうコウダは必死に熱さを抑えて任務に当たるが……。
感想
ネオフロンティア計画の一環として今回は海底開発が取り上げられている。
水圧の恐怖の中で迫り来る海蛇ディプラスはかなりの脅威。
ただ、「決戦! 地中都市」のダイゲルンもだったが、今回のディプラスも悪意を持って人間を襲ったわけではなく「人類が新たな領域に手を出した為に衝突する事になった生物」なので「人類のネオフロンティアを邪魔する障害」で片付けてしまって良いのかと言う疑問はある。
左足の怪我で潜水艦乗りの夢を絶たれても第二の夢である海底研究基地設計の夢を叶えた藤倉はアスカの言う通り強い人だった。それだけにディプラスに襲われて命を落としてしまったのは残念だった。
コウダから藤倉の話を聞いたアスカは仇を取る為にディプラスに挑む。
気持ちは分かるが今は生存者救出が先。しかも後先考えずに攻撃して武器の残数も少なくなってしまった。まだまだ若い……。
一方のコウダは藤倉の心配をしながらもスーパーGUTSの任務を果たそうとする。
無茶をして謝るアスカに「止められなかったのは自分の責任」と答えるコウダ。「目覚めよアスカ」でのヒビキ隊長の先輩とは何かの言葉をちゃんと実行している。
後先考えないアスカと違ってコウダは周りの状況を計算に入れてディプラスから逃れる事に成功するが、藤倉に続いてアスカもディプラスに襲われた事で遂に怒りが爆発する。
「アスカも藤倉もトライトンも! どこまで奪えば気が済むってんだ!! あいつを倒してトライトンを守る!! 夢のとりでなんだ!! あれは俺達の! 俺達の夢を……夢を壊すなぁ!!!」。
考え無しに攻撃し続け、生存者救出よりも攻撃を優先し、迫り来るディプラスに「上等だ!!」とまで言い放つ。普段の冷静に状況を判断して後輩のフォローに徹するコウダからは思いもよらないキレっぷりが凄まじかった。
ヒビキ隊長はあえてコウダをアスカと組ませる。「一人が熱くなればもう一人は冷めてくる。ましてアスカが相手ならコウダもそう熱くはなれない」との事。その考えは見事に当たり、アスカと組んでいる時のコウダはまだ冷静だった。ヒビキ隊長の部下の心情を組み込んでの作戦指揮はかなり的確である。
ところがアスカの代わりにリョウが組む事になり、アスカがディプラスに襲われるとコウダはメチャクチャ熱くなってしまった。まぁ、これは不測の事態なので仕方が無い。因みにコウダが熱くなると今度はリョウが冷静になっていた。
スーパーGUTSの熱い男3人を見ると、アスカからコウダ、そこからヒビキ隊長へと続く一本のラインが見えてくる。実際、『サーガ』や『オリジンサーガ』でのアスカは成長してコウダやヒビキ隊長のような冷静さを身に付けていた。
ディプラスに襲われたアスカのガッツマリンは海底で大破。そこでダイナに変身するが、いくらなんでもバレるのでは? たとえバレなくても海底近くで爆発を受けたアスカが海面にいたのは無理がある。あの状況でアスカが生きているのなら藤倉も生きている可能性があると思うものではないだろうか。ここは何とかしてほしかった。
事件解決後、コウダは星空を見ながら「昔はよくこうやって星を見ていた。忘れかけていたよ。俺だってまだ夢の途中だって事を……」と語り、それを聞いたアスカは「ネオフロンティアって言ったって、まだ宇宙のほんの入り口ですからね」と続け、その言葉を受けてコウダは「だからやりぬかなきゃ……。やりぬく意思があれば……、きっと夢は叶う……」と締める。
今回の藤倉のようにネオフロンティアの犠牲になった人は他にも大勢いるのだろう。しかし、いや、だからこそ、生き残った者は死んでいった者の夢も継いでいかなければいけないのだ。
監督の小林義明さんはウルトラシリーズは今回と次回の「湖の吸血鬼」のみの登板となっている。今回の話で小林監督は「スーパー戦隊シリーズ」「仮面ライダーシリーズ」「ウルトラシリーズ」の日本三大特撮ヒーロー作品全てを手掛けた監督となった。