帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「運命の光の中で」

「運命の光の中で ーガイガレード登場ー
ウルトラマンダイナ』第29話
1998年3月28日放送(第29話)
脚本 吉田伸
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

彗星怪獣ガイガレード
身長 63m
体重 6万2千t
太陽系に侵入してきた直径200kmの彗星はプラズマ百式に搭乗したアスカのファイナル・メガランチャーで破壊されるが、その中からガイガレードが現れてダイナと小惑星で死闘を繰り広げた。
飛行形態で突進し、口から火球を吐く。外皮は光線を弾き、腹部が開いて岩石を飛ばす。
ダイナ・フラッシュタイプのソルジェント光線を腹部に受けて体内から爆発した。
その正体や目的は一切不明だった。
箱の中のともだち」のギャビッシュの着ぐるみを改造している。

 

物語
月面基地ガロアでの新型機のテストパイロットに指名されたアスカ。
そこにはミシナ教官、鬼のダイモン、そしてアスカ・カズマが乗ったまま行方不明になったテスト機プラズマ百式が待っていた。

 

感想
「光に消えた名パイロット」と語られていたアスカ・カズマの真相が遂に明かされる。
今やその全てが極秘扱いとなっているゼロドライブ計画。それはネオマキシマ・オーバードライブ航法を遥かに超える宇宙航法で秒速30万kmの光の速度で宇宙を進むと言う人類が光に挑む前人未到の計画だった。
しかし、最初のテストでゼロドライブ臨界に達したカズマが謎の光に消えてしまい、ゼロドライブ計画は凍結されてしまったのだった。

 

カズマが光に消えた場面を目撃した唯一の存在であるミシナは訓練施設ZEROで育てたシンをゼロドライブ計画のテストパイロットに指名する。
ダイモンにはカズマとの関わり云々ではなくシン個人の実力で選んだと言っているが、やはりカズマの事も考えていたと思う。ひょっとしたら、偉大な父親の影にもがくシンにカズマとの決着を付けさせたかったのかもしれない。
因みにカズマが光に消えた時にミシナが乗っていたのはスノーホワイト改。デザインが変わっているが懐かしい。

 

プラズマ百式の整備担当者はメインのキャラではなかったが、限界を追い求めるカズマの姿勢をシンに伝え、カズマの息子ではなく一人のパイロットとしてシンと接した他、ダイモンの弱さも知っている等、要所を締めていた。
それにしても、シンですら気にする安全装置を全て取り除いてしまうとはカズマも結構無茶な人物である。

 

プラズマ百式を乗りこなせず何度も気絶を繰り返すシン。それでもプラズマ百式に乗り込もうとするがダイモンに倒されてしまう。
ダイモン「今のお前にはこいつは乗りこなせん。何故だか分かるか!? 体力の限界では精神力がものを言う。なのにお前は! 親父に勝つだの負けるだの、んなちっぽけな事に拘っている! 親父はなぁ!! カズマはもっと大きなものの為に飛んでいた。俺達の夢も託せるようなもっとデッカイものの為に! ……そらを飛ぶ意味を、もう一度考えろ! ……。シン……。お前は何の為に飛んでいる?」、
シン「俺は……、俺は……前に進む為だぁ!!」。
カズマの人物像はシンやダイモンの言葉から推察するしかないが、話を聞く限り、地球の人々が夢を託せるような大きな人物だったらしい。それこそウルトラマンのような……。
しかし、今のシンにはまだそこまでの事は考えられない。シンは自分の信念を貫く事でカズマとは違う形でプラズマ百式を乗りこなす事に成功する。
この時のシンはまだ気付いていないが、この「前に進む」と言う信念にやがて周りの人々は夢を託すようになる。

 

ダイモンにとって親友の息子であるシンの成長は嬉しいが、それはかつて親友を失ったゼロドライブ計画を親友の息子で再開する事でもあった。
シンをパイロットから降ろそうとしたダイモンは臆病者だと罵られ、それを認める。
おそらくダイモンの時間はカズマが光に消えた時からずっと止まってしまっていたのであろう。
そこに巨大彗星飛来の報が入り、シンはプラズマ百式で出撃しようとして、ダイモンに止められてももっと大きなものの為に飛ぶ時が来たと答えて出撃する。
巨大彗星を爆破し光から帰って来たシン。そしてダイモンとカズマの写真の横にダイモンとシンの写真が飾られる事になる。
シンをゼロドライブ計画のテストパイロットに指名したのはミシナだが、ひょっとしたらシンにゼロドライブ計画を成功させる事でダイモンの止まった時も動かそうとしたのかもしれない。
実は今回の話の前半にしか登場していないミシナだが色々と考えさせられる人物であった。

 

冒頭で「自分が優秀なパイロットだから選ばれたんだ」とニヤけるシンにヒビキ隊長が「そのニヤけた顔を鬼のダイモンに引き締めてもらってこい」と言っていたが、実際、ラストシーンのシンはかなり引き締まったいい顔をしていた。

 

シンは子供の時に父親と野球で勝負をして自分が勝ったら一日言う事を聞いてほしいと頼んでいたが、カズマが光に消えた為にその勝負は実現しなかった。
シンはそのいまだ果たせない父親との勝負をずっと引きずっているのかもしれない。野球からパイロットに転向したのも父親と勝負する為だった可能性がある。そして遂にその時が来る。地球が氷河期になるかもしれないと言う危機を前に父親と勝負したいと言うシンは自分勝手でワガママと言える。しかし、それこそアスカ・シンなのだ。
「俺、正直嬉しいんです……。ダイモンさんには怒鳴られるかもしれないけれど、俺……やっぱり親父と勝負がしたい……。きっと、これが……、親父と勝負が出来る最初で最後のチャンスだと思うんです……。心配しないでください。俺、必ず帰って来ます」。
そしてゼロドライブ臨界に達したシンはカズマと同じ光に包まれるが、それを超えて巨大彗星を爆破して皆の所に帰って来る。この時、シンはカズマに勝ったのだ。
「父さん……、俺……、生きてるぜ……」。

 

カズマやシンが遭遇した謎の光は人間が限界に達した時に辿り着ける新たな世界への入り口のようなものなのかもしれない。
光に消えた名パイロット、アスカ・カズマ。それは人間の限界を超えて新たな世界に辿り着いた者なのかもしれない。
そしてカズマはシンを導く。シンの思い出の中で、シンの心の中で、そしてプラズマ百式で……。
子供時代のシンはカズマにそらを飛ぶのが怖くないかと尋ねている。
カズマ「怖いさ……。とても怖い……。でもな、父さんは必ず帰って来る。次にそらを飛ぶ為に……、その次にそらを飛ぶ為に……」。
アスカ・カズマ。ネオフロンティア、人間の夢、未来、希望を体現する存在。

 

今回は月面基地ガロアが舞台なのでスーパーGUTSの出番は殆ど無かったが、それでもシンとカズマの決着を望むヒビキ隊長、シンを迎えに行くスーパーGUTS、そらの中でシンの光を見付けるリョウと色々描かれていた。

 

ダイナとガイガレードの戦いはプラズマ百式に乗ったシンと巨大彗星との戦いを擬人化したものと解釈する事も出来る。
今回登場したガイガレードは正体も目的も一切不明だったが、最終章にネオガイガレードが登場しているのでスフィアが関わっている可能性が大きい。
因みにプラズマ百式が発見された冥王星は最終章でグランスフィアが現れた場所とほぼ同じであるが何か関係があるのかな。

 

「西暦2018年、アスカ隊員の活躍により、ゼロドライブ航法は飛躍的に進んだと言われている。」