「ユメノカタマリ」
『ウルトラマンダイナ』第37話
1998年5月23日放送(第37話)
脚本 村井さだゆき
監督・特技監督 服部光則
ゴミ塊物ユメノカタマリ
全長 58m
体重 6万t
アララギ市の捨てられたゴミが勝手に集まって出来た。
ナカジマが言うには「エントロピーの法則に反しているので生物かもしれない」との事。センセーが言うには「捨てられたものの怨みの塊」「捨てられ燃やされ埋められ続けたゴミ達が遂に一斉蜂起して人間に牙を剥いたゴミの反逆反乱」との事。
最初は無害だったが圧縮率が高まって内部が高温になった事でダイオキシンを噴き出すようになった。
ダイナの登場と共に怪獣化する。ダイオキシンやゴミを噴き出し、あらゆる攻撃を吸収する。力比べでもダイナを圧倒するが最後はダイナ・ストロングタイプに空中に放り投げられ、ぶち抜かれてバラバラになった。その後、一週間に亘って空から街にゴミが降り続けたらしい。
かつてゴミ処理場を「夢の島」と呼んでいた事から「ユメノカタマリ」と命名された。
物語
ゴミ、ゴミ、ゴミ。
今日も人間はゴミを出し、ゴミの中に生きる。
いつの間にか人間よりゴミの方が多くなっている事にも気付かずに……。
感想
今回はゴミ問題のお話。こういう話は説教じみた感じになる事が多いが今回はあまりそういう感じにならなかった。
スーパーGUTSはゴミを減らす十項目を読み上げて分別やリサイクルに精を出す。
地球を守るスーパーGUTSが環境破壊してちゃシャレにならんだろ!はごもっとも。
ゴミを減らす十項目の張り紙の9番目に「α号はなるべく落とさないように アスカ、お前だ!」と書かれてある。それ、ゴミ問題と同じレベルで取り上げるものなのかw
でも名指しされたのに張り紙をろくに読まないアスカであった。
フライドチキンをほおばるナカジマとそれを奪わんと虎視眈々と狙うコウダとマイとリョウ。こういう平和な日常の場面って良いなぁ。因みに勝ったのはリョウでした。
物好きが高じてゴミ処理場の管理人に志願して住み着いてしまったセンセー。怪しさ大爆発で最初に見た時は怪獣でも作っているのかと思った。屋上に置いてある人間の骨を象ったオブジェが印象的。
なにやら怪しい液体が入ったフラスコを差し出してアスカに飲むよう勧めるが自分だったら絶対に飲みたくない。
「ゴミの声が聞こえる」と言ってユメノカタマリを殺さないようにしていたが、目の前でどんどん膨れ上がっていくユメノカタマリに殺されそうになってしまう。どんなにゴミの事を考えていても、結局、人間にはゴミの気持ちは分からないものなのだろうか?
20年間廃品回収してきた西岡さんは街の人達に急かされて「ゴミを処分するのが自分の仕事だ」とユメノカタマリに挑むが勝てるわけもなく、結局、センセーと一緒に目の前でどんどん膨れ上がっていくユメノカタマリに殺されそうになってしまう。長年に亘ってゴミを処理していても最後には限界がきてしまうものなのだ。
勝手に集まったゴミやユメノカタマリの事を西岡さんやスーパーGUTSに任せて自分達は何もしなかった大多数の人々。彼らが「便利だから」と道端にゴミを捨てた事でユメノカタマリは成長してしまった。目の前でどんどん膨れ上がっていくユメノカタマリにも危機感を抱かず、ダイオキシンを噴き出すようになってようやく逃げ出すのだが、それでも自分達で責任をとろうとせずに他人に責任を押し付け続けていた。
こういう「ゴミに向き合わない人々」が大勢いる限りゴミ問題は永遠に解決しないであろう。
ダイナ登場と共に恐ろしい怪獣の姿に変化したユメノカタマリ。
ユメノカタマリがゴミの象徴ならダイナはゴミに振り回される人間の象徴と言える。
ダイナはユメノカタマリを倒すがウルトラマンはあくまで怪獣を倒す存在。戦いの後、空から降ってきたゴミを解決するのはウルトラマンではなく人間の務めである。一週間も降り続いたゴミは今までゴミに向き合ってこなかった人間のツケだった。
街に降り続けたゴミ。人々はさぞ困っただろうと思いきや、いつもとさほど変わらない普通の暮らしを送っていた。ゴミが降り続ける暮らしにあっさり慣れてしまったのだ。
いかなる状況にもあっという間に適応してしまう人間のなんと逞しい事か。このまま地球がゴミだらけになっても、おそらく人間は普通に生きていける事だろう。……だから人間はゴミ問題を直視しない?