帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「臨時ニュース」

「臨時ニュース」
ウルトラQ倶楽部』第23話
2004年3月14日放送(第23話)
脚本・演出 小中和哉

 

???
札幌市街地に突然現れた巨大な生物の卵らしき謎の浮遊物体。
物体が開くと巨大な花が咲いて札幌の街を花粉で覆った。
かつてのバルンガ以上のパワーを持っていて様々なエネルギーを吸収していく。

 

物語
札幌市街地に正体不明の巨大浮遊物体が現れる。
あらゆる攻撃を吸収して街を覆っていく物体に対し有効な手段はあるのか?
「歴史から何も学んでいないのか?」と言う万城目の訴えは人々に届くのか?

 

感想
オープニングを中断していきなり始まる臨時ニュース。ラジオドラマで本当のニュースが起きたように錯覚させる演出はオーソン・ウェルズのラジオ『宇宙戦争』を意識したと思われる。

 

いつもは事件を主人公3人から見た話が多いが今回はラジオ中継と言うシチュエーションを使って怪事件に遭遇している一平と言う存在を第三者から見た形になっている。この主人公を客観的に見ると言う構図はウルトラシリーズではかなり珍しい。これは主人公3人が中心にいない話も多く作られた『Q倶楽部』だから出来た話と言える。

 

このような怪事件に詳しい人物としてSF小説家の万城目とルポライターの由利子がラジオのスタジオに招かれる。二人はあるラジオドラマの打ち合わせでラジオ局に来ていたらしい。
万城目達はかつて『Q』で起きた怪事件について語るがスタジオのアナウンサーがそのどれも知らなかった事に大事件も過ぎ去ってしまえば忘却の彼方になってしまうと言う歴史の風化を嘆く事になる。
『Q倶楽部』はメタフィクションの要素が強い作品で今回の話も実際の歴史と劇中の歴史を重ね合わせながら約40年の時間の流れを描いている。

 

「行き過ぎた科学に自然が警告して立て続けに事件が起きた事で世界はアンバランス・ゾーンに突入した」「アンバランス・ゾーンは肥大化した文明を破壊しようとする自然の摂理である」。
これが様々な怪事件を振り返った万城目が出した結論。
万城目は若い時の自分はその摂理に反抗したが今は理解できるとして???を40年前の警告から何も学ばず何も改めない人類への天罰だと位置付けるが、それに対して由利子は人間を上から見下したような見方だと反論し、人間はきっと危機を乗り越えられると訴える。
そんな中、???の影響でラジオの電波が消えていき……。

 

実は今回の話は『Q倶楽部』の制作順でのラストエピソードとなっている。
巨大な花が街を覆う場面は『Q』の制作順でのファーストエピソードである「マンモスフラワー」を思い出す。

 

今回の話の脚本と演出を担当した小中監督は1963年生まれ。他のスタッフが1966年に放送された『Q』の関係者である中、放送当時はまだ生まれたばかりの小中監督が参加して制作順でのラストエピソードを担当した事で40年の歴史とスタッフの世代交代を感じた。