「夢みる石」
『ウルトラQ dark fantasy』第12話
2004年6月22日放送(第12話)
脚本 太田愛
監督 鶴田法男
ウツギ星人
石の力を解放する者で隕石と共に月影町に姿を現した。
「集会」を開いて大人達の夢を探る。
口の中から異様な触手を伸ばして人間に催眠効果をもたらすスタードロップを吐き出す。
「人間は愚かで欲深で虫の良い事ばかり望む」として、スタードロップで子供に戻った大人達を「何も分からずに遊ぶだけの化け物。これこそ人間の真の姿」と語る。
山野洋平に隕石を破壊されると苦しんだ末に口から触手の化け物を吐き出して消滅した。
物語
山奥に隕石が落下した日、ウツギと名乗る怪しげな男が街に現れた。それと共に街の大人達は「集会」と呼ばれる集まりに顔を出すようになる。
感想
『Qdf』では珍しく子供視点で進む話。
子供のレギュラーが続いた昭和シリーズの反動からか平成シリーズ以降は子供が登場する事が少なくなり、登場しても宇宙人の少女のような普通の人間とは違った特殊な子供である事が多い。
第2期ウルトラシリーズのように特定の子供ばかり事件と関わるのは物語や舞台の幅を狭める事になるが、平成シリーズのように一般人の子供が登場しないで宇宙人の少女のような特殊な子供しか登場しないのも物語や舞台の幅を狭める事になるので、たまには今回のような一般人の子供から見た話も作ってほしい。
子供の時は「大人になったら何になりたい?」「将来の夢は何?」と尋ねられるが大人になったら「いつまでも夢ばかり追いかけないで」と言われてしまう。
涼が「現代は皆の夢なんてものは無くて、それぞれ別の夢を求めている」と語るが世の大人達にも共通の夢が一つだけあった。それは「子供になる事」。
子供の時は「未来」に目を向け、大人になると「過去」に目を向ける。しかし、「未来」も「過去」も今ここには無い。今、ここにある時間は「現在」だけである。
ウツギによって子供に戻った大人達が昔の遊びに興じる場面が結構怖かったが、この話に限らず昔懐かしい風景はどこか恐怖も感じさせる。「現在」とは違う「過去」と言う時間が入り込んだが故の異質感が恐怖を生み出しているのかもしれない。
剛一の話によると人々の祈りや信仰の対象となった石は共同体の夢を具現化させる装置で、古代の社会には人間と石の間を結ぶシャーマンがいたらしい。ウツギの正体は謎のままであったがこの話を参考にするとシャーマンであったと考えられる。
洋平はハンカチを忘れて母に持たせてもらっていたが、子供に戻った母がそのハンカチを踏み付けるところを見ると奮起してウツギを倒す。事件解決後、洋平は母に注意されなくてもハンカチを忘れずに持って出るようになる。
又、「夢」は無意識を映す鏡で、子供になる「夢」を見る大人達は子供になりたいと言う願望を抱いている。その大人達の「夢」が現実化する事で「悪夢」な事態が誕生する事になるが、事件解決後、洋平は「怖い夢」を見たと告げる母親に向かって「夢」だからもう大丈夫と告げる。
二つの要素を使って少年の成長が上手く描かれていた。
今回の話は少しずつ異質になって閉ざされていく街の雰囲気が良かった。
『Qdf』は特別な力を持つウルトラマンや特別チームがいないので今回のような閉ざされたシチュエーションになると打開策が殆ど無くなるので恐怖がグッと増す。
今回の話は『ほんとにあった怖い話』シリーズを手掛けた鶴田法男さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。