帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「光る舟」

「光る舟」
ウルトラQ dark fantasy』第15話
2004年7月13日放送(第15話)
脚本 太田愛
監督 原田昌樹

 

物語
「空を飛べるくせに「飛べない」って言い張るもの、なーんだ?」。

 

感想
今回はなぞなぞを解こうとしている涼が冒頭とラストにのみ登場している。
主人公達のすぐ隣で別の物語が紡がれていたと言う今回の構図は「ウルトラマン」と言う絶対的な存在を物語の中心に据えなければならない従来のウルトラシリーズでは難しいもので『Qdf』ならではの話だったと言える。

 

海まで辿り着けたら生まれ変われると言う不思議な舟に相乗りする事になった中年と青年のお話。
30分で全てを語る特撮作品では限られた時間を無駄にしないように出来るだけ意味のある会話のみで物語を構成するが、今回は中年と青年の無意味なダベりを中心に据えて、その無意味に見えるやりとりの中からテーマを抽象的に浮かび上がらせると言う珍しい手法を取っている。その為、深読みすればするほど新たな発見がある話となっている。

 

生まれ変わりたいと願った中年と青年であったが、結局、舟は海まで辿り着かなかった。自分達の人生はいつもこんな感じだったと落ち込むが、そこから朝が来て舟が消えるところを見てみようと言う話になる。
生まれ変わった奴は朝が来て舟が消えるところを見ていないし最初から信じていなかった奴はそもそも舟を貰っていない。舟が消えるところを見られるのは舟を貰ったにもかかわらず生まれ変わるのに失敗した人だけ。
やがて朝日と共に舟は消え、空には美しい虹がかかり、それを見た中年と青年は生まれ変わらなくても良かったかもと思う。
失敗ばかりの人生だったが、舟を海まで辿り着かせるのに失敗したからこそ、この美しい虹を見る事が出来た。この気持ちの切り替えこそ生まれ変わりと言えるのかもしれない。
「人は一生のうちで何度か人生をやり直しているぞと感じる事があります。そんな時にはほんのちょっとした偶然も心を幸福にする事があるのです。生きてさえいれば……」。

 

生まれ変わった中年と青年が新たな人生を送る隣では涼が今日もなぞなぞの答えを考えていた。そして空には飛ぶ舟、飛行船が……。

 

細かい部分だが、どう見ても「赤髪」の青年がエンディングで「茶髪」とクレジットされていたのに驚いた。

 

今回の話は2008年に亡くなられた原田監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。