「小町」
『ウルトラQ dark fantasy』第17話
2004年7月27日放送(第17話)
脚本 上原正三
監督 八木毅
小町
身長 165cm
体重 60kg
ウルツで生産されたアンドロイドK-7181で大衆食堂「来々軒」のアルバイトをしていた。美人で性格が良くて何でもこなせるオールマイティな存在として下町の人気者となる。
最初は若林が示す「愛情」を理解できなかったが後に理解すると結婚して二人で若林の実家がある北海道に移り住んだ。
物語
不器用でうだつの上がらないサラリーマンの若林は行きつけの食堂でアルバイトの小町と出会う。
その運命の出会いが今まで無気力だった若林の人生を劇的に変える事となった。
感想
美人で働き者で優しくておでこで熱を測ってくれて、故障した洗濯機は直せるわそんじょそこらの男より遥かに強いわと完璧すぎる小町。ここまで来ると理想の女性と言うより都合の良い女性と言う感じがして「シンデレラ・コンプレックス」の男性版とも考えられる。(小町の正体を合わせて考えれば「ピグマリオン・コンプレックス」の方が近いかな)
うだつの上がらない男が完璧な女性に救われると言う話で終わらせず、今まで無気力に過ごしてきた若林が生きる目的を見出して奮闘すると言う男性の覚醒と成長が描かれたのが良かった。(でも、若林からの一方通行的な愛情を小町があっさりと受け入れてしまうのはやはり都合が良すぎる感じがする)
今回のゲストは堺雅人さん。特撮作品にあまり関わっていない人達が出演しているのが『Qdf』の面白いところの一つ。
もう一人のゲストは特撮作品ではお馴染みの長澤奈央さん。書道五段で今回のサブタイトルの文字も書いているらしい。
『Q』の「変身」で普通の人間が巨人と言う異質な存在になった途端に世間から排除されそうになったように、『セブン』でダンが自分はセブンと言う宇宙人である事を隠したように、ウルトラシリーズでは異質な存在は人間社会から排除される定めにあった。
しかし、若林も来々軒のおじいさんも小町がアンドロイドと言う異質な存在と知っても排除する事は無く、なんと最後には若林と小町は結婚して新たな生活を始めてしまった。
ウルトラシリーズが誕生してから約40年。遂に異質な存在が自分の正体を隠す事も人間社会から排除される事も無く幸せに生きる事が出来たのだった。
「冷たい人間が増えていくが小町みたいな温かい心を持ったアンドロイドが作られているから大丈夫」と言うナレーション。若林と小町の楽しそうな映像と共に語られているのでハッピーエンドに見えるが、よく考えると、かなりの皮肉と怖さを含んでいる。
どうして小町が来々軒に来たのか経緯は不明のままであった。おじいさんがバラバラになった小町がウルツで修復されている事を知らなかったので「午前2時の誘惑」のようにおじいさんの意思でウルツから購入したとは考えにくく、ウルツ側から勝手に送られてきた可能性がある。
ウルツが小町を送り込んだ目的も不明のままであった。ただの善意か、それとも……。若林を始めとして下町の人達は全員が小町に心惹かれている。もし、ここで小町がガラQのように侵略活動を開始したら……。既に小町に心を支配されてしまった人々は小町を破壊する事が出来るのだろうか? もし、この推測が正しければ小町はウルトラシリーズ最強の侵略兵器となった恐れがある。
小町が車に撥ねられる場面が直接描かれた事に驚いたが『Qdf』らしいなぁとも思った。