帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ヒトガタ」

「ヒトガタ」
ウルトラQ dark fantasy』第24話
2004年9月14日放送(第24話)
脚本 小中千昭
監督 実相寺昭雄

 


帝都大の真柄教授によって作成された球体関節人形
「人間の想念は物理学的な力場へと変換しうる」「人間の想念はその人間が生きている限り続く」「それを有する存在は半永久機関を持つ事になる」と言った真柄教授の研究から誰かに想われる事で存在する「ヒト」となった。
真柄教授の死後は哲学者の成れの果てである門野に引き取られる。
最初は小さな人形だったが真柄教授や門野の想いを受けて成長していった怪物。
門野の死後は姿を消して行方知らずとなった。

 

物語
哲学を捨て、質屋と本と言う他人の記憶に満ちた世界で死ぬ時を待っていた門野は一人のヒトと出会う。
「ワレ思ウ 故ニ ワレアリ」。

 

感想
ヒトは誰かに想われる事で存在するのか?
ヒトは誰かを想う事で存在するのか?
誰も想わず、誰にも想われないヒトは存在していると言えるのか?
ヒトならざるモノであっても誰かに想われたモノはヒトとして存在していると言うのか?
「肉体」だけでなく「心」も備えてしまったヒトの哀しさを愛憎交えて描いた怪作。
これがウルトラシリーズかどうかと問われたら「そうだ」とは答えにくいし、かつて自分の近所のレンタル店で他のウルトラシリーズと一緒にキッズ向けコーナーに今回の話が収録されているDVDが置かれていた時は「これを子供に見せて良いのか?」と思ってしまったのも事実ではあるが、『Qdf』はウルトラシリーズと言っても深夜作品なので中にはこう言う話があっても良いのかもしれない。多分。

 

真柄教授の最後の教え子として渡来教授が登場して真柄教授の狂った研究のあらましを説明する。
同じマッドサイエンティストであるが真柄教授が俗世間との関係を絶って自分の世界に閉じ篭っていったのに対し、渡来教授は様々な人との交流を楽しんでいて、それが二人の行く末を分けたように思える。
因みに渡来教授によると帝都大にはかつて千里眼を研究していた故に放逐された教授がいたらしい。千里眼事件で有名な福来友吉教授の事かな。福来教授、真柄教授、渡来教授が所属しているとは中々濃い大学である。

 

門野は質屋の店員で自分の世話人でもある京子を「考えない女。故に存在しない」と評した。
誰かに想われ、自分で考える人形の雛がヒトとして扱われ、誰にも想われず、自分で考えない京子はヒトとして扱われない。
だが、京子には門野を想う気持ちと雛を憎む気持ちが潜んでいて、大人しい人形だった京子はヒトとして狂おしいほどの自己主張をする事になる。
しかし、京子が発した呪いと言う想いは「ヒトガタ」の如く人形である雛からヒトである門野へと送られてしまう。
いきなり呪いが出てきたのには驚いたが、誰かに想われる事で存在していたヒトが最後は呪いと言う想いの力で存在が消えると言う皮肉な結末が面白かった。「ヒトガタ」と言うサブタイトルの意味も「人の形をした」と言う意味の「人型」が「身代わり」の「人形」に変わるのもなるほどであった。

 

今回の話は江戸川乱歩の『人でなしの恋』を下敷きにしていて登場人物の門野や京子と言った名前もこの作品から採られている。

 

直接関係は無いと思うが、今回の話を見て『怪奇大作戦』の「青い血の女」の謎が自分なりに解けた。

 

「ワレ思ハズ 故ニ 汝ハ無シ」。