帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「DREAM」

Episode1 DREAM」
ULTRASEVEN X』第1話
2007年10月5日放送(第1話)
脚本 小林雄次
監督 八木毅

 

時空生命体ガルキメス
身長 40m
体重 6万t
人間に擬態して地球の主要権力を掌握していったエイリアンに使役される巨大生命体。
エイリアンが地球に散らばる同胞を集結させて人間に対して宣戦布告を行うとデルタ・エリアに現れたガルキメスは両腕から緑色の光弾を発射して街を破壊していった。
エイリアンは自分達のアジトがある建物を宇宙船に変形させてガルキメスを援護するがセブンXのアイスラッガーでガルキメスが倒されると自身もセブンXのエメリウム光線で宇宙船ごと倒された。

 

物語
水に溺れる記憶を持った青年。
それ以外の全ての記憶を失った青年。
何も無い部屋で目覚めた青年。
謎の女性に謎の道具を託された青年。
ビデオシーバーから発せられる指令を頼りに動く青年。
夢のような不確かな世界の中、青年の前に立ちはだかるものとは?

 

感想
ウルトラセブン誕生40周年記念作品として制作された作品。
最初から直接の続編として世界観を明示していた『平成セブン』と違って本作は最初の時点では『セブン』との関係は伏せられていた。
設定面での『セブン』との関係は伏せられていたが地球に侵入していたエイリアンや近未来的な世界観と言った『セブン』のテーマを21世紀に再現したような作りになっている。

 

ウルトラシリーズでは珍しくデストピアが舞台になっている。
他のウルトラシリーズの主人公達は地球防衛を担う特別チームに所属していて地球の秩序を守る為に戦うのだが、本作の主人公達は最終的には特別チームに反抗して現在の地球の秩序を破壊する為に戦うようになる。
『平成セブン』後期と並んでウルトラシリーズでも異色な設定と言える。

 

本作は低予算ではあるが演出によって無機質な近未来感を表現している。
特に面白いのは空に浮かぶ政府放送のモニターで、本作が放送された2007年時点には存在しない技術で本作の近未来感を形作るのに大きく貢献している。
ウルトラシリーズは近未来を舞台にしているイメージがあるが実際に近未来を舞台にした作品は少ない。又、近未来を舞台にしていても特別チーム関連のみが未来の技術を使用していて一般社会は放送当時と変わらない技術水準になっている事が多い。それに対して本作は特別チームの関連施設が登場しないからか一般社会の描写に未来の技術が盛り込まれ、結果としてウルトラシリーズでも近未来感が表現された作品となった。

 

ジンに残された数少ない記憶の一つが水に溺れる自分の姿。
最終的にこの水のイメージが並行世界への鍵となる事が明かされる。
水の泡=マルチバースに繋がっていると考えるのか穿った見方かな?

 

記憶を失ったジンは謎の女性エレアからウルトラアイを託されると「奴らが来る」と言うエレアの忠告を受けて部屋から脱出する。
「奴ら」の正体はこの時点では不明であったが後にこの地球の支配者であるグラキエスの息のかかった者達である事が明らかになる。
ところで、エレアは第1話の時点では謎の女性だったので気にならなかったのだが、彼女の正体を知った後に今回の話を見返すと部屋の爆発からよく無事に逃げ切れたものだなと思う。

 

DEUSはウルトラ警備隊と同じくビデオシーバーとウルトラガンを持っているが、基地も戦闘機も隊服も無いと他の特別チームとは大きく異なっている。
組織の実体は無く全てはグラキエスの手足に過ぎなかったと言う作品の設定には合っているが、やはりちょっと寂しい。

 

ケイが語る「メディカルセンターにいるスラーとしているがボンボン!な最高に美人なナース」は『セブン』のアンヌがモデルだろう。

 

本作はウルトラシリーズでも人間の役者によるアクションシーンが多い。
予算の関係ではあろうが人間と人間に擬態したエイリアンの戦いなのである方が自然。

 

セブンXのデザインはオリジナルのセブンとの違いに驚かされるが、この後にゼロと言う息子が出てくる事と考えると何故か納得できる不思議なデザインとなっている。

 

投擲したアイスラッガーでガルキメスを弾き飛ばすセブンX。う~ん。やはり、切れないアイスラッガーは物足りないなぁ……。深夜作品なのでここは思い切り切断してほしかった。
セブンXはガルキメスやエイリアンが操縦する宇宙船を相手に特に苦戦せず、むしろ圧勝で倒している。記憶を失ったとは言え戦闘経験豊富なセブンなので、そんじょそこらのエイリアンでは立ち向かうのは難しかったのであろう。
宇宙船から見たセブンXのエメリウム光線発射場面がエイリアンの力ではどうしようもできないセブンXの圧倒的な強さ怖さを出していて面白かった。

 

戦いを終えたセブンXは空へ飛び去るのだが、あまりの速さに驚いた。
空へ飛び去るのは『初代マン』からの定番シーンで40年近く経っても特に変化が無かったので、ここの演出を変えてくるとは思わなかった。
圧倒的な力を持つ謎の存在セブンXらしくて好きな場面である。

 

政府放送はセブンXの存在を「あの巨人は私達人類を救ってくれたのでしょうか? だとすると、まさにこの世界の救世主なのかもしれません」と紹介する。
グラキエスの真意を知った後に見返すと、この「救世主」と言う言葉が物凄い皮肉に聞こえてくる。

 

記憶を失った主人公と言う事で平成ライダーシリーズを思い出すが、デストピア描写が強くて社会への反抗がよりストレートに訴えられているので海外作品のイメージもある。当時で言ったら『マトリックス』が近いのかな?
デストピアはアニメ等では度々取り上げられるが特撮ヒーロー作品では意外と取り上げられる事が少ない題材であった。

 

記憶を失った事で社会の現状を知らず、結果的に社会に利用される事になったジンだが、記憶を取り戻す事によって自分本来の目的を為すようになっていく。
ただ、記憶を失っているのにジンが意外とサクサク話を進めていくので視聴者としては少し置いてけぼりを受けた感じもあった。もう少し記憶を失っている事に対する不安とか苦悩とか描いても良かったと思う。

 

ハードコアバンドのPay money To my Painによるエンディングが最高にカッコ良い!