帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「CODE NAME“R”」

Episode2 CODE NAME“R”」
ULTRASEVEN X』第2話
2007年10月12日放送(第2話)
脚本 太田愛
監督 八木毅

 


かつてDEUSのエージェントだったアールを使って世界を離脱したいと言う強い潜在意識を持つ人々に向けて「本当の自分が待っている。まだ見ぬ故郷に帰ろう」と呼びかけた。
本当の目的はセブンXであるジンを連れ去る事で、アールが一度は手に入れたウルトラアイをジンに返したのを見てアールを抹殺した。
光弾を発して攻撃するが怒りのセブンXには通じず逆にワイドショットで粉砕された。
船に乗り込んだ人々のその後については不明。

 

物語
「船」と呼ばれる未確認飛行物体に連れ去られた人々。
調査を進めるジンとケイは人々が自分の意思で「船」に乗り込んだのではと言う結論に至る。そして、その背後にはかつてDEUSのエージェントであった男アールの存在が見え隠れした。

 

感想
情報過多な世界で情報に支配された人々の苦しみを描いた話。
穏やかな口調でありながら実は強制をしている政府放送が怖い。
空に浮かぶモニターこそまだ無いが雑誌にTVにネットにと現実も今回の話と同じ世界だと思う。

 

今回は『ネクサス』を思わせるような文字を使った演出が見られる。
ミステリーモノに合う演出なので、もっと使っても面白いと思う。

 

ジンの正体を知っているアールはセブンXの映像を見せて「彼は自分の意思で戦っているようだが、それは本当に彼の意思なのだろうか?」と問いかける。
この時点ではセブンXへの変身後の人格がジンかセブンか不明だった。もし、変身後はジンの人格が消えてセブンの人格が出てきているのだとしたら、それは一種の乗っ取りとも言え、ジンと言う存在の根幹に関わる問題となる。
後にアールは「自分は自分の事をアールだと思っているが本当のアールかどうか俺にも分からない」と答えている。アールはエイリアンと接触した際に自分の人格に疑問を抱くような行為(洗脳や同化)を受けたのかもしれず、そこからジンとセブンXの関係も怪しんだのかもしれない。

 

健康的で幸福的な処方箋を配布する事で逆に心の病で命を絶つ人が現れてしまう。この問題は「心」と言う実際に目で見る事が出来ないものの難しさを感じさせる。

 

この世界が提示した幸福に近付こうとすればするほど自分と言う存在が希薄になっていくと感じる人々。しかし、その問題にこの世界は何も答えてはくれない。その時に「船」が現れて「帰ろう まだ見ぬ故郷へ そこで待っているのは 本当の私」と人々に呼びかける。
「船」のメッセージは救いに見えるが、心が弱った時に聞かされる心地良い言葉ほど危ういものは無い。心が病んだ時ほど「救い」と称して近付いてくるものがいるのだ。

 

アールはTVの空チャンネルにメッセージを送信し、サブリミナルを使ってこの世界を離脱したいと言う強い潜在意識を持つ者にだけ届くようにしていた。
ケイは未確認飛行物体を「船」と呼んで、それに乗りたがる人の気持ちが分からないと言っていたが、それはケイがこの世界に不満や不安や疑問を抱かず、この世界を離脱したいと言う気持ちが無かったから。それは幸せな事なのかもしれないが、世界に疑問を抱いていなかったケイが世界によって都合良く動かされていた事がシリーズ終盤に明かされる事になる。

 

船は破壊されたが、それでも孤独に心を病む人々は後を絶たず……。
エイリアンを倒しても根本的な問題が解決されていない以上、新たな「船」の出現は遠くないと思われる。
社会問題を物語に組み込むのは『Q』から続くウルトラシリーズの定番。これまではオブラートに包んでいたが『SEVEN X』ではかなりストレートに描いている事がある。こういう描写が出来るのは深夜作品ならではと言える。