「Episode12 NEW WORLD」
『ULTRASEVEN X』第12話
2007年12月21日放送(第12話)
脚本 小林雄次
監督 八木毅
小型集合体グラキエス
身長 4.8m
体重 2.5t
情報を操る事で世界を支配した黒幕。
人類が情報が無ければ生きていけない世界を構築した事に目を付け、情報を提供する側に回る事で人類を支配する事に成功する。
精神世界では人間に擬態した3人組の姿で語りかけてくる。
拠点に乗り込んだセブンXのアイスラッガーとワイドショットによって一掃された。
巨大機械生命体メカ・グラキエス
身長 89m
体重 9万t
グラキエスの拠点を守る機械生命体。
透明化して近付き、粘着質の糸で相手を捕らえ、額から放つ火球で倒す。
ジンが変身したセブンXを倒すが覚醒したセブンXに倒された。
物語
倒すべき敵を見据えたジン達は最後の戦いに赴くが絶体絶命の危機に陥る。
頼みのセブンXも倒されてしまうが、その時、赤い巨人が奇跡を起こす……!
感想
「AQUA PROJECT」の続き。
『SEVEN X』最終回。『セブン』だけでなく『平成セブン』も思い出す内容であった。
ウルトラシリーズは設定や世界観のリセットが何度か行われた事でいくつもの世界が存在するようになった。今回は並行世界にある別の地球を出す事でリセットによって誕生したいくつもの世界を劇中設定に組み込む事が出来た。この流れは『超ウルトラ8兄弟』や大怪獣バトルシリーズを経てゼロシリーズのマルチバースに繋がる事となる。
世界を敵に回してエージェント達と戦う事になったジン達。
つまり、昨日までの仲間達と戦う事になったのだが、ジン達が迷い無くエージェント達を倒していくのが残念だった。
実は擬態したエイリアンだったとかではなく昨日までのジン達と同じくDEUSの指令に従っているだけなのだから世界の真実を明かして説得を試みるくらいはしてほしかった。
世界を敵に回すとは昨日まで仲間だった者達とも戦わなければいけないと言うシビアな展開だったのだが、あまり掘り下げられる事無く簡単に流されてしまった。
敗北したジンの精神世界に人間に擬態したグラキエスの精神が話しかける。これは『セブン』の「零下140度の対決」に登場したポール星人がモデルかな? どちらも同じ3人組だし。
人類は情報が無ければ生きていけない事を知ったグラキエスは人類が作り上げた世界に入り込んで情報を提供する側に回り人類の需要を満たすよう情報を供給する事で一つの信頼の上に成り立つ関係を築き上げる事に成功する。
グラキエスのデザインが蜘蛛を思わせるものなのは「蜘蛛の巣のようにネットワークを広げていた」と言う意味なのかな?
『SEVEN X』は『セブン』の続編であるが『セブン』の怪獣や宇宙人が再登場する事は無く全話に新キャラクターが登場した。
実は21世紀のウルトラシリーズで歴代怪獣の再登場やオマージュキャラが登場しなかった作品は大変珍しい。
メカ・グラキエスに敗れたジンに向かってグラキエスは「君は既に役目を終えたんだよ、ウルトラセブン……」と告げ、セブンXから元の姿に戻ったジンはウルトラアイも失って「済まないな。俺は……救世主にはなれなかった……」と呟いて力尽きる。それを見たエレアは遂にジンがウルトラアイを手に入れた経緯を説明する。
3ヶ月前もグラキエスの謎を追っていたジンは逆に追い詰められて撃たれてしまうが、その時、「お願い、ジン……。この世界を救って……!」と言うエレアの祈りに応えて並行世界から赤い巨人が現れた。
赤い巨人と一心同体になった事でジンは一命を取り留めるが代償として赤い巨人の意思は封じられてジンは過去の記憶を失ってしまった。
赤い巨人の意思が覚醒したらジンの意思が消滅してしまうので、エレアは赤い巨人の意思が覚醒する時=ジンに救世主としての力が漲る時を先延ばしにしようとしていたのだった。
メカ・グラキエスに敗れたジンだったがエレアの告白を聞くと復活したウルトラアイで再び変身する。が、その意思は赤い巨人のものとなっていた。
「君の祈りは通じた。行ってくる。君の想いは決して裏切らない」。
『セブン』でセブンは薩摩次郎をモデルにモロボシ・ダンと言う人間に変身したが『SEVEN X』では瀕死の重傷を負ったジンと一心同体になっている。
実は『平成セブン』でもセブンはカザモリと一心同体になって「アカシックレコード」の終盤ではカザモリの意思が無くなってセブンの意思が前面に出てきたかのような場面があった。
赤い巨人の意思が覚醒したらジンの意思が消滅してしまうと言うのはこれと同じなのかもしれない。
ウルトラシリーズでは変身前の人間の顔と変身後のウルトラマンの顔が似ているように見えてくると言う事があってジンとセブンXも段々と顔が似ているように感じてくるのだが、ひょっとしてセブンがセブンXの姿に変わったのは一心同体になったジンにセブンの姿形が引っ張られたのかもしれない。
管理施設の中枢に乗り込んだケイとエスはDEUS司令も政府放送のキャスターもグラキエスの意思に動かされるだけの存在だったと知らされる。
特別チームでありながら基地や隊員の描写が無かったDEUSだが本当に実体が無い組織だった事が明かされた。
赤い巨人が覚醒してからのセブン無双は爽快! これまで派手なバトルが少なかっただけにカタルシスがあった。
今まで赤い巨人の意思とジンの記憶が封印されていたようなので、これまでのセブンXは事情の分からないジンが手探りの状態で戦っていたと言う事になる。それが赤い巨人の意思が覚醒した事で持っていた経験と能力をフルで使えるようになったと考えられる。
今まで不完全だった力が最終決戦で完全に引き出せるようになるのは『ネクサス』のノアを思い出す。
それにしても今回の無双っぷりを見るとやっぱりゼロの親父なんだなぁと感じる。
管理施設が爆発して死を覚悟したエスは最期がケイと一緒とは一生の不覚だと憎まれ口を叩くが、ケイは自分は光栄だと思っていると返す。それを聞いたエスは自分と一緒に死ぬ事が光栄なのかと思って驚くが、ケイの答えは世界の為に人知れず戦って死ぬとはエージェントとしてこれ以上無い最期だであった。
ケイは恋愛に生きていそうなキャラクターであったが全話通して常にエージェントとして動いていた。
全てが爆発する直前にケイとエスは赤い巨人によって助け出される。
最終回でセブンが爆発する敵の地下施設から仲間を助け出すと言うシチュエーションは「史上最大の侵略 後編」でアマギ隊員を助け出したのを思い出す。
赤い巨人の意思が覚醒してジンの意思は消滅したと思われたが、戦いが終わった後、ジンは赤い巨人と分離してエレアのところに帰ってくる。
どうしてジンの意思が消滅しなかったのか説明は無いが、ウルトラマンと一心同体になっても後に分離できた人間は他にもいたので特に不自然さは感じない。『平成セブン』でセブンと一心同体になったカザモリの意思が消えたように見えたのは色々と特殊な事情が重なっているのだと思われる。
宇宙人の意思が覚醒すると人間の意思が消滅すると言うのは「BLOOD MESSAGE」のヒュプナスや「RED MOON」の獣人に通じるものがあるが、この最終回を見越しての話だったのかな。
長かった夜が明け、ジン達は新たな世界の幕開けを見つめる。
「影の支配者は殲滅され、世界は救われた。その事実を知る者は俺達を除いて誰もいない……。人々は何も知らずに平和を謳歌している。しかし、俺達は決して忘れない。一人の女性の想いが奇跡を呼び、この世界を救ったのだと言う事を……」。
ここで言う「一人の女性」とはエレアの事。『平成セブン』でも一度は離れたセブンを再び地球に呼び戻したのは女性であるサトミの想いがあった。
ところでグラキエスの支配から解放されたこの世界はこれからどうなるのだろうか?
世界の指導者になれそうな人物はグラキエスに始末されたか支配下に置かれたと思われる。グラキエスに支配されても争いや犯罪が絶えなかった人類はグラキエスと言う支配者を失った後、果たして正しき道を進む事が出来るのか、それとも迷走の末に破滅へと進んでしまうのか……。ジン達の世界を救う戦いはこれからも続く。
グラキエスの野望を粉砕してジン達の世界を救った赤い巨人は自分の世界に帰る。
そこで赤い巨人はダンの姿に変身して湖畔で待っていたアンヌのところに帰ってくる。
アンヌ本人かどうか明言されなかった『レオ』の「運命の再会! ダンとアンヌ」を除くと『セブン』最終回の「史上最大の侵略 後編」以来のダンとアンヌの再会となる。(『平成セブン』の「太陽エネルギー作戦」はダンとアンヌの再会ではなくセブンとアンヌの再会だった。アンヌの呼びかけも「セブン」だったし)
こうして地球を守り続ける赤い巨人(ウルトラセブン)は一つの戦いを終えたのだった。
本作のメインライターである小林雄次さんとその弟である小林英造さんによって書かれた『SEVEN X』の小説版が2008年5月に刊行されている。
TV版が事件中心なのに対して小説版はキャラクター中心になっている。他にも世界観の説明やキャラクターの裏話等が語られていてTV版を補完する内容となっている。