「ホミニス・ディグニターティ」
『ネオ・ウルトラQ』第12話
2013年3月30日放送(第12話)
脚本 いながききよたか
監督 中井庸友
古代生物ソーマ
身長 13cm
体重 100g
30年前に日本最古の地層から発見された生物。宿主の細胞を書き換える能力を持っていて、宿主の老化を妨ぐ事で出来るだけ長く共生しようとする。
クローニングによって蘇生され、手術によって優れた人間に移植されるようになった。ソーマを移植された人間は144年と言う寿命限界値まで生き続ける事が出来る。
物語
南風原の所に二葉と名乗る男が現れて、ある少女のカウンセリングをしてほしいと頼む。
IQ150以上で遺伝疾患も無く肉体優良と認められた少女ヒカルはソーマの宿主として選ばれたが彼女は自由の無い暮らしに疑問を抱いていた。
感想
人間の寿命を限界値144年にまで伸ばせる事が出来る生物ソーマが発見されたと言う話。しかし、ドラマはそこから人間の寿命の問題ではなく自由の無い暮らしに対する疑問へとシフトしてしまう。
ヒカルの自由が無くなったのはソーマの宿主に選ばれたからではあるが、優秀な人間が管理されている施設の部分が残っていたらソーマの部分が無くなっても話が成立する作りになっていた。
寿命を伸ばせるのなら将来がまだ確定していない子供より既に実績のある屋島教授あたりの寿命を伸ばした方が良いと思う。(屋島教授は断りそうだが)
嫌がる子供より才能があって本人もまだ生き続けたいと願っている人にソーマを移植した方が有意義だと思う。
国の為に優秀な人間を子供の頃から囲って教育していると言う設定なのだが、さすがに今更感がある話となった。
施設に疑問を持ったヒカルをカウンセリングして再びソーマの宿主である事を受け入れさせようと言うのが二葉の目的だが、ヒカルが自らソーマを切り離したのは友達であるユリがマインドコントロールされたのを見て施設に不安と恐怖を感じたからとなっている。……マインドコントロールが出来るのなら南風原に頼まなくても良かったんじゃないのかな?
南風原の背中にはソーマが!と言う衝撃の展開。
だが、これで大きな疑問が生じてしまった。
それは施設に疑問を抱いている南風原がソーマの宿主になっても普通に外で自由に生活している事。
南風原が許されてヒカルやユリが許されなかった理由が分からない。
南風原は自分の背中にあるソーマを見せ、ヒカルを連れて外の世界へと脱出する。
「外の世界は自由」と言う話があったが、施設を脱出した南風原とヒカルは無人の遊園地と言う誰もいない作られた楽園に行く。
その後、再び施設の場面に戻って、ヒカルは南風原の背中を見ると言う展開。
素直に考えたら最初はヒカルの顔のアップにして南風原の背中は隠してラストで南風原が実はソーマの宿主だったとするべきなのだがどうして逆にしたのだろうか……?
実は夢オチだったとかループだったとも考えられるが、夢オチにする理由もループにする理由も特に思い付かない……。
今回の話だけでなく『ネオ・Q』全体にとってのラストシーンでもあったのだが何をしたいのかよく分からないラストシーンになってしまった。
今回の話はいながきさんと中井監督のウルトラシリーズ最終作となっている。
『ネオ・Q』のスタッフは田口監督以外はウルトラシリーズに関わっていない人達だったので他の作品とは雰囲気が異なる作品となった。
『ネオ・Q』と言う作品全体に対する個人的な印象だが、ウルトラシリーズは人間に疑問を投げかける話もあるが基本的には人間に希望を見ている話になっているが、『ネオ・Q』は基本的に人間に失望しているように感じた。この根っこの部分の違いが他のウルトラシリーズを見た後に『ネオ・Q』を見た時の違和感を生み出しているのかなと思う。
今回の話は2014年2月に「『ネオ・ウルトラQ』特別上映part4」の1本として劇場公開された。