帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラニャン ~星空から舞い降りたふしぎネコ~』

『ウルトラニャン ~星空から舞い降りたふしぎネコ~』
1997年4月12日公開
脚本 村井さだゆき
監督 ときたひろこ

 

ゼアス2』と同時上映で公開された作品。

 

アニメ作品だがこれまでのように既存のキャラクターがデフォルメされたのではなく「猫のウルトラマン」と言うオリジナルのキャラクターが登場している。
一つの街を舞台に子供と動物が中心の物語になっているので怪獣や特別チーム等は登場しないが「主人公が赤と白の色をした姿に変身する」と言う一点でウルトラシリーズっぽくなっている。ウルトラマンサーガの時にデザインの後藤正行さんが「目と口のラインを残せば体はどう変えてもウルトラマンになる」とインタビューで答えていたが、ウルトラニャンを見ると「赤と白(銀)の色を残せばどう変えてもウルトラマンになる」と言う事が分かる。何が残ればウルトラマンのデザインとして成立するのか興味深いところである。

 

小学生の子供達が不思議な出来事に遭遇すると言う子供向け作品らしい展開。昭和のウルトラシリーズは『Q』『セブン』『ザ☆ウル』以外は子供のレギュラーキャラがいたので意外と違和感は無かった。だが、ニャンを飼う事になるはるかが女の子だったのは当時のウルトラシリーズでは斬新だった。昭和のウルトラシリーズの子供のレギュラーキャラはメイン視聴者に合わせて男の子が多かった。『ニャン』は雑誌展開ではニャンではなくはるかが魔法少女のように変身するなどウルトラシリーズを女の子に向けても発信しようとしていたところがある。

 

廃ビルで怪我をしたネコを保護するはるか。
はるかはネコ好きだったがマンションなので飼う事が出来ず親に内緒でネコのニャンを飼う事にする。
そのニャンは尻尾のリングで鉄屑をバラに変えてはるかにプレゼントし、廃ビルが爆破されても瓦礫をハトに変えて脱出する等、「化け猫」と噂されるのも当然と言えるほど常識を越えた存在だった。それを「お前、不思議なネコだねぇ」の一言で済ませてしまうはるかもかなり不思議な存在だ。

 

「博士」と呼ばれるネコはニャンが伝説のフェリス星からの使者ではないかと考える。
ネコ族に昔から伝わる言い伝えでは祖先は宇宙の彼方にあるネコ座フェリス星からはるばる地球にやって来たとの事。
ネコが地球の生き物ではなかったと言う設定に驚いた。ひょっとしたら今の地球人は本当は宇宙からの侵略者だったよりインパクトがあったかもしれない。

 

ニャンはネコを売りさばく悪徳ペット業者に捕まってしまうがはるかに助けられると尻尾のリングで「くるっと回ってウルトラニャン!」と変身する。
変身したニャンは崖から落ちそうになった車をマネキウム光線でクジラに変え、車に乗っていたはるかと悪徳ペット業者が無事に助けられるとクジラははるかに見送られて海へと去っていった……。
て、ちょっと待って! 元々は車だったのだがこれからはずっとクジラなのか? しかも体色がニャンと同じ赤と白と言う珍しい事この上ないものなのだが、これから先、平穏に暮らせるのかな……。
クライマックスはかなり力押しだったところがあるが車がクジラになるインパクトで押し切った感じ。

 

遥か昔、地球とフェリス星はお互いのハッピーエネルギーを送り合って栄える仲だった。ニャンはその絆をもう一度取り戻す為に地球にやって来て、街に幸せの種を一つ一つ蒔いていけば、きっと昔のようになれると信じていた。事件解決後、ニャンははるかの友達のユキの家で飼われる事になり、その夜、二つの星のハッピーを伝え合う役目を思い出した街のネコ達は手をかざしてハッピーエネルギーをフェリス星に送り、ハッピーエネルギーを受け取ったネコ座は「ニャーン」と微笑むのであった。

 

「動物をウルトラマンにする」と言う発想が面白かった。
『帰マン』の「怪獣総進撃」で犬を助けて命を落とした郷秀樹がウルトラマンになったが、IFとして「犬と一心同体になったウルトラマン」と言うのがあっても面白いかもしれない。

 

主題歌はナディアさんの『SWEET LOVE』。

 

本作は村井さだゆきさんとときたひろこさんのウルトラシリーズデビュー作となっている。