帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「光をつかめ!」

「光をつかめ! ー宇宙戦闘獣コッヴ登場ー
ウルトラマンガイア』第1話
1998年9月5日放送(第1話)
脚本 小中千昭
監督 村石宏實
特技監督 佐川和夫

 

超空間エネルギー体ヴィジョンの龍
身長 不明
体重 不明
我夢が初めて意識を粒子加速領域にシンクロさせた時にガイアと戦っていた謎の存在。
ガイアのフォトンエッジで倒される。

 

宇宙戦闘獣コッヴ(C.O.V.)
身長 77m
体重 8万8千t
宇宙に開いたワームホールから地球に降臨した結晶体の中から現れた地球外生体兵器。
防衛軍を返り討ちにしてチーム・ライトニングの北田機と大河原機を撃墜する。
額から発する光線と両手の鎌で都市を破壊する。
名前は「Cosmic Organism-Vanguard」の頭文字から。意味は「最初の宇宙生命体」かな。

 

物語
ある日、宇宙に開いたワームホールから怪獣が現れ、極秘裏に設立されていたXIGが迎撃に向かうも返り討ちにされてしまう。
その状況にやるせない気持ちを爆発させる高山我夢に迫ってくるものがあった……!

 

感想
オープニングの冒頭が『Q』みたいになっていて懐かしい。
最初のオープニングの映像に登場するチームはライトニングのみでこのチームが中心である事が分かる。
エンディング曲は『パワード』以来となる女性ボーカル。これまでのウルトラシリーズとは違った感じの歌になっていて新時代を感じる。

 

主人公の我夢は20歳だが「少年」と言う方が合っている雰囲気。
サトウ、マコト、ナカジとの普通の学生生活が見ていて楽しい。後に我夢はXIGに入隊するがニュージェネレーションシリーズだったら学生のまま物語が進んでいたのかな。
因みに我夢が所属する大学はかの有名な城南大学である。

 

城南大学量子物理研究室で意識を粒子加速領域にシンクロさせた我夢は地の底に広がる原初の地球のような場所で謎の怪獣と戦うウルトラマンの姿を見る。
これまでのシリーズと本作とで大きく違っているのがウルトラマンと出会う粒子加速領域に我夢が自分から行く事。不思議な世界でウルトラマンと出会った主人公はたくさんいたが、その殆どがアクシデントによってであった。
これまでの主人公は善行を成していたところをウルトラマンに偶然見られていたと言うのに対して我夢はウルトラマンの目に留まるところに自分の力で辿り着いた。

 

巨人を見た我夢は「ウルトラマン」と言う言葉を無意識に発している。
藤宮がアグルと出会う前からアグルからのメッセージを送られていたようにガイアも我夢が意識していないところでメッセージを送っていたのかもしれない。

 

宇宙に開いた巨大なワームホール。結晶体が現れてからの避難警告発令、民衆の避難、光を発して建物を破壊する結晶体、落下した結晶体による洪水、コッヴによる破壊シーンはまるで映画を見ているかのような素晴らしいクオリティであった。
この非日常の存在によって日常が壊されていく場面は今までウルトラマンも怪獣も特別チームも存在していなかったと言うウルトラシリーズでは意外と無い物語の始まりを上手く描いていた。

 

防衛軍の戦闘機がコッヴに対して出撃するが撃墜されてしまう。
後にG.U.A.R.Dに編入されたらしく、防衛軍の出撃はこの後無い。

 

話の前半ではXIGの関係者の顔はハッキリと映されていない。これは主人公がまだ特別チームに所属していないから出来る演出だった。

 

初出撃に「これって本番だよね?」と呟き、後のウルトラマン出現には「カッコいいかも!」とはしゃぐアッコ。特別チームの隊員にしては緊張感が足りないような……。アッコは実際には怪獣は現れないで演習だけで終わるだろうと思っていたので仕方が無いところではあるが。
後にアッコは「迷宮のリリア」でXIGとして本気で戦いに身を投じられるか悩む事になる。

 

コッヴの出現をダニエル議長は「予言された災厄の前兆」ではないかと答える。
これだけ被害が出ているのにこれでもまだ前兆に過ぎないのだったら千葉参謀が衝撃を受けるのも無理は無い。

 

XIGの出撃シーンは細かな手順を踏んでいて良かった。レーザー攻撃時の効果音もGood!
元防衛軍のトップガンだったチーム・ライトニングはコッヴ相手に優勢に戦いを進め、それを見た皆は喜ぶが石室コマンダーだけは初めてのミッションとして緊張を解かなかった。その石室コマンダーの不安が的中し、通常のジェット機とは違うファイターで通常のジェット機と同じ操縦をしたライトニングはコッヴの反撃を受けて北田と大河原がイジェクトしてしまう。

 

真実を報道する為に危険を顧みず現場に突入するKCB。て、封鎖地域に強制突入したら後で問題になるでしょ……。
玲子はこんな非常事態でもメイクを気にするちょっと変わった人。リンブンはまだバンダナを結んでいない。田端さんはファイターが極秘裏に作られた事に疑問を抱く。
KCBのモデルは『Q』の主人公3人だが、どちらかと言うとTVシリーズより映画の『星の伝説』の主人公3人に近いキャラ設定になっている。

 

撃墜されるファイター、破壊される都市、避難する人々。そんな光景を見て我夢は思わず叫ぶ。
「間に合わなかったのかよ……。僕達が今日までやってきた事は……、全然……、間に合わなかったのか? ……どうすればいいんだぁー!!」。
その瞬間、我夢の周りの時が止まって何かが迫って来る。
そして大きく開いた入り口から地球へと落ちていく我夢。そこにはウルトラマンが待っていた。自分を待っていたウルトラマンに向かって我夢は叫ぶ。
「ウルトラ……マン!? 地球が危ないんだ! 君の力が欲しい! 僕に力を!!」。
ウルトラマンに試される我夢はウルトラマンのライフゲージの中に入って光に包まれる。
「この光……、とってもあったかくて……。違う。光が、僕の中に入ってくる」。
我夢の視点がどんどん高くなっていき、気付いた時、地上に光の巨人ウルトラマンが土砂を舞い上げて光臨していた。
ウルトラシリーズの主人公で自分からウルトラマンになりたいと願ったのは我夢が初めて。(主人公以外なら『ティガ』のマサキ・ケイゴがいたが) 自分からウルトラマンの領域に入っていく主人公の登場はウルトラシリーズが新たな時代に足を踏み入れたと感じるものであった。
ガイアが着地した時に土砂が舞い上がるのは佐川監督が『ダイナ』の「怪獣戯曲」で試したもの。ウルトラマンの重量感が上手く表現されていてウルトラマン登場の定番となっていった。

 

自分がウルトラマンになった事に戸惑う我夢。
よく考えたらこれは当然でティガやダイナが迷い無く普通に戦えた方が不自然だった。

 

オープニングの歌詞に「ウルトラマンがほしい」とある。「ウルトラマンは物じゃないでしょ?」とツッコみたくなるが、『ガイア』ではウルトラマンは地球が与えた光なので「欲しい」でもおかしくはない。
平成三部作ではウルトラマン自身の人格はあまり描かれないで「人間が手にした光」と言う抽象的な描かれ方をされる事が多い。これは長いウルトラシリーズでも実は珍しい事で意外と平成三部作はウルトラシリーズ全体から見たら異色作に位置するところがある。