帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球の洗濯」

「地球の洗濯 ー自然コントロールマシーンテンカイ登場ー
ウルトラマンガイア』第7話
1998年10月17日放送(第7話)
脚本 吉田伸
監督 児玉高志
特技監督 佐川和夫

 

自然コントロールマシーンテンカイ(天界)
身長 48m
体重 8万4千t
台風と思われた暴風雨の中に潜んでいて風速80mの突風を起こしていた。
人間が作り出した大気中の有害成分を減少させて半年で地球の大気を完全に浄化させる事が出来るが人間に対しては大きな被害をもたらす存在。
梶尾リーダーの攻撃で黒雲を消し去られて姿を現すと今度は地上に落下して大地にある人間の作り出したものの一掃を始めた。
内部に突入したガイアにコアを取り出されて爆発した。
地球の物ではないが宇宙から来た物でもないらしい。
表面には篆書体によく似た文字で「天上の世界」と言う意味の「天界」と言う文字が施されていた。

 

物語
ビルを突き抜けた謎の物体の調査を行う我夢。そこに近付く台風の中に恐るべきマシーンが潜んでいた!

 

感想
もう一人の巨人」で藤宮の台詞で触れられた地球の環境に関する話がここから本格的に始まる。
人間が作り出した有害成分を浄化できるが人間に多大な被害をもたらす自然コントロールマシーンが初登場。特にテンカイは後のエンザンやシンリョクと違って非生物型のまま終わったので印象に残った。

 

千葉「コマンダー。奇しくもアルケミー・スターズの光量子コンピューターが予測したとおり怪事件が起き始めた。その時の為に備えていたとは言え、私は正直戸惑っているよ」、
石室「一時に多数の天才が生まれ、同じくして怪獣達が出現しました。もし、世の中の全ての物事が均衡の上に保たれているとしたならば……」、
千葉「君はアルケミー・スターズの存在が怪獣達を……。彼らはG.U.A.R.Dの設立に大きな役割を果たしたのだぞ!」、
石室「はい。彼らは人類にとってなくてはならぬ存在です」、
千葉「矛盾だな」、
石室「はい。私のような一指揮官が考えの及ぶものではないのかもしれませんが……。今は無心になって目の前の敵を砕く! それが何らかの答えを出してくれると信じています」、
千葉「なるほど」。
クラシックをバックにお茶を点てながら人類の現状について話を交わす二人。『セブン』の「狙われた街」を思い出す演出。(あちらは実はクラシック曲ではないが)
アルケミー・スターズは人類にとってなくてはならない存在だが、そのアルケミー・スターズの存在が脅威を呼び寄せている可能性がある。これは「アルケミー・スターズ」を「ウルトラマン」に置き換えると昔から何度か論じられている話になる。

 

地上から遥か遠くに位置するエリアル・ベースにはコインランドリーが設置されている。
今回は地球の洗濯や掃除がテーマなので洗濯機や掃除機が登場している。

 

我夢の汚い部屋でのアッコとのやり取りがお約束で笑える。この二人のやり取りは本当にラヴコメの王道で良い意味でウルトラシリーズっぽくない。

 

ファイターEXにPALを取り付ける我夢。一応は堤チーフの専用機なのだが……。

 

攻守の最前線たるエリアル・ベースに対する地球防衛の頭脳中枢と言われるジオ・ベースが登場。外観はただの工場だが地下には巨大な設備が……!
ウルトラシリーズで特別チームの基地が2ヶ所登場するのは珍しいが、よく考えたら軍事関係と研究関係は分けるものか。
樋口さんは今回のみのゲストの予定だったが出番が増えて最終的には準レギュラーとなった。XIGの関係者で我夢と科学関係の話が出来るのが樋口さんぐらいだったので重宝されたのだと思われる。

 

我夢にテレパシーで話しかけて瞬間移動も披露する藤宮。さすが一人目だけあってウルトラマンの能力を完全に自分のものにしている。
我夢「藤宮……君」、
藤宮「少しは気が変わったと思ったが、君はまだあの仲良しグループにいるのか」、
我夢「君こそ、どうして僕らの前に姿を現さないんだ? 僕達と一緒に地球を救う手助けを!」、
藤宮「我夢。目の前の敵を倒すだけじゃ駄目なんだよ。早く目を覚ましてくれよ、我夢」。
我夢は皆で力を合わせて根源的破滅招来体から地球を守ろうと考えるが、藤宮や石室コマンダーはその皆(アルケミー・スターズや人類そのもの)が根源的破滅招来体を招いていると考えているようだ。目の前の敵をいくら倒しても人類そのものが存在する限り根源的破滅招来体はやって来るとするならこの戦いは永遠に続く事になる。

 

冒頭の場面でビルを突き抜けたテンカイの破片が出てくるが、ひょっとしたらアグルがテンカイと戦うか調査するかで生じたものだったのかもしれない。
そしてテンカイが地球を浄化する存在と知った藤宮はテンカイをそのまま放置する事にしたと思われる。

 

暴風雨の中に潜むテンカイに対し決死の突入作戦を提案する梶尾リーダーとそれを予見していた我夢。
梶尾「お前は俺がこの作戦を言い出すと思っていたのか?」、
我夢「あらゆる可能性を想定するのが僕の仕事です」。
その言葉を聞いて笑顔で我夢に敬礼を送る梶尾リーダー。
我夢と梶尾リーダーがお互いに信頼を深めていく過程は『ガイア』の見所の一つである。

 

テンカイの表面に施された文様を見た石室コマンダーは篆書体によく似た文字で「天上の世界」と言う意味の「天界」だと呟く。
ここは冒頭のお茶を点てる場面でちらりと映った「無」の書が伏線となっている。

 

テンカイによる破壊シーンはさすがは佐川監督!と言う迫力のあるものとなっている。

 

テンカイは手足が付いていない非生物型でありながら思った以上によく動く。
後に未来人に作られた事が明らかになるが、テンカイは未来人が直接操縦しているのではなく内部にあるコアで遠隔操縦されているようだ。ひょっとしたら今回の話で我夢が開発したPALと同じく人工知能を内蔵したものだったのかもしれない。

 

テンカイのコアの破片を見て、
我夢「空気を綺麗にし、大地を一掃し、次にする事は……」、
石室「種を蒔く……」、
我夢「侵略者の食料。もしくは新しい生命体……」。
我夢は妄想と弁解するが後の「襲撃の森」でその推測が当たっていた事が分かる。
事件解決後、石室コマンダーは我夢に告げる。
「俺はテンカイが地球を浄化していると聞いた時、お前が攻撃に反対すると思っていた。お前にはあの機械を作った奴の気持ちが分かるんじゃないかと……。たとえ人類が犠牲になったとしても環境が戻った方が地球の為になるとな……」。
後に自然コントロールマシーンが未来のアルケミー・スターズによって作られたと語られる事を考えたら石室コマンダーの推測はあながち間違ってはいないと言える。実際、この時点でも藤宮が同じ考えを持っていたし。
しかし、我夢は常に人類の存在を肯定して物事を考えているので同じアルケミー・スターズとは言え人類が犠牲になってでも地球環境が回復する事を望んでいるのではないかと我夢に告げるのはいささか筋が違う。
今回の話を見ていると石室コマンダーはアルケミー・スターズの存在をまだ測りかねているのかなと感じる。

 

もし世の中の全ての物事が均衡の上に保たれているとしたならば、人類を肯定する我夢(ガイア)に対する存在として人類を否定する藤宮(アグル)は必然と言えるのかもしれない。
一つの側面だけから物事を考えるのではなく逆側からも考える事で真実に気付く。
ガイアとアグルと言う二人のウルトラマンが存在した理由もこの辺にあると考えられる。