「46億年の亡霊 ー超空間共生怪獣クラブガン アネモス登場ー」
『ウルトラマンガイア』第8話
1998年10月24日放送(第8話)
脚本 武上純希
監督 児玉高志
特技監督 佐川和夫
超空間共生怪獣アネモス
身長 47m
体重 3万8千t
大沼ダム近くに突如現れた巨大生物。今から6億年前のカンブリア紀に生息していた絶滅した生物の残留思念が物質化したものらしい。人々の意識の波動の影響を受け、TV中継で多くの人々の意識を受けて完全に目覚める。
言葉の代わりに警報フェロモンを含んだ体液を分泌して情報伝達を行う。
どんな環境でも生き延びられる完全生物を目指してクラブガンと共生していた。
超空間共生怪獣クラブガン
身長 48m
体重 5万7千t
アネモスと共生していた生物。
アネモスが発した警報フェロモンに導かれて現れる。炎に包まれるアネモスを消火するとそのまま共生して完全体となった。
アネモスと共生した個体の他にも無数のクラブガンの影が目撃されたが、アネモスが消滅すると全てのクラブガンも消滅した。石室コマンダーによると我夢や未来が言っていた「極小の世界」に消えていったとの事。
超空間共生怪獣アネモス&クラブガン
身長 49m
体重 9万5千t
一種では地球に選ばれるような存在になれないと判断したアネモスが全く別の種であるクラブガンと共生して完全体となった存在。合体の仕方によって形態が変わる。
根源的破滅招来体によって人類の天敵として目覚めさせられ、黄色い霧で人類を誘き寄せて食べようとする。
ガイアのクァンタムストリームでアネモスとクラブガンに分離され、そのままフォトンエッジで分解消滅させられた。
物語
ダムの近くに突如現れた巨大生物はかつて絶滅したアネモスだった。
アネモスの気持ちが分かると言う未来はアネモスをそっとしてほしいと訴えるが……。
感想
『根源的破滅招来体の目的は?』と言う番組は玲子が司会を務めているので田端さんの企画だと思われる。
玲子が「破滅への急坂を転がり落ちそうな人類に残された希望」としてガイアを紹介する時に「私達に絶対に危害を加えず、怪獣達を倒してくれる」と語っているが、その認識は後のアグル登場で脆くも崩れ去ってしまう事になる。
我夢、藤宮、ダニエル議長以外のアルケミー・スターズとして浅野未来が登場。古代生物の第一人者でありながらXIGのコンピューターに簡単に侵入できてしまうのはさすがである。
我夢と未来は古くからの顔見知りらしいが気が合うようで合わないようで……と言う感じ。
未来は自分の研究所をシールドで覆ったりしていて他人との接触を意図的に避けていた。両親に見捨てられたと思い込んでいる事が原因で人間不信になっているようだ。
アネモスについて未来は「浮かばれない幽霊は自分を意識してくれる人の所に出る」として過去の生物の残留思念が物質化したものだと語る。
未来はアネモスの化石を中国大陸の6億年前の地層から見付けたと言っていたが、その化石に宿っていたアネモスの思念が物質化したのだろうか。
量子力学が扱うような極めて小さな世界では物質も意識も相対的な関係にあり、人々の意識の波動がアネモスの物質化に影響を与えたらしい。
昔は『ゴジラ』のゴジラや『初代マン』のゴモラのように生き残った恐竜が怪獣となるパターンがあったがさすがに『ガイア』の頃になるとそう言う設定は無理が出てきていた。今回の「かつて絶滅した存在の残留思念が物質化する」と言う設定はゴジラやゴモラのパターンを平成時代に上手く合わせたものであった。
『東京の水源を訪ねる』と言う企画で取材に来るが水源地の近くで火山性ガスが発生したとして取材の許可を貰えなかったKCB。しかし、近くに火山脈が無い事を知っていた梅沢はこれは何かあると感じて裏道から取材地に侵入する事に。
今回は田端さんが編集室から出られないと言う設定で代役で田端さんの先輩である梅沢が登場しているが、田端さん以上に押しが強くて『ネクサス』の根来に近いキャラクターになっている。
田端さんの出番が少ないのでXIG関係を民間やマスコミの立場から見て疑問を呈していくと言う設定はあまり使われなかったが、梅沢を代役にしてその部分を進めていくのもアリだったかなと思う。
アネモスの存在はインターネットでは早くに流れていたらしい。
インターネットはいつの時代も情報が早くて誰にも管制できない世界だ。
あまり動かないとは言え巨大生物であるアネモスに近付いていくKCBは度胸がある。
玲子は山の取材にヒールを履いてきたり、メイクを気にしたり、汚れた服を局の経費で落とそうとしたりと結構マイペース。藤宮との話でやたら叫んだり泣いたりしているシリアスなイメージがあるが本当はコミカルな人物だったのかな。(コミカルが仮でシリアスが本当の姿と言う可能性もあるが)
事件解決後に目を覚ましての「一体、何が起こったのでしょう!?」が笑える。
アネモス出現の理由を我夢は「コッヴが量子力学の不可知レベルで眠っていたアネモスを呼んだ」と解釈し、それに対して未来は「地球ではもう5回、2600万年ごとに生物の大絶滅が起きている。地球に選ばれなかった地球に愛されなかったものの悲しみを聞いてほしくて目覚めた」と語る。
未来は我夢の解釈を根拠が無いと切り捨てたが未来の解釈の方が遥かに根拠が無い。
今回はカンブリア紀に生息していたアネモス&クラブガンが当時は存在していなかった人類を食料としていた事から我夢の解釈の方が正しかった事が分かる。
根源的破滅招来体は過去の生物をただ目覚めさせるのではなく人類の脅威となるように手を加えて目覚めさせているようだ。この辺りは既存の存在を超獣に改造して人類を襲った『A』のヤプールに近い。
ただ、未来が述べたように後の地球怪獣はミズノエノリュウを始めとして根源的破滅招来体とは無関係に自分の意思で現れるようになっていった。
樋口さん再登場。今回はジオ・ベース・ケミカルセクションとしての登場となっている。専門が無い意外と何でもありな人だったりする。
未来がアネモス達の気持ち悲しみを理解できるのは自分だけと言うのは自分が見付けた化石からアネモス達が現れた事と地球に見捨てられたアネモス達と両親に見捨てられた自分の境遇を重ね合わせたからだと思われるが、ちょっと被害妄想が強い感じがする。
どうも未来は天才と言うより情緒不安定で自分の思い込みだけで突っ走ってしまう危ない人物に見えてしまう。
我夢とXIGはアネモスとクラブガンが共生して完全体になる前に倒してしまう事にする。
未来の「分からないの!? 地球に選ばれなかったものの悲しみが……! 人類に彼らを消してしまう権利なんて無いはずよ!」と言う訴えに対して我夢は「だけど、破滅させられる理由も無い!」と返す。
しかし、この時点ではまだアネモス&クラブガンが人類の天敵とは判明していない。被害がまだ殆ど無い状態で相手を人類を破滅させる存在として倒してしまおうとするのは実は短絡的だったのかもしれない。だが、我夢やXIGがその事に気付くのはまだ後の話である。
アネモス&クラブガンは着ぐるみの向きを変える事で形態が変化するギミックが面白かった。『ガイア』は『ダイナ』に比べてこういうギミックが組まれている怪獣が多いイメージがある。
無数のクラブガンの影が目撃されたが、それに対して目覚めたアネモスは一体だけであった。無数のクラブガンはどのアネモスと共生するつもりだったのだろうか? それとも一体のアネモスを巡ってクラブガン同士で争うつもりだったのだろうか?
未来の両親は古代生物学者だったが未来が小さい時にモンゴルで行方不明になってしまい、以来、未来は研究の為に自分は両親に見捨てられたと思うようになった。
う~ん……。行方不明なら事故の可能性が高いと思うので「子供を見捨てた」と言うのは違う気がする。
事件解決後、未来は笑顔で我夢に滅びた生物達の声を聞く為に研究所に戻ると告げるが、それは結局は人間不信は治らなかったと言う事。今回はアネモスとクラブガンにも裏切られたような形になっているで、周りへの不信は以前より悪化した恐れがある。
ぶっちゃけると、今回の話は未来と言う人物をどう扱いたかったのかよく分からなかった。
今回のアネモスとクラブガンや恐竜のように地球では46億年の歴史の中で多くの生物が滅亡している。それは人類も例外ではなく、かつて隕石落下が恐竜を滅ぼしたように今度は根源的破滅招来体が人類を滅ぼそうとしていると言える。
未来は「いつか人類も滅亡して幽霊のように地上を徘徊する時が来るかも」と呟いていたが、それは後に「天使降臨」で根源的破滅招来体が魚人を使って人類に見せ付ける事になる。
アネモスは地球に選ばれようとクラブガンと共生してまで進化したが、進化したから地球に選ばれるわけではないようだ。
地球に選ばれなかったものが根源的破滅招来体の力を借りて今の地球に君臨する人類に挑むと言う構図は面白そうだが今後こういう話はあまり無かったりする。
アネモスとクラブガンや恐竜と違って人類は地球に見捨てられたりしないと答える我夢。その根拠は「人類を見捨てるつもりならウルトラマンはいない」であった。
でも、これでは「ウルトラマンは人類だけを守る」と言うニュアンスを感じてしまう。この頃の我夢はまだ人類以外の存在にまで気を回せていないようだ。
そして「ウルトラマンがいるから人類は見捨てられていない」と言う根拠はアグルと言う存在によって脆くも崩れる事となる。