帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「龍の都」

「龍の都 ー地帝大怪獣ミズノエノリュウ登場ー
ウルトラマンガイア』第11話
1998年11月14日放送(第11話)
脚本 古怒田健志
監督 原田昌樹
特技監督 満留浩昌

 

地帝大怪獣ミズノエノリュウ(壬龍)
身長 111m
体重 11万t
壬の方角から走る東京で一番大きな地脈・壬龍が人間のライフラインによって断ち切られて土地の地相が失われた事に怒って現れた。かつては人々に祀られていたらしく地下には遺跡があった。ライフラインを切断し、東京各地に現れて東京を占領する。スティンガーの攻撃を受けるとさらに怒って丸の内にその本体を現した。
額の宝玉で水飛沫を上げて東京を破壊していく。チーム・ハーキュリーズの攻撃を水のバリアーで防ぐ。クァンタムストリームが通じず、小さな首の口から発する光線で反撃し、さらに額の宝玉の力でガイアを空中に捕らえる。
東京と言う街が生まれる前から存在していて、その怒りは人間から土地を取り戻すまで続くと言われたが黒田恵の訴えを聞いて一旦退いた。
脚本の古怒田さんによると四聖獣の一つ「青龍」に位置する存在らしい。

 

物語
東京のあらゆるライフラインが不通となった。
趣味で風水をやっている黒田恵は地の龍の怒りが原因だと語る。

 

感想
最終章で大きな役割を果たすミズノエノリュウが初登場。
キングギドラを思わせる多頭の巨大怪獣は迫力満点。東京のあちこちにたくさんの頭が飛び出す場面は印象に残った。
今回の話によって今までは根源的破滅招来体によって目覚めさせられたと言う設定だった地球怪獣が人間の自然破壊に警告を発する存在へと変わった。

 

チーム・ハーキュリーズが再登場。ゴツいおっさん達がこっそり我夢に近付いていく登場場面がなんか可愛かったw
ハーキュリーズは我夢を「チューインガム」と呼ぶなど他のチームには見られないオヤジ臭さが特徴となって印象に強く残るチームとなった。
何度攻撃を受けてもスティンガーで戦い続けて最後は自ら武器を持って戦い出すのは前作『ダイナ』のスーパーGUTSに通じる熱さで『ガイア』のこれまでの話にはあまり無かった要素であった。

 

勇者立つ」で助けられた事を思い出して「借りはいつか必ず返しますから」と言う我夢を「いつかなんて言わずさぁ、今すぐでいいんだよ」とハーキュリーズが連れ去っていく場面が面白い。
拉致……じゃなく格納庫に連れて行かれた我夢はスティンガーの装備品詰め込みを手伝わされる事に。自分はアナライズ担当だからと言って逃げようとする我夢だったが「XIGの一員である以上、こういうひよわっちぃ体じゃいかん!」とウェイトトレーニングとしてやらされる事に……。我夢は「ひよわっちくないですよ」と訴えるがどう見てもひよわっちぃです。
意外と我夢は頭脳派より肉体派と絡んでいる時の方が生き生きしている感じがする。

 

田端さんは「46億年の亡霊」で交通封鎖を振り切った事で局長に呼び出されて今回は登場せず。今回は玲子とリンブン、それに恵の3人が活躍する事になる。
恵は趣味で風水をやっていて、兄が田端さんと同級生だったので田端さんが今の家に引っ越した時に家の相を見たらしい。残念ながら今の田端さんを見ているとその時の見立てはあまり良くなかったようでさすがの玲子とリンブンも不安顔であった。しかし、何か超然とした恵にリンブンはいつの間にか惚れてしまう。
玲子はまだギャグキャラ。この頃の玲子は非常にさっぱりしている。

 

風水師の黒田恵が登場。田端さんの家相はイマイチだったらしいが今回の事件では大活躍で、神社に入った瞬間にミズノエノリュウの気配を感じ取って交流を果たし、さらにガイアを見て一発で大地を守る者だと言い当てている。
劇中では「風水は大地が自然に備えているエネルギーを風や水の流れから読み取るもので、人間が作った街にも新しい風の流れがあって大地の一部と見なされる」となっている。人間が何を作ってもそれは地球と言う大きな自然の一部に過ぎない。この時点では異色に思えた風水の考えだが後に『ガイア』の根幹となっていく。

 

ミズノエノリュウの出現に関して、
恵「古代の中国では大地の下に龍がいると信じていました。でも、人々はそれを恐れたりせず、自然と協調していく事によって、その力を自分達の役に立ててきたんです」、
石室「ところが近代の都市開発は地下にまでその設備を張り巡らせ、結果として、その流れを断ち切ってしまった」、
千葉「怪獣はライフラインを破壊する事によって、その流れを復活させようとしている。そういう事か……」。
今回の事件は人間のライフラインが東京で一番大きな地脈・壬龍を断ち切って地相を失わせてしまい、怒ったミズノエノリュウライフラインを切断する事で地脈を復活させようとした事に始まる。
東京の都市機能が麻痺した事に人々は焦るが人間も知らずに同じ事を地脈にしていた。開拓していく人間と開拓されていく自然との闘い。しかし、いずれ人間が作ったものも自然に取り込まれていく。所詮、人間は地球と言う大きな自然の中に生きる存在に過ぎないのだ。

 

ミズノエノリュウが東京各地に現れたのを受けて千葉参謀は政府に住民の避難を要請する。ここでの電話相手は総理大臣らしいがどうにも弱腰っぽい人のようだ。
そう言えば日本の作品で総理大臣が毅然としている作品はあまり見ない印象がある。アメリカの作品だと大統領が格好良い作品が色々ありそうなのだが。

 

ミズノエノリュウの行動を見た石室コマンダーは今までの敵は都市の破壊を目的としていたが今回は都市の占領を目的としていると考える。
この「ミズノエノリュウは根源的破滅招来体から外れた存在である」と言うのは後に発展されて地球怪獣VS宇宙怪獣と言う対立構図が生まれる事になる。

 

地下の構造をモニターしてハーキュリーズをバックアップする我夢。直前にスティンガーの装備品を詰め込んでいたおかげでより的確な指示が送れるようになっていた。
「アナライズ担当だからと言って司令室に閉じこもらず現場に出る事が大事」であると吉田リーダーはそこまで考えていたのかと思わず感心する我夢だったが果たして真相は……?

 

カメラを何も無い空に向けて「こうしておけばXIGが現れるだろう」と言うリンブン。伊達に何度も事件に巻き込まれていない。

 

スティンガーの落下で自転車が倒れるのが細かくて良い。

 

近代都市と言われる東京にも深い歴史があり、今回の地底探検はその歴史を感じさせるものになっていた。
龍を象った遺跡みたいなものがあったが、かつてミズノエノリュウが祀られていたと言う事なのかな。人々が信仰を失った現在では真実は闇の中であるが……。

 

フォトンエッジを撃とうとするガイアだったがミズノエノリュウの攻撃を受けて失敗してしまう。まぁ、必殺光線を撃つ前の動作って結構長いので今まで敵が何もしなかったのが変と言えば変だった。

 

怒り狂うミズノエノリュウに「怒りからは何も生まれません。地に戻って! お願い……。あなたの想いはガイアに伝わったわ」と訴える恵。その言葉を聞いたミズノエノリュウは恵に向かって頷くと水の球となって大地に戻っていった。
「風水は趣味」と言っていながらいきなりとんでもない事をして驚いた。ウルトラシリーズには特殊な人が時々出てくるが、『ガイア』は連続ドラマの要素が強いので恵はあるサブエピソードに登場した印象の強いゲストで終わらないで『ガイア』のメインストーリーに大きく関わるキャラとなった。

 

XIGに入隊した我夢はそこから様々な人の信頼を得ていくようになる。今回も最初にハーキュリーズに「自分を信頼してくれますか?」と尋ねた時は「我夢ではなく我夢を入隊させた石室コマンダーを信頼している」と答えられたが最後は「中々いい働きだった」と直接褒められるようになった。
我夢「でしょ! こういうのが僕の本業ですから」、
志摩「そう言いながら、すぐ前線に出て行くのは誰だ?」、
桑原「じゃ、行こうか」、
我夢「どこに?」。
実はミズノエノリュウとの戦いで武器を全弾撃ち尽していたスティンガー。哀れ我夢はモバイルマシンを取られて再び拉致……じゃなくて格納庫に連れて行かれて装備品の詰め込みをやらされる事に……。
我夢「勘弁してくださいよぉー!」。

 

今回登場したミズノエノリュウは奥山潔さんがデザインしたウルトラ怪獣第1号となっている。