帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「反宇宙からの挑戦」

「反宇宙からの挑戦 ー反物質怪獣アンチマター登場ー
ウルトラマンガイア』第14話
1998年12月5日放送(第14話)
脚本 武上純希
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

反物質怪獣アンチマター
身長 85m
体重 15万t
木星の衛星軌道上のワームホールから出現した。反物質で構成されていて地球と接触すると太陽系が消滅する恐れがある。
アルケミー・スターズとジオ・ベースが完成させた対アンチマター変換システムをシールドで防ぎ、地球に降り立つとシールドを広げてシールド内に飲み込んだ物質を反物質化していった。そのまま地球全てを反物質化してからシールドを解く事でもう一度ビッグバンを起こそうとした。
相手を挟んで電流を流し、先端から光線を撃つ。
ガイアのクァンタムストリームで体の一部を破壊されると戦意を喪失し、そのままワームホールから反物質世界へと送り返された。
名前の由来は「アンチマター(反物質)」から。

 

物語
木星近くの小惑星が突如消滅した。
γ線バーストが検出された事から物質と反物質接触が起こったと推測される。
そして反物質の塊アンチマターが地球に迫る!

 

感想
今回登場したアンチマターの目的はもう一度ビッグバンを起こす事。さり気に宇宙消滅の危機でウルトラシリーズの中でもかなりスケールの大きい話になっている。
その割にアンチマターが通常の怪獣とあまり変わっていなかったので設定にあるスケール感をイマイチ感じられなかったのが残念。

 

反物質について全く理解できなくて「もし自分が反物質で作られたら女になるのか?」と見当違いな事を述べてしまう千葉参謀。今までの渋い雰囲気が脆くも崩れ去った瞬間であった。それなのに星山博士のレクチャーを椅子にふんぞり返って偉そうに聞いていたのが笑える。結局、反物質を正しく理解できたかどうかは不明だったが。

 

反陽子発生システムを改造して作る事になった対アンチマター変換システム。ジオ・ベースの星山博士は時間が足りないと言っていたがアルケミー・スターズが持っている技術とスーパーコンピューターで見事に間に合わせられた。
これには千葉参謀も「奇跡だ」「新しい世代の登場だ」と賞賛して今まで少年扱いしていた我夢の能力を認め、今までアルケミー・スターズの存在を測りかねていた石室コマンダーも「我々と同じ地球を愛する想いが奇跡を起こした」と続けている。
因みに今回登場したアルケミー・スターズはアラン、アリ、ナタリーの3人となっている。

 

堤チーフは今度の任務には死を目前にしても決して崩れる事の無いようなチームワークが必要だとしてチーム・ファルコンを選択。
我夢はファイターでの実戦経験はチーム・ライトニングの方が上ではないかと反論。自分の意見が通らなかったせいか今回の我夢はちょっと不機嫌。でも「今度の任務がどれだけ危険か分かっていますか?」とファルコンに確認するのはさすがに失礼だったと思う。

 

そんな我夢に対してファルコンは、
米田「君の発明はこうして世の中に残る。でも、どんなに苦しい訓練に明け暮れても我々の仕事が形に残る事は無い。感謝しているんです。私達にぴったりの花道を作ってくれて」、
林「地球の平和を守る為なら自分達の命は惜しくはありません」、
塚守「いつピリオドが打たれても後悔する人生は送ってはいません」、
と答えて敬礼し、ファルコンの覚悟を感じとった我夢も敬礼を返す。
殆ど遺言のような決意表明をしたファルコンであったが後の対アンチマター戦ではそれほど覚悟溢れる場面が見られなかったのが残念。一度シールドで防がれても攻撃し続けるくらいの気概が欲しかったかな。

 

「今度は未知なる敵が相手なのでどんなアクシデントが起こるかもしれない」と言う堤チーフに対して「今までだって安心できる敵なんていません」と返す神山リーダー。
ピースキャリー操縦時の神山リーダーが意見を述べるのは大変珍しい。

 

存在を確認してから一週間も経っていたのにアンチマターのシールドを確認できなかったのはややマヌケ。映像では冒頭からしっかりと張られているだけに余計にそう感じた。
ところで地球に降り立ったアンチマターがシールドを広げていくが、このシールドは物質で構成されているのか、それとも反物質で構成されているのか。もし物質で構成されていたらアンチマターの世界と反応するし、反物質で構成されていたら地球に降り立った時点で反応を起こしてしまう。まさか物質でも反物質でもない存在と言うわけではないだろうし……。
又、アグルのパワーでガイアが反物質ウルトラマンになるが、どう考えても空気と触れている。空気だって物質のはずなのだが……
今回の話はアンチマターにシールドを張らせないで宇宙空間で戦った方が良かったと思うところがいくつかあった。
あと冒頭で木星近くの小惑星反物質接触して消滅しているが、その影響はどうだったのだろうか? メチャクチャ近くに木星があったのだが……。

 

いつもの如くいきなり現れて説明を始める藤宮。
「宇宙創生の時、反物質より物質の方がわずかに多かった為、今の宇宙が出来たと言われている。その為、反物質は異次元に封印されてしまった。アンチマターは地球を反物質化してシールドを消す! もう一度サイコロを振り直せば2分の1の確率で反物質の宇宙が出来る」。
つまりアンチマターの目的は宇宙を作り直す事であった。
脚本の武上さんは根源的破滅招来体をオーバーロードのような存在として捉えていたらしく今回は宇宙全体を動かすような強大な意思を感じる展開となった。又、選ばれなかった存在の逆襲と言う点では「46億年の亡霊」の宇宙版とも言えるところがある。これらのテーマは武上さんがメインライターを務めた『平成セブン』でも何度か取り上げられている。

 

地球消滅の危機に協力を申し出る藤宮。その内容はアグルのパワーでガイアのバリオン数を反転させて反物質ウルトラマンにすると言うもの。
しかし「反物質ウルトラマンがどうなるか保障できない」「もし自分が気まぐれを起こせばガイアを反物質の世界に取り残す事も出来る」とちょっと意地悪も言う。
因みにこの時の会話で藤宮は「アグル」と言う言葉を口にしているが我夢は反物質ウルトラマンの話の方に意識がいっていたのか気付いていなかった。

 

まだ完全な共闘ではないがガイアとアグルのダブル変身がやはり燃える。

 

ガイアのクァンタムストリームを受けてアンチマターの体の欠片がシールドを飛び出してしまうが、それをファルコンが対アンチマター変換システムで物質化させる。
アグルはエネルギーが弱まって消えかけたアンチマターのシールドの修復も出来る。これだけ色々出来るとは藤宮はアンチマターの成分をかなり研究していたと思われる。
ただアグルが何でも出来てしまう為にファルコンがいなくてもアグルさえいれば今回の話は成立してしまうようになってしまったのは残念。もっとファルコンがいなければいけなくなるような状況を用意してほしかった。

 

戦いが終わった後、我夢は「君となら……、きっと二人で、人類を守る事が出来る」と握手を求めるが、藤宮は「勘違いするな」と去っていく。それでも我夢は「僕は信じている。同じ地球の子なんだから……」と呟く。
しかし、藤宮が協力を申し出てきたのは今回は人類だけではなく地球の危機だったからである。藤宮は今まで何度も言っているのだが、あまり我夢には届いていないようだ。

 

今回は地球消滅の危機にXIG、アルケミー・スターズ、ガイア、アグルと全てが力を合わせた話となっている。アグルのようなライバルキャラが主人公と力を合わせるのは物語の後半になる事が多いのだが、人類だけでなく地球の危機なら共に戦うとして物語の前半でガイアとアグルの協力を描いたのは意表を突いて面白かった。