帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「アグル誕生」

「アグル誕生 ー金属生命体アルギュロス登場ー
ウルトラマンガイア』第16話
1998年12月19日放送(第16話)
脚本 吉田伸
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

金属生命体アルギュロス
身長 52.5m
体重 5万2千5百t
宇宙からやって来たアパテーによく似た構成物質の金属生命体。
槍型から人型に変形し、左手を刃に、右手を銃に変形させる。
プロノーン・カラモスが目的だったらしい。
アグルのリキデイター連発で倒されたが……。

 

ニセ・ウルトラマンアグル
身長 52m
体重 4万7千t
プロノーン・カラモスに再び現れたアルギュロスが接触したアグルを真似た姿。
リキデイターやフォトンクラッシャーを撃てるようになるが最後は更なる力を得たアグルのフォトンクラッシャーに敗れた。

 

物語
アルギュロスを倒すアグル。その行動に興味を抱く我夢。
実はアルギュロスが狙うプロノーン・カラモスはアグル誕生の聖地だったのだ。

 

感想
『ガイア』の主人公はもちろんガイアなのだが今回の話にガイアは登場せずアグルのみの登場となっている。『R/B』を除くと番組タイトルになっているウルトラマンが登場しない話があるのは本作くらいかな?

 

アルギュロスと戦うアグルを援護するXIG。
XIGがアグルを援護するのは珍しい。堤チーフの「青いウルトラマンを援護しろ!」が燃える!
もっとも、アグルはXIGを巻き添えにアルギュロスを倒そうとするのだが……。

 

アグル誕生の聖地として登場するプロノーン・カラモス。
ここはアルケミー・スターズの管理施設で3年前にアルケミー・スターズを辞める際に藤宮がダニエル議長から借りたもの。こんな施設を所有しているとはさすがアルケミー・スターズ。
因みにロケ場所は有名なスーパーカミオカンデ

 

今から3年前に国際工学研究所でダニエル議長が新たにアルケミー・スターズに加入した我夢を藤宮に紹介する。この時の我夢はクリシスを開発した藤宮と出会えて舞い上がるが藤宮には完全に無視されてしまう。
この二人の再会は「もう一人の巨人」の時だと思われる。藤宮がリパルサー・リフトを開発した我夢の存在を知っていたり我夢が藤宮を「あいつ」と呼んだりと3年でお互いの印象が随分変わった事が分かる。

 

これまでの話でも名前だけはよく出ていた光量子コンピューター。今回はそのクリシスが初めて登場する。そのクリシスを作ったのはなんと藤宮であった。
4年前、藤宮はクリシスの予測で世界を導こうとしたが、ファイナル・シンクでクリシスが回答したのは「近未来、地球と人類に破滅をもたらす破滅招来体が襲い来る」と言うものであった。ここから『ガイア』の物語は始まったと言える。

 

今の藤宮は「黒」のイメージが強いが回想シーンでは黒い服を着ていない。
と言うか、3年前と4年前で着ている服が全く同じ。どうやら藤宮はあまり服に気を使わないようだ。
何となく予想は出来ていたが昔の藤宮は明るく普通に笑っていた。どことなく今の我夢に雰囲気が似ている気がする。

 

実験動物だったが目と目が合ってしまった藤宮の可愛い恋人リリー。
3年前に藤宮が失踪してからは稲森博士が面倒を見ているらしい。

 

クリシスが導き出した地球の破滅と言う回答を何とかして回避しようとした藤宮は試しに人類を削除してみたら地球の破滅が回避された事に衝撃を受ける。それは裏を返せば人類が存在するから地球は破滅するとも言える。地球の破滅を回避するには人類を削除しなければいけない。それを信じられない信じたくない藤宮はクリシス内のバグを見付けようとするが残念ながら見付ける事は出来なかった。
藤宮が試しにとは言え人類を削除してみた理由は不明だが、おそらく以前から彼の中に地球が破滅する原因として考えられるものとして人類の過ちがあったのだと思われる。

 

クリシスが発した謎の電流を受けた藤宮は海の底に広がる荒廃した未来の地球のような場所で佇むウルトラマンの姿を見る。
ガイアが地のイメージに対してアグルは水のイメージ。
やがて地球の破滅を回避するには人類を削除しなければならない事を知った藤宮に「AGUL」と言うメッセージが送られてくる。そしてパソコン画面から発せられた光を受けた藤宮は再びアグルと会う。
地球の危機にウルトラマンがメッセージを送ってくると言う点では我夢とガイアの出会いと藤宮とアグルの出会いは同じであるが、我夢とガイアの場合は破壊活動を行う怪獣が目の前にいたと言う戦う相手が分かりやすいシチュエーションであったのに対し、藤宮とアグルの場合は現時点では危険がまだ目に見えていない為に戦う相手が何なのか分かり難い状況になっていて、これが結果的に藤宮の道をズラしてしまう事になった。

 

プロノーン・カラモスで地球内部の新しい粒子を発見しようとする藤宮は今のアルケミー・スターズに自分の考えは理解できないとして以前から自分の助手を務めていた稲森博士を呼ぶ事にする。
後に語られるが、クリシスが回答した破滅招来体の正体について人類が地球環境を破壊してしまう以外にも外部から敵がやって来ると言う考えも出されていた。この時には既にG.U.A.R.Dの設立が進んでいたので、アルケミー・スターズの大半は破滅招来体の正体を外部からの敵として人類の地球環境破壊は一旦脇に置いたようだ。

 

個人的には稲森博士と藤宮の関係は恋人と言うより母子に見える。

 

ウルトラシリーズで唯一ウルトラマンが地球出身となった『ガイア』。
今回の話で藤宮はどんな生き物にも病気にかかれば自然に治そうとする力が働くので、もし近い将来に地球に破滅が訪れるならその自然治癒力が現れるはずと語る。その自然治癒力が実体化したのが本作でのウルトラマン
今までのウルトラシリーズは宇宙人であるウルトラマンが地球を守る理由を設定しなければいけない言う問題があったが『ガイア』では地球が破滅を回避する為に生み出したとする事でその問題を解決した。

 

藤宮は地球と人類を共に救おうとしていたが途中で地球に自らの命を救う力が生まれたとしても、それが人類を救う力だとは限らない。むしろ生まれ変わるとしたら煩わしいものを取り除こうとする方が自然。人類がこれまで地球にしてきた事を考えたら、いざと言う時だけ守ってもらおうなんて虫が良過ぎると言う考えに至る。
地球が自分に破滅をもたらす存在に対抗するものとしてウルトラマンを生み出すとするなら、今まで環境をさんざ破壊してきた人類こそが地球に破滅をもたらす最大の存在なのではないのか。そう考えるとウルトラマンが戦うべき敵は一つしかない。ここに今の藤宮の言動の根っこがある。

 

自分が作ったクリシスが地球の破滅を回答し、その回答を回避しようとして今度は地球が人類を滅ぼす為にウルトラマンを遣わそうとしている事を知った藤宮は観測を止めようとする。
藤宮はまた人類の不幸を発見する事を恐れるが稲森博士は可能性を捨てる事は愚かな事で観測を続けないと藤宮は自分の背負っている苦痛からは解放されないと語る。
考えてみれば、クリシスが地球の破滅を回答したと言っても所詮はコンピューターの回答に過ぎないし、ウルトラマンが人類を滅ぼすのかもしれないと言うのもあくまで可能性の一つに過ぎない。もしかしたら、今ある回答よりもさらに奥に真実が潜んでいる可能性もある。が、この時の藤宮はそれに気付く事が出来ず、この時の回答のまま3年間ずっと行動し続ける事になる。

 

アルギュロスに苦戦した藤宮はかつてアグルの力を得たプロノーン・カラモスの水の中に飛び込む。
「アグルよ。地球の危機が運命なら、人類の危機が運命なら、地球の意思に添って行く事が人類に残された道なのか? それを導くのがアグルの力なのか? アグル、再びお前の力を!」。
決意を新たにした藤宮は更なるアグルの力を得る。
が、ここでアグルの更なる力を得てしまった事で藤宮は現時点での自分の考えは正しいと更に思い込みを強くしてしまうのであった。

 

アグルに変身して稲森博士を守った藤宮は稲森博士の無事を確認してアルギュロスと対峙する。わざわざ我夢が変身するのを制して行われるアグル誕生の聖地を守る戦い。
その名はガイア」に登場したアパテーもガイアを真似た姿をしていたがアルギュロスは完全にアグルと同じ姿になり、最初の戦いでアグルがアルギュロスにしたのとほぼ同じ戦い方を披露する。
しかし、更なる力を得ていたアグルの敵ではなく、アグルはリキデイター連発に耐え、フォトンクラッシャーの撃ち合いにも圧倒的な強さで勝利するのであった。

 

今回の話は殆どを回想シーンで構成してアグルと藤宮の秘密を明らかにした。
ここで我夢は藤宮とアグルの秘密を色々と知る事になるが、アルギュロスを倒した藤宮との会話は、
我夢「君は僕らの為に?」、
藤宮「アグルの聖地を守っただけだ」、
我夢「アグル? それが君の力なのか? 僕と一緒に戦おう!」、
藤宮「お前は地球の意思に逆らっている」、
我夢「人類を救うのが地球の意思だろう?」、
藤宮「今の人類は自然の頂点に立つには自己中心的過ぎる」、
我夢「ただ破滅招来体の犠牲になれば良いって言うのか?」、
藤宮「地球がそれを望んでいるのなら……」、
とまるで話が噛み合っていない。
二人の意見の相違は地球に破滅をもたらす存在を人類自身とするか外部からの敵とするかの違いなのだが我夢はそこをまだイマイチ理解していないようだ。今まで藤宮がさんざ語っているのだが、あまり他人の話を聞かないタイプなのかな? こういうところが子供時代に同級生達に「我夢は勉強が出来るから俺達の意見を聞かない」と思わせてしまったのかも。

 

今回の話では藤宮やアグルのテーマ曲が多く使われている。特にエンディング曲への静かな入り方は他の話では聴けない印象に残るものとなった。