帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「アグル対ガイア」

「アグル対ガイア ー甲殻怪地底獣ゾンネル 超巨大天体生物ディグローブ登場ー
ウルトラマンガイア』第18話
1999年1月9日放送(第18話)
脚本 小中千昭
監督・特技監督 村石宏實

 

甲殻怪地底獣ゾンネル
身長 89m
体重 10万t
アグルによって体内エネルギーを開放されて力尽きる。その後、ガイアによって美宝山の地底に戻された。

 

超巨大天体生物ディグローブ
身長 計測不能
体重 計測不能
降下速度を230%上昇させて地球へ向かうがゾンネルの体内エネルギーの直撃を受けて爆発した。

 

物語
アグルとガイアによって地球と人類の危機は回避された。
しかし、両者の考えの違いが決定的になり、遂に藤宮はエリアル・ベースに乗り込む。

 

感想
アグルによって開放されたゾンネルの体内エネルギーの直撃を受けてディグローブは爆発。ガイアは空中でエネルギーを溜めるとバリアーを展開して爆発から地上を守る。
1998年の最終週から休みを一つ入れて年まで越した1999年最初の週の話であるが、ガイアが今まで使った事が無いバリアーをいきなり出して危機を回避したのはちょっと興醒めだった。
ディグローブとゾンネルの話は前回の「天の影 地の光」だけで終わらせても良かったと思う。それをすると今回は怪獣が出ない話になるが過去にも『レオ』の「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」のような話があるので今回はガイアとアグルの対決だけに絞っても良かったと思う。因みに後の「明日なき対決」では怪獣が登場しないでウルトラマン同士の戦いに絞った話が実現している。

 

今回からPALのグラフィックが登場。
PALは『ダイナ』のハネジローに続いてのマスコットキャラクターとなった。

 

藤宮が人類の犠牲を厭わない考えを持つようになった事と人類を不要とするアグルの力の存在に我夢は悩む。
「私ニハ答エラレナイ質問デス」と困った顔をするPALに向かって我夢は「これは誰にも聞けない事」「僕が自分で答えを見付けなきゃいけない事」だと答える。『ダイナ』でアスカがダイゴに言われてようやく気付いた答えをあっさりと言ってのける我夢がちょっと凄い。

 

ニュースで玲子はガイアとアグルは今は対立しているがきっと共に力を合わせて私達を救ってくれると信じていると語り、それを聞いた藤宮は玲子に自分の考えを告げに行く。
藤宮「ウルトラマンは根源的破滅招来体から地球を救済するものだ」、
玲子「ならどうしてウルトラマン同士で戦うの?」、
藤宮「自分のすべき事を分かっているかどうかの差だ。地球を救う事と人間を救う事は同じではないんだよ。今度TVに出る時、その事をちゃんと言うんだな」。
藤宮は物影から話す事が多い。又、相手の顔を見て話さない事も多い。自分と相手の間に何かを挟んだり相手の顔を見ないようにしたりする事で必要以上に他人と関わらないようにしているのだろう。だが、人類を救うつもりが無いのなら他の人間の事なんか完全に放っておけば良いのに、自分の考えが人類に正しく伝わるように玲子に会いに行ったりしている。このように他の人間と距離を取ろうとしていながら完全に人類を無視する事が出来ないのが藤宮の抱える矛盾であり弱点である。

 

玲子を食事に誘うリンブン。
アグルが登場した時の玲子は元気が無いとは意外と観察眼がある。
いきなり物影からウルトラマンについて話しかける藤宮を見て「何を言っているんだ?」はもっともな指摘。
リンブンは藤宮を危険な人物と判断して玲子と一緒にエレベーターに乗り込もうとするが玲子は藤宮に付いて行ってリンブンだけがエレベーターに乗ってしまう事に。哀れリンブン……。

 

アッコの「これから……そっち行っていい?」と言う言葉に我夢は驚き喜ぶと急いで部屋を片付けて着替えをしてアッコを待つ事に。
普段は喧嘩ばかりしていても自分の部屋に女の子が来るのは嬉しいものなんだね。残念ながらこれはアッコとジョジーのイタズラっぽかったが……。

 

しきりに自分の誕生日を周りにアピールするジョジー
「ハッピ・バースディ・トゥ・ミー」や「私はハッピーな人生を送るの!」に表れているようにジョジーは自分大好き。『ガイア』はシリアス度やハードさが高い作品なのでジョジーのようなポジティブなキャラクターは見ていてホッとするところがある。

 

チョー美形で背が高い相手を望むジョジーに対して「無理だよ」と冷たく答える我夢がちょっと酷い。

 

玲子「ウルトラマンには人間の言葉が通じるって教えてくれたよね。なんとなく分かった。ウルトラマンは人間なんだなって」、
藤宮「俺はそんな事まで言っていない」、
玲子「ならどうしてわざわざ教えてくれたの? 本当は言いたいんじゃない? 自分が青いウルトラマンなんだって。……違うか。だったらいいなと思ってさ。だったら私、独占スクープできるし」、
藤宮「あんたの言う通りかもな。俺は誰かに言いたかったのかもしれない」、
玲子「やめてよ」、
藤宮「しかし、言ったところでどうにもならない事だ」、
玲子「やめてよ! どうして私にそんな事まで教えるのよ!」。
玲子の言葉に藤宮は無言のまま去っていった。
玲子は『ガイア』の中で一番最初に明確にウルトラマンの正体を知った人物。(石室コマンダーはいつ知ったのか明確ではない) まぁ、あれだけ藤宮と関わっていたら不思議に思わない方がおかしいかもしれないが。
ヒーローとマスコミと言う関係は『スーパーマン』のスーパーマンロイス・レインを思い出す。
ウルトラシリーズは特別チームがあるので主人公とヒロインは同じ特別チームに所属している事が多いが藤宮も玲子も特別チームに所属していないので二人のドラマは他のウルトラシリーズではあまり見られないものとなった。

 

翌朝、デコーダが不思議な反応を見せた事で我夢は直感的にあいつがエリアル・ベースに来た事を知る。司令室とコマンドルームがロックされ、リパルサー・リフトに異変が起きた事で赤道から軌道を外れ重力に引っ張られ落下していくエリアル・ベース。
今まで根源的破滅招来体に対してリアクションのみをとっていた藤宮が初めて自分から起こしたアクション。それはエリアル・ベースの破壊であった。

 

我夢は人間大のガイアに変身してブリッジに現れると藤宮と対峙する。
藤宮「こんなものがあるから人間はつまらない希望を抱いて現実を見つめない」、
ガイア「希望を持つのがいけないと言うのか?」、
藤宮「根源的破滅招来体を相手にどんな希望を人間が持てるんだよ」、
ガイア「じゃあ君は何をしようとしているんだ? 地球の怪獣を使って」、
藤宮「力には力しかないんだよ、我夢。地球が隠していた強大な力。それを俺は託されたんだ。この地球からね」、
ガイア「嘘だ! 人間を犠牲にした力だなんて間違っているぞ!」、
藤宮「アグルこそ地球を救うものなんだ。我夢、お前もその一人だと思っていたが、あくまで敵となるのか?」。
そして藤宮もアグルに変身する。
この二人の対峙シーンは人間を守ろうとするガイアが人間ならざる姿をしていて、人間を滅ぼそうとする藤宮が人間の姿をしていると言う逆転現象が起きている。
これまで藤宮と我夢の対立は地球のみを救うか人類まで救うかと言う救う範囲の対立であったが、ここに来て藤宮は人類を救わないのではなく滅ぼすと言う事を明確に打ち出してきた。
4年前のクリシスの回答から藤宮は人類は滅亡させなければならないと言う考えがあったのだが、これまで積極的に人類を滅ぼそうとした事はあまり無くて、あくまで根源的破滅招来体との戦いで人類が犠牲になっても仕方が無いと言う消極的なスタンスだった。それが我夢との対立で考えを先鋭化させ積極的に人類を滅ぼしにかかってきた。

 

戦いの舞台はエリアル・ベースの外に移り、アグルは巨大化するとまだ人間大のままだったガイアに攻撃を繰り出す。変身が解けてしまい地上に墜落していく我夢。
「このまま僕は落ちてしまうのか? アグルの力が本当だとしたら……。僕は、ただ思い込んでいただけなのか? ウルトラマンは地球と人類みんなを救う光だって……。違う! 絶対にアグルは間違っているぞ! ガイアァー!!」。
そして我夢は再びガイアに変身する。戦いの舞台は地上に移り、ガイアに巨大化するだけのエネルギーが残っていない事を知ったアグルは再び人間大になってガイアとの決戦に挑む。
肉弾戦の後、アグルは切り札アグルブレードを出し、ガイアはそれをフォトンエッジで弾く。そしてクァンタムストリームとリキデイターが激突し、さらに両者は最後の力を振り絞ってキックを繰り出す。果たして決着は……?
エネルギーが残っていなかったガイアにアグルが合わせたところがあるが、今までアグルの方が強かったのに対して今回の戦いは殆ど互角であった。格闘でもアグルに引けをとらなかったところを見ると我夢もトレーニングを始めたのかな。

 

戦い終わって互いに倒れる我夢と藤宮。しかし、藤宮の決意は固かった。
藤宮「強くなったな……、我夢。しかし! お前は俺が倒す! 俺の邪魔をする存在は排除しなくっちゃな……」。
そして去っていく藤宮。一方の我夢は決意が揺らいでいた。
我夢「藤宮……。どうして地球は、アグルの力を……。どうしてなんだぁー!!」。

 

ヒーロー同士の戦いと言えば「ライダーバトル」と言う言葉もあるように仮面ライダーシリーズでは定番となっているが、ウルトラシリーズではあまり見られず、ウルトラマン同士の戦いより光の巨人と闇の巨人の戦いとなっている事が多い。
そんな中、『ガイア』は「ウルトラマンが守る対象の範囲の解釈の違い」でウルトラマン同士が戦う事となったウルトラシリーズでもかなり異色な作品となった。