帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「妖光の海」

「妖光の海 ー無酸素怪獣カンデア登場ー
ウルトラマンガイア』第21話
1999年1月30日放送(第21話)
脚本 大西信介
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

無酸素怪獣カンデア
身長 78m
体重 6万t
元々は海ホタルのような酸素が無くても平気な無酸素バクテリアの集合体で、地球が酸素の星になったから仕方無く変異してきたが8年前に大量廃棄され海流の影響で一箇所に集まった産業廃棄物が発する窒素やリンの影響で大量発生した微生物によって無酸素空間が形成された事で突然変異を起こした。再び地球に君臨する為に地球を酸素の無い星に戻そうと青い光の球体で無酸素空間を作り出していく。
最後はガイアのフォトンエッジを受けて青い光の粒となって消滅した。

 

物語
少女を助けてしまった事に戸惑いを隠せない藤宮。
ゲシェンクでの苦戦に苛まれる我夢。
そんなある日、海の底から妖しい光が現れる。

 

感想
今回は前回の「滅亡の化石」の続きで、少女を助けてしまった藤宮とゲシェンクに苦戦を強いられた我夢がそれぞれの迷いをとりあえず吹っ切る話となっている。

 

新しい彼女とのデート中に車が故障してしまったサトウ。そして彼女は通りがかった車に乗ってサトウにバイバーイ。哀れだサトウ……。

 

海の底から現れた妖しい光を目撃したサトウは『冬の怪談!? 謎の光る海』と言う番組に出演する事になり、それを見た我夢はビックリ。
『ガイア』はこういうワイドショーがよく出てくる。

 

海の底から現れた妖しい光を破壊するピースキャリー。ピースキャリーが攻撃するのは珍しい。
因みに妖しい光は世界各地に出現していて、それらは世界各基地が破壊していたらしい。劇中では描かれなかったがG.U.A.R.D日本支部以外の数少ない戦果である。

 

ピースキャリーが破壊した妖しい光の破片を分析する我夢は海の事ならとチーム・マーリンの今井を呼ぶ。「そりゃあ、同じチーム・マーリンでも巌さんよりわね」と結構な台詞を吐く今井は特別チームでは珍しい眼鏡をかけた隊員。
「おい! 今なんて言った!? 遂に海の怪獣が出たのか!? えっ!? 遂にチーム・マーリンの出動か!? んっ!? そうなんだろ!?」と興奮して登場する巌。よほど出番を待っていたんだなぁ。
そんな凸凹コンビを従える横谷リーダーは常に冷静沈着でカンデアに攻撃されても決して取り乱す事は無かった。

 

「こーんげーん……、はーめーつー」とインパクト十分な根源破滅教団が登場。
ウルトラシリーズは子供向け作品なので宗教そのものが出てくる事は少ないのだが『ガイア』が放送された頃はオウム真理教事件があったので宗教は身近な問題となっていたところがある。

 

「最近大学にも変なサークルが出来た」「皆不安」「人間は今まで勝手にやって来た」「何かに滅ぼされても自業自得で地球の為なのか」と言うサトウ達の話を聞いた我夢は「本気で言っているのか!?」と感情を露わにする。
こう言うのは藤宮に言われるより普段から一緒にいる友達に言われる方が遥かに効く。

 

カンデアが発した光る球体は海ホタルと同じもの。地球が酸素の星になったから仕方無く変異していた無酸素生命体はカンデアのおかげで再び地球に君臨できるのではと期待して必死に光り輝くが、それらはチーム・ライトニングには不気味な存在にしか見えなかった。
しかし、酸素の星になった地球に君臨している人類が発している電気の光も無酸素生命体からしたら不気味な存在に見えているのではないだろうか。
今回の話はかつて地球に君臨していたが今はカンデアを希望の光としている無酸素生命体と今の地球に君臨していてガイアを希望の光としている人類による地球の覇権を賭けた戦いとなっている。

 

カンデア出現のきっかけは人間が作った環境なのかもと呟く我夢に続けて石室コマンダーは人間が自ら招いた災厄と答える。
カンデアが出現したのは人間が出した産業廃棄物が原因で、自らの滅びを説く根源破滅教団も人間の心の弱さが原因となっている。所詮、人間の敵は人間自身なのだろうか……?

 

セイレーンの危機を知った我夢はガイアに変身しようとするがそこに藤宮が現れる。
藤宮「そんな顔するなよ、我夢。お前が本気であの生物を倒すつもりか確めに来ただけだ」、
我夢「……」、
藤宮「あいつが誰のせいで現れたか、お前ももう分かっているだろう?」、
我夢「あいつは、あれは進化の方向を間違った……。地球の生態系を守る為には仕方の無い」、
藤宮「笑わせるな! 散々生態系を狂わしてきたのは誰なんだ? 進化の方向を間違えたのは人類だ。お前ももうそれが分かっているだろう? ただ認めたくないだけのくせに。行って勝て、我夢。人の愚かさを隠す戦いに……。後で面白いものを見せてやる」。
藤宮のその言葉を背に我夢はガイアに変身し、それを見た藤宮はもう迷いは無いと自分に言い聞かせる。
今回はカンデアと言う人類の罪がはっきりと形を現しているので藤宮の方が説得力あった。いくらなんでも我夢の「地球の生態系を守る為にカンデアは倒さなければならない」は誤魔化しであろう。
ウルトラシリーズでは人類が生み出してしまった怪獣をウルトラマンが倒す話があるが、それも藤宮が言った「所詮は人間の愚かさを隠すものでしかない」のであろうか。もしそうだとするならウルトラマンが怪獣を倒しても人類自身が変わらなければ問題は解決しない事になる。果たして人類は変わる事が出来るのだろうか……。

 

今回のマーリンはカンデアによって海底に沈められそうになったところをガイアに助けてもらったところで出番が終了となっている。
元々はマーリンを登場させる予定ではなかったらしいので、マーリンはいてもいなくても本筋には支障の無い展開になっている。それでもガイアを助ける場面は欲しかったなぁ。
これ以降、マーリンはTVでは後期オープニング映像にしか登場していないがオリジナルビデオ版の『ガイアよ再び』では中心となって活躍している。良かった良かった。

 

戦いが終わった後、藤宮は我夢に街の電気の光を見せて語る。
藤宮「残ったのは悪魔の光だ。地球の資源を奪い傷付けながら作られた愚かな光。我夢、お前が守りたいのは本当にこんなものなのか?」。
しかし、我夢は答える。
我夢「それでも、それでも僕は、この光を守り続ける!」。
たとえどんなに醜くても愚かでも我夢は人間を守る事を誓う。何故なら我夢自身が人間だから。
でも、本当にそれが人間を守る事と言えるのだろうか……?