帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「石の翼」

「石の翼 ー宇宙雷獣パズズ登場ー
ウルトラマンガイア』第22話
1999年2月6日放送(第22話)
脚本 太田愛
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

宇宙雷獣パズズ
身長 82m
体重 9万9千t
急激に大きくなった雷雲の中にある時空の褶曲ワームホールから現れた。
あらゆる電波を妨害する。角を変形させて雷を発し口から炎を吐いて街を廃墟にした。
最後はガイアの至近距離からのクァンタムストリームで倒された。
名前の由来は「悪魔パズズ」かな。

 

物語
世界各国の要人にG.U.A.R.Dへの理解を呼びかける千葉参謀。
そんな千葉参謀の甥である弘希は子供の時間が終わってしまったと感じていた。

 

感想
今回は根源的破滅招来体が現れるようになった世界での子供の心が描かれた話。
『ガイア』はどうしてもアグル藤宮やXIGが中心の話が多くなってしまうので、この世界の一般の人間は何を感じ何を考えるようになったのかと言う今回の話は世界観を深めるのに大きな効果があった。

 

千葉参謀には世界各国の要人にG.U.A.R.Dへの理解を呼びかけると言う大事な仕事があった。
『T』の朝日奈隊長の出番が少ないのは上層部との会議の為と言う説があるが今回はその様子を実際に描いた話となった。
こういう描写があると特別チームの組織としてのリアリティがグッと強まる。

 

いまだに根源的破滅招来体の全貌を掴めないG.U.A.R.Dに不満を持つ国が多くなるが千葉参謀は国際的な結束が崩れたら根源的破滅招来体には対抗できないと説得する。
とりあえず今は根源的破滅招来体と言う「敵」が存在するから一応は纏まっているが、国ごとに利害や思惑があるので一つ違ったらそれぞれが自国の都合を優先してバラバラになってしまう恐れは十分にある。

 

ボイジャーの話をする千葉参謀が実に楽しそう。ひょっとしたら宇宙の話が好きなのかもしれない。そうだとしたら、宇宙人との出会いを目指すボイジャーの話を楽しそうに語る千葉参謀が宇宙からの脅威に対抗する仕事をする事になったのは悲劇と言える。
因みにボイジャー計画は実在のものだが平成ウルトラシリーズで実在のものが話の中で重要な要素を占めるのはかなり珍しい。舞台が放送時に近い『ガイア』ならではと言える。

 

千葉参謀の甥である弘希は宇宙について色々な夢を見ていたが、現実ではそらを見上げても根源的破滅招来体と言う地球を滅ぼそうとする恐ろしいものしか現れない。弘希は子供の時間はもう終わってしまったとして、夢の象徴だった望遠鏡ボイジャー1号を埋めてしまう。
夢ではなく現実を見つめる事で子供の時間は終わって大人になったとする弘希に向かって千葉参謀が語る。
「根源破滅招来体は確かに存在する。それが……私達の現実だ。それを受け入れる為に君はそらを見るのを止めたのかもしれない。現実を受け入れ、大人になっていこうと考えて……。だがなぁ、弘希。君がそらを見るのを止めた時、君が無くしたもの、本当に失ったものは何だ?」。
夢を捨てる事が大人になる事ではないのだ。

 

今回はパズズによって破壊されていく街と灰色の雲に覆われた空が終末観を作り出している。特に避難する人々を手前にパズズが街を破壊している場面が良かった。
ウルトラシリーズを見ていると感覚が麻痺してくるが、よく考えたら毎週のように巨大怪獣が現れて街が破壊されて多くの人が犠牲になっているって物凄く絶望的な世界だよなぁ。

 

パズズによって電波が撹乱されて避難誘導が進まない中、混乱する若い部下達を尻目に千葉参謀は地図を広げて適切な指示を送る。
いつもやたらと驚いているイメージがあるがやる時はやる人だった。この時の千葉参謀はメチャクチャ格好良かった。

 

レーダーによるミサイル誘導にも誤差が生じてチーム・ライトニングの攻撃がパズズに当たらない。そこで我夢は「ロック・ファイト」でチーム・クロウが見せたハンドサインを使ってライトニングにオートマニュアルで攻撃するよう指示を送る。
こういう細かいところでも以前の設定やエピソードが出て来るのが『ガイア』の特徴。

 

千葉参謀の頑張る姿を見た弘希は埋めたボイジャー1号を掘り返す事を決意する。
石の翼にやって来た弘希と千葉参謀のところにパズズの攻撃が迫る。その時、石の翼から放たれた光がパズズの光線を阻止する。力を使い果たした石の翼が砂となって消えるとパズズはすかさず第二撃を放つが今度は我夢が変身したガイアが千葉参謀と弘希を守る!
これ、よく考えたら、石の翼が光を発していなかったら千葉参謀達は死んでいたね……。
個人的には石の翼から光が放たれる場面ははっきり見せずにボカした方が良かったかなと思う。

 

今回のガイアの登場はクリスタルと言うかメタリックな感じで『ダイナ』の初期を思い出す。

 

今回は引きの構図が多いせいかセットがいつもより広く感じられた。
爆発しまくりの戦闘シーンは迫力満点。ここまで炎と爆発を使った戦闘は『ガイア』でも少ない。

 

大昔にそらから落ちてきたと言い伝えられている不思議な石。それは「石の翼」として遠い星から来た宇宙船の翼だったのではないかと語られていた。
翼がある宇宙船と言うのも不思議な話だが、今回登場したパズズが悪魔の要素があるので、その対比として天使の翼が持ち出されたのだろう。
「宇宙船」と言うSF要素のある言葉と「翼」と言うファンタジー要素のある言葉を合わせるのが太田さんらしいなと思う。