「明日なき対決」
『ウルトラマンガイア』第25話
1999年2月27日放送(第25話)
脚本 右田昌万
監督・特技監督 村石宏實
物語
玲子と逃避行を続ける藤宮。
我夢は今まで抑えていた感情を一気に藤宮にぶつける。
どちらが本当のウルトラマンか、明日なき対決が始まった!
感想
ウルトラシリーズで初めて怪獣が登場せずウルトラマン同士が戦う衝撃の展開。(『レオ』の「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」はニセアストラがいる)
ガイアとアグルと言う二人のウルトラマンがお互いの信念をぶつける『ガイア』ならではの展開であった。
我夢は砂漠に埋もれた石像のガイアのヴィジョンを見る。このヴィジョンは滅びた謎の遺跡もあってかなり意味深なものとなっている。
我夢はこのヴィジョンを「変えなくてはいけない未来」だと考える。このままでは未来は破滅してしまうと言う漠然としたメッセージなのかなと思ったが、後に「襲撃の森」で本当に未来人が出てくるので、ひょっとしたら実際にこのように滅んでしまった未来があったのかもしれない。
TVでアグルは世界各地で怪獣を呼び覚ましてパニックを起こした存在とされ、藤宮はアグルと深い関わりがあり、玲子を拉致して逃亡中の存在と報道される。完全に悪人の扱い。
後にアグル藤宮はガイアや人類の味方として再登場するが世間の認識をどう改めさせたのだろうか?
玲子は報道からバラエティまで幅広く活躍していてお茶の間の人気者だったらしい。
藤宮と関わってからはシリアスな面が多く出ているが、序盤のコミカルな面を見たら確かにバラエティに向いていそう。
立ち寄ったバーで絡まれ殴られる藤宮。アグルの力で反撃するかと思ったがそれは無かった。おそらく使えるだけの力がもう残っていなかったのだろう。
殴られた藤宮は「人間は醜い」「人間は汚い」「人間なんて皆地球から吐き出してやる」と捨て台詞を吐く。
う~ん……。個人的に『ガイア』でこういう一部の悪い人間を出すのはどうかなと思う。これなら悪い人間もいるが良い人間もいるから人間全てを滅ぼす必要は無いと言う話になる。それは事実なのだが藤宮が今まで語っていた人間が抱える罪は一部の人間の仕業で済まされない、もっと根本的な問題だったと思う。
恒星の配列は正常だが地上からは歪んで見える事に気付いた弘希。
それは外気圏の位相が歪んでいて屈折した恒星の光しか地球には届かなくなっているからであった。
恒星の配列が異常な原因を「親しい仲間が教えてくれた」と説明するダニエル議長。石室コマンダーはそれが我夢だと気付き、ここに居なくても自分の務めが分かっていると評する。
個人的には弘希がエリアル・ベースに電話をかけられたのが気になる。教えていたのか? 千葉参謀。
外部からリザードにハッキングする存在を石室コマンダーは放っておけと指示。犯人が我夢と分かっての判断。
今の我夢は謹慎処分扱いなのだが、実際はXIGに縛られる事も無くいつも以上に自由に行動できている。藤宮とゆっくり話せる時間が出来た事を考えたら今回の追放は結果的には良かったと言える。
ダニエル議長は藤宮一人の為にアルケミー・スターズ全員が危険な存在だと思われていると現状を分析する。
今回の藤宮は玲子以外に理解者がおらず、途中立ち寄ったバーでも体が温まるものが出されない等かなり孤独な状況になっているが、我夢は多くの理解者がいて、マコトに温かいコーヒーを出してもらう等かなり恵まれた状況になっている。
我夢と藤宮の考え方の違いはそれぞれの環境が大きく関わっているのかもしれない。
海岸を歩く玲子に藤宮は「人間は地球のバイ菌だ」として「バイ菌は殺菌しなければ地球は破滅する」と語る。そんな藤宮を玲子は「地球に選ばれたが為に苦しんで自由を無くしている」として「可哀相」と評し、その言葉に藤宮はかなり動揺する。
「ウルトラマンに変身せず他の人間のように身勝手に生きろと言うのか」と言う藤宮の反論に玲子は「自分を守れない人間に地球を守れるわけはない」と自傷的で破滅的な藤宮を諭す。
ウルトラマンは人々が見上げる巨人である為に神のように扱われる事があるが、一人の人間が大きな世界の運命を担わされる神として生きていくのは非常に難しい。昭和シリーズやニュージェネレーションシリーズでは他のウルトラマンと関わる事でその負担がかなり減らされるが、平成三部作の頃は他のウルトラマンと関わる事が少ないのでその責務に戸惑い苦しむ事が多かった。
我夢は根源的破滅招来体の大攻勢を知っていながら黙っていた藤宮に怒り、藤宮は今までその事に気付かなかった我夢の鈍さに苛立ちを表す。お互いに「お前はウルトラマンの力の使い方を間違っている」「自分こそ本当のウルトラマンだ」と言い合いを始め、遂に拳による殴り合いに発展してしまう。
ここで藤宮の目的が「根源的破滅招来体が大攻勢を仕掛ける前に地球怪獣を全て覚醒させる事」だと明かされる。地球怪獣を覚醒させる理由までは明らかにされていないが今までの展開からだと「人類を滅ぼした後に根源的破滅招来体と戦わせる為」だと思われる。この時は失敗したが「地球怪獣が根源的破滅招来体と戦う」と言う展開は最終章で実現する事になる。
玲子にあなたの事を知りたいと言われた藤宮はかつて持っていた夢を語り出す。
「海を探検したかった……。俺の夢さ。人間は海のほんの上っ面しか知らない。地球の7割は海だと言うのに、どの国も自分とこの優秀さをひけらかそうと宇宙にばかり行きたがる。誰も海の本当の素晴らしさを知ろうとはしない。だから俺は……。あそこは俺達の生まれ故郷なんだ」。
夢を語る藤宮の表情は今までになく穏やかなものだった。そして藤宮の心と共にアグレイターも光を取り戻していく。
そして、この話からガイアが「大地のウルトラマン」であるのに対してアグルは「海のウルトラマン」となる。
リザードが自分達を追跡している事を知った玲子。藤宮は自分を車から降ろせと言うが玲子は藤宮と藤宮の夢を守りたいと叫ぶ。
稲森博士もだったが、藤宮は女性に「守りたい」と思わせる存在のようだ。「滅亡の化石」で助けられた少女も再会後は少女の方が藤宮を気遣っている雰囲気だったし。
リザードに追われて運転を誤った玲子の車は崖下へ。しかし、アグルが現れ玲子を乗せてそらへ。アグルの手の平で『タイタニック』よろしく両腕を広げる玲子。
『タイタニック』のオマージュ場面からも分かるように今回の話は怪獣が出ないので藤宮と玲子の話にかなりの時間が割かれている。賛否はあると思うがウルトラシリーズで恋愛ドラマに挑戦した事は評価したい。
我夢は「お前はウルトラマンじゃない!」とガイアに変身しようとするが再び未来のヴィジョンを見てしまう。しかし、それを「僕が……、僕が本当のウルトラマンだ!」と不安を押しのけて変身する。
ガイアの挑戦を受けてアグルは玲子を地上に降ろす。玲子は自分と一緒にいれば誰もあなたを傷付けられないとアグルにしがみつくがアグルはガイアのところへ向かう。
藤宮「どっちが本当のウルトラマンか、決着を付ける時が来たようだな」、
我夢「望むところだ」。
遂にウルトラマン同士の明日なき対決が始まる!
今回の戦いを見るとアグルは先制攻撃型でガイアはカウンター型のように見える。
ガイアとアグルの戦いを知った堤チーフはチーム・ファルコンとチーム・クロウをスタンバイさせる。そこに「俺も行く」と石室コマンダーが名乗りを挙げる。石室コマンダーの初出撃で決戦ムードが更に強まった!