帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「アグル復活」

「アグル復活 ー宇宙捕獲メカ獣Σズイグル登場ー
ウルトラマンガイア』第41話
1999年6月19日放送(第41話)
脚本 吉田伸
監督 石川整・村石宏實
特技監督 村石宏實

 

宇宙捕獲メカ獣Σズイグル
身長 75m
体重 10万5千t
ゾーリムと同じパルスを発するワームホールから出現した金属が集まって誕生した。
指からミサイルを撃つ。対象物をロックしてから確実に攻撃する。
対ガイア用兵器で最初の戦いで我夢に細工をしてガイアに変身出来ないようにすると十字架のケースに捕らえて連れ去ろうとしたが、復活したアグルV2に我夢を奪還されると、そのままフォトン・スクリューで一方的に倒された。
遠い町・ウクバール」のルクーの着ぐるみを改造している。

 

物語
精神を極限まで磨り減らしてしまった藤宮。
一方、根源的破滅招来体はガイアそのものを狙い始める。
我夢の危機に藤宮はもう一度戦いたいと強く願う。その時……!

 

感想
自分の罪に苛まれた藤宮は髪は白くなり幻影に怯え海が呼んでいると呟くようになる。
診断によると体に異常は無くて精神の問題との事。藤宮の状態を知らされた我夢は何がそこまで藤宮を追い詰めたのか考える。て、ここ最近の話で藤宮を追い詰めない出来事を探す方が難しいと思うのだが……。

 

Σズイグルから見た場面ではモニターに謎の言葉が表示されている。根源的破滅招来体が使用している言語だろうか?

 

海に入って行こうとしているところを我夢に助けられた藤宮は病院で落ち着きを取り戻すと海を見ながら静かに語り始める。
藤宮「世話になったようだな……。海は……生きている。様々な命を生み出し、疲れた魂が戻っていく……。そんな生命の営みを俺は見守っていきたかった……。だが、俺のした事は結局、アグルの力で人々を混乱に陥れただけなんだ。結果、地底貫通弾だ! ……今は償いも出来ない」、
我夢「君は間違ってなんかいない。ほんの少しだけ結論を急ぎすぎただけだ。人間だって変わらなきゃいけないんだ」、
藤宮「人類は地球の一部だ。皮肉にもアグルの力を失った事で俺は気付いた。我夢、お前はウルトラの力を失った自分を想像した事があるか?」、
我夢「力を失った、自分……」、
藤宮「俺はアグルの力を取り戻そうとした! しかし、アグルの力はもう戻ってこない! それは俺の奥底にクリシスの答えと同じものが眠っているからだ! あの時、お前はクリシスの回答を知って、お前だったら同じ事をしたか?」、
我夢「ああ、結果的には……」、
藤宮「嘘だ! お前にそんな事できるはずがない。俺自身の中に人類を消去しなければ地球を救えないと言う……!」、
我夢「いや、そうじゃない。君が本心でそう思っているはずがない。藤宮、君だってあの予測に疑問を持っていた。だから、何人もの人の命を助けたんだ。君はあの時、守るものは何も無いと言った。それはクリシスの予測が奴らに操られたものと知って戦う誇りをズタズタにされたからだ」、
藤宮「戦う……誇り」、
我夢「それを取り戻すんだ!」。
長くなってしまったが、ここでの我夢と藤宮の会話は『ガイア』での藤宮の物語を見事にまとめている。
ここの会話で注目すべき点は我夢は藤宮の答えを完全に否定しているわけではない事と藤宮が語ったウルトラマンの力を失う事であろうか。

 

瀬沼チーフが藤宮を保護しにやって来るが我夢の説得を受けて少し様子を見る事にする。チーフである瀬沼がXIGの一隊員である我夢の意見を聞き入れる事が多いが、ひょっとしたら瀬沼チーフは我夢がウルトラマンである事を知っているので意見に従っているのかもしれない。

 

石室コマンダーが「対ガイア用兵器」と指摘したようにΣズイグルはガイアである我夢を狙ったわけだが、それとは別に我夢はアナライザーとして多くのXIGメンバーと接し、どのような状況になってもそれを分析して突破する案を考え出すと言う皆からの信頼を得ていたので、ウルトラマンである事に関係無く高山我夢と言う人間の喪失がXIGにとって大きなダメージとなった。(実際、捕らえられた我夢を救出する方法を石室コマンダーも含めてXIGの誰も思い付く事が出来なかった)

 

「俺には……守るものが、ある! 地球よ、もう一度、もう一度、俺に力をくれぇー!! アグルゥーッ!!! 俺はもう一度、戦いたいーっ!!!」。
今回の話の最大の見所は何と言ってもアグルの復活!
これまでの藤宮の苦悩があったので、それらが一気に吹き飛ぶ今回の復活劇はカタルシス満点であった。

 

アグルV2が我夢をアグルセイバーで救出するが、あんな上空から叩き落とされてΣズイグルの中にいた我夢はよく無事だったなぁ。(一応、アグルV2が庇ってはいたが)

 

蹴りでΣズイグルの腕をもぎ、攻撃を受けてもダメージを受けないアグルV2。ここでBGMがかかってのアグルV2の挑発ポーズは見ていて思わずニヤリとしてしまった。
その後、フォトン・スクリューでΣズイグルの攻撃を吹き飛ばしながら相手にぶつけると言う圧倒的な強さを見せ、Σズイグルが爆発するところを見るまでもないと言う場面はアグルらしさが存分に出ていてカッコ良すぎであった。
こういうちょっと斜に構えた雰囲気は他のウルトラマンには出来ないアグルならではのものである。

 

戦いが終わり、XIGに戻る我夢はファイターEXから藤宮に向けてエスプレンダーを向け、藤宮も海岸からアグレイターを我夢に向ける。
二人のいる場所は違っていても心は通じ合っていると言う雰囲気があって良い場面。これこそ複数ヒーローの醍醐味と言える。
この時の藤宮の笑顔は今までの皮肉混じりなものではなく心の底からの清々しい笑顔だった。

 

ところで今回の話で「我夢……」「藤宮ー!」と何回呼び合っていたんでしょうか?

 

今回復活したアグルだが、かつて藤宮が得ていたアグルの力はガイアと融合してガイアV2やガイア・スプリームヴァージョンになっているので藤宮が今回得たアグルの力は前とは違うものだと思われる。おそらく地球にはまだいくらかウルトラマンを生み出せる力があるようだ。(キャサリンが3人目のウルトラマンになる計画もあったそうだし)
さて、今回のアグルV2を見て思い出したのが『魔神英雄伝ワタル』。簡単に言ってしまうと「魔神」と言う魂を持ったロボットに乗り込んで戦う作品なのだが、途中で主人公メカである龍神丸に仲間メカの空神丸の魂が合体して龍王丸にパワーアップする話がある。その後、仲間メカの戦神丸が戦王丸に、幻神丸が幻王神にパワーアップしていく中、新たな仲間メカとして空王丸が登場する。この空王丸は他の魔神のようなパワーアップではなく空神丸のつがいであった。

 

石川整さんがウルトラシリーズで監督としてクレジットされたのは今回のみとなっている。