「XIG壊滅！？ ー超巨大単極子生物モキアン 死神登場ー」
『ウルトラマンガイア』第47話
1999年7月31日放送（第47話）
脚本 右田昌万
監督・特技監督 北浦嗣巳
超巨大単極子生物モキアン
身長 333m
体重 33万t
モノポールを体内に仕込んだ存在で地球降下を目指す。
全身から発する電撃でXIGの総攻撃を返り討ちにした。
リパルサー・リフトを利用して磁気単極子S極となったエリアル・ベースに引っ張られて宇宙へ誘導される。
電撃と触手でガイアV2を捕らえ、エリアル・ベースからの最後の反撃も返り討ちにするが、最後はエリアル・ベースの特攻を受けて爆発した。
名前の由来は「あんきも」から。
死神
身長 計測不能
体重 計測不能
「主からの遣い」と称して主の目的や考えを藤宮に伝える。
モキアンを操る事が出来、主からのプレゼントとして藤宮にモノポールを与えると告げる。
藤宮と議論を繰り広げるが玲子の発言に捨て台詞を吐いて姿を消えた。
物語
玲子の危機を察知した藤宮は死神にある場所へと誘われる。
一方、地球に破滅をもたらす存在モキアンが襲来。地球最大の危機に遂に地球防衛指令デフコン1が発令され、エリアル・ベースが動く！
感想
『ティガ』『ダイナ』の最終章は三部作だったが『ガイア』の最終章は今回の話から始まると考えると五部作となる。
前回の話まででメイン以外の人間関係や諸問題について一応の決着は付けられたので今回の話からは地球に住むもの達が力を合わせて地球最大の危機に立ち向かう展開となる。
ワームホールが歪んでナルトに……！
実はこれは藤宮が食べていたラーメンの具だった。
藤宮の食事シーンは賛否両論あったらしいが自分は藤宮の人間らしさが見られて結構好き。
因みに今回のエンディングの映像もナルトをイメージした渦が登場している。
北浦監督によるとナルトの渦は『ガイア』で災厄の原因となるワームホールで「そんなものは飲み込んでしまえ」と言う意味らしい。
藤宮が食事したラーメン屋は超時空を超えた『タラバマン』のポスターに千葉参謀がタコ型の宇宙人と和平交渉していると言う胡散臭い新聞に一癖ありそうな客や店員とミジー星人がいてもおかしくない雰囲気。どうして、こんな店に入っちゃったんだ？
玲子が出演しているTVを見ていた藤宮はいきなりTVから呼びかけられて驚く。
そして玲子が渦の中に消える場面を見せられた藤宮は玲子のマンションへ向かう。
あ、藤宮って玲子の部屋を知っているんだ。
エリアル・ベース上空に出現した何物かによって地上との通信が途絶えてしまう。
それこそ死神が主から藤宮へのプレゼントだと紹介した磁気単極子モノポールであった。
モノポールは磁石で言うN極かS極の片方しか持たない理論上の物質で、地球上には無くて宇宙の始まりの時ビッグバンで生成されたと言われる物質。それを体内に仕込んだモキアンが地球に落下したら地球は破滅してしまうのであった。
「反宇宙からの挑戦」での反物質もだが根源的破滅招来体は時々凄まじいものを持ち出してくる。
あと30分でモノポールによる地球への影響が始まるとして石室コマンダーは遂に地球防衛指令デフコン1を発令し、XIGの総力を結集してモキアンの地球降下を食い止めると宣言する。
対ゾーリム戦以来となる全ファイターの出撃、慌しく動く職員達、そしていよいよ動き出すエリアル・ベースと否が応にも盛り上がる。
これまでのウルトラシリーズで基地そのものが主力として前線に参加する事は無かっただけにエリアル・ベースの出撃はこれまでとはレベルが違う事態が訪れた事を感じた。
そう言えば、かなり久し振りにチーム・ファルコンを見た気がする。
調べてみたら「伝説との戦い」以来となる約1クール振りの登場であった。
「いつか見た未来」で彼らのドラマに決着が付けられたところはあるが経験豊富なベテラン部隊と言う設定はもっと色々使えたと思うのでちょっと勿体なかった感じがする。
根源的破滅招来体がモノポールまで持ち出す必要性を問う藤宮に死神は意外な答えを返す。
藤宮「なぜ人間を嫌う！？ 人類がお前達に一体何をした？」、
死神「我々は……滅ぼされたくない！」。
藤宮「人間が……お前達を！？」。
死神の意外な答えにさすがの藤宮も驚きを隠せない。
「今のうちに人類を滅ぼさなくては、いつか自分達を滅ぼしかねない」「地球を蝕んでいった人類はいつか宇宙も蝕むに決まっている」と言う死神の言い分は「大地裂く牙」や「宇宙怪獣大進撃」を見ると理解できるところはある。だが、それらに対しては「根源的破滅招来体が襲ってこなかったら人類は地底貫通弾やワーム・ジャンプ・ミサイルを持ち出さなかった」と言う疑問が出てくるのだが……。
死神「主はいつもあなた方を見ています。そして常に憂いています。お見せしましょう。宇宙の真実のほんの一部を！」。
宇宙の星々が集まり、最後に地球が重なり、一人の少女の姿が浮かび上がる。
死神「彼女は悪性のウイルスに冒されています。主は彼女の体からウイルスを取り除こうと様々な薬を投与した。あなた方が破滅招来体と呼んでいるのがそうです」、
藤宮「人間が……、人間が宇宙を蝕んでいるウイルスだと言うのか！？」。
モキアンと戦うXIGの姿を見ながら死神は話を続ける。
死神「随分しぶといウイルスだとは思いませんか？ どんなに薬を投与しても宇宙に蔓延しようと死に物狂いで向かってくる」。
死神の話に藤宮は驚くが、死神が語った事はかつて藤宮が語っていた話に宇宙からの視点を入れてスケールを大きくしたもので内容自体は殆ど同じだったりする。
人間はウイルスのような存在であるとする話はこれまでもあったが、その人間を取り除く為に送り込まれた怪獣達はウイルスに対する薬であるとした話は今回が初めてかな。人間の視点だと人間が善で怪獣が悪なところがあるが、人間が地球や宇宙を蝕むウイルスだとするならウイルスである人間を滅ぼす怪獣は薬となると、より広い視点から見たら善悪が逆転してしまうと言うのは意表を突かれて面白かった。
死神「主はあなたを必要としています。」、
藤宮「破滅招来体が俺を！？」、
死神「えぇ、彼女の痛みを取り除いてくれるのなら、このモキアンを差し上げましょう。地球の運命をあなたの望むままに……」。
死神が語ったいくつかの話は藤宮も心の奥底に抱えていたものだったので、藤宮は死神からの申し出に迷いを見せてしまう。
因みに藤宮は「悪夢の第四楽章」でも稲森博士に擬態したクインメザードから同じ事を言われているがこの時はきっぱりと拒否している。おそらくこの時は根源的破滅招来体の言い分が正しいかどうかより稲森博士の姿を利用された事への怒りが強かったのだろう。
死神が話に出している「主」は何やら超越的な「神」を思わせる雰囲気がある。
自ら「死神」と名乗る遣いといい根源的破滅招来体は神を気取りたがる。
ところで死神は藤宮との話の前半では「自分達の身の危険を感じた」と言う泣き落としの話をしていたのに途中からは「地球や宇宙を救いたい」と言う正義の話に変わっている。
どちらも真実なのかどちらか片方だけ真実なのか、それともどちらも単なる口実に過ぎないのか……。
死神の指示を受けたモキアンの反撃によって全ファイターが撃退され、さらにエリアル・ベースも大打撃を受けてコマンドルームもダメージを負ってしまう。もはや残された手段はエリアル・ベースのリパルサー・ホイールの回転数を極限まで上げて磁気単極子S極に限りなく近付ける事でモキアンを宇宙に引っ張り上げるだけであった。しかし、それはエリアル・ベースを犠牲にする事を意味していた。
皆が注目する中、石室コマンダーは静かに考え、そして目を開いて宣言する。
「全員エリアル・ベースより退艦！ リパルサー・リフトで怪獣を引きつけ、安全高度まで上昇。エリアル・ベースごと怪獣を破壊する」。
最終決戦で特別チームの基地が破壊されてしまうのはウルトラシリーズの定番。避難する中でジョジーが目に涙を浮かべながら「こんな戦い……いつまで続くんだろう」と呟くのが重い。
藤宮は人類は今までの戦いで十分苦しんでいるとしてこれ以上の戦いは無意味だと訴えるが死神は彼女の痛みはそれ以上で人類の苦しみよりもずっと長く苦しいと反論。宇宙に命が芽生えた時から強いものが弱いものを飲み込みエネルギーとする戦いのシステムが彼女の痛みを生み出したと詰め寄る藤宮に対し死神は進化しすぎた人類の存在そのものが宇宙を破滅に導くのだと返す。
気のせいか藤宮と死神の話が段々噛み合わなくなっていく。そんな実りの無い会話に玲子が口を挟む。
「勝手すぎるよ………。あの人達は私達を取り除く事しか考えていない。私達が同じ宇宙で生まれた大切な命なんだってこれっぽっちも考えていない」。
そう言って玲子は藤宮に抱きついて話し続ける。
玲子「私はあなたが好き。人類を憎しみながらも少女も私もたくさんの命を救ってくれた。私はあなたの中にあるその優しさが好き。その優しさは皆が持っているもの。人間にその心がある限り地球も宇宙も救えるような気がする」。
玲子のその言葉を死神は高笑いで嘲る。
「人間に……ウイルスごときに何が出来る？」。
そう言い残して渦になって消え去る死神。少女も溶け宇宙空間も消滅していく。
色々と大層な御託を並べていたが結局は人類を見下していただけだったのだろうか……？
石室コマンダーの指示を受けて「ガッテンだ！」と返事するPAL。
誰から教わったんだ？
エリアル・ベースが安全高度に辿り着いたので石室コマンダーは退艦しようとするが先程の戦闘でエリアル・ベースのフライホイールに亀裂が入っていた為にモキアンを引きつける事が出来なくなってしまう。う～ん。リパルサー・リフトの飛行原理がよう分からん……。
モキアンが地球に降下する前に石室コマンダーはエリアル・ベースを激突させようとして、それを知った我夢はガイアV2に変身してクァンタムストリームを撃つがモキアンの外周部を破壊しただけで内部にまでダメージを与える事が出来ず、逆にモキアンの攻撃を受け触手に捕らえられてしまう。この時の遠近感が見事だった。
ガイアV2を救う為に石室コマンダーは残された全火力でモキアンに集中攻撃を仕掛けるが反撃を受けてエリアル・ベースは完全に沈黙してしまう。爆発まで後45秒の中、石室コマンダーはPALに命じる。
「このまま突っ込め！！」。
皆が叫んで止める中、エリアル・ベースはモキアンに激突！！ 石室コマンダーは爆炎に包まれるのであった……。
最終決戦で特別チームの基地が破壊されてしまうのはウルトラシリーズの定番であるが基地も使っての総力戦はさすがに少ない。でも、地球の運命を賭けた最終決戦に相応しい盛り上がりとなるので、やっぱり作品のクライマックスはこのような総力戦を展開してほしい。
