帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「天使降臨」

「天使降臨 ー破滅魔虫カイザードビシ登場ー
ウルトラマンガイア』第49話
1999年8月14日放送(第49話)
脚本 吉田伸
監督・特技監督 村石宏實・八木毅

 

破滅魔虫ドビシ
身長 62cm
体重 6.8kg
東京のメインのワームホールから世界各地に発生した。
数に物を言わせて各国G.U.A.R.Dを壊滅状態に追い込み世界各地の通信システムをTV以外全てダウンさせた。
ガイアV2とアグルV2の全身にまとわり付いて二人のエネルギー解放によって吹き飛ばされると合体してカイザードビシとなった。
これまで出現した根源的破滅招来体の特徴を少しずつ合わせ持っているらしい。

破滅魔虫カイザードビシ
身長 62m
体重 6万8千t
ドビシの群れが合体した姿。
個体ごとに腕に鎌がある無いと言った違いがある。
腹から触手を出す。体中の眼から怪光線を発する。
倒されてもドビシが合体する事で新たな個体が誕生しガイアV2とアグルV2を追い詰めていく。
直立状態と前かがみ状態で別の怪獣に見えるデザインが素晴らしい。

 

幻影怪物魚人
身長 230cm
体重 計測不能
地球が悲鳴を上げているように聞こえる街中を徘徊するゾンビのようなボロボロな姿の人間。
『ダイナ』の「移動要塞浮上せず!(前編)」「移動要塞浮上せず!(後編)」のディゴンの着ぐるみを改造している。

 

根源破滅天使ゾグ
身長 127m
体重 9万t
そらの闇を引き裂いて降臨した光をまとった存在。
カイザードビシと魚人を消し去る。

 

物語
世界各地を覆うイナゴの群れ。これこそ地球破滅への序曲なのか?
人々の希望を背負ってウルトラマンが現れる時、そらの闇を引き裂いて天使が降臨する……!

 

感想
世界各地を覆うイナゴの群れ。ビルにぶつかって墜落したり田端さんに消火器で倒されるなど一体一体は弱いが集まるとかなり強く、各国G.U.A.R.Dを壊滅状態に追い込み、梶尾リーダーを返り討ちにし、ガイアV2とアグルV2にたかって苦しめた。
因みに最終3話に未公開シーンを付け加えた「地球よ永遠に」では昔から世界の終末にはイナゴが大量発生しているとのマコトの台詞がある。

 

石室コマンダーが梶尾リーダーと稲城リーダーを出撃させながら我夢と藤宮は出撃させなかった事に藤宮が疑問を呈する。
「なぜ俺達を兵器・戦力として扱わないんですか? 俺と我夢の力を含め作戦を立てるべきです。俺達に頼ればXIGの能力が疑われるからですか?」と言う藤宮の指摘に石室コマンダーは「君達は兵器ではない。共に戦う仲間だ」と答える。
しかし、梶尾リーダーがファイターを操縦するのと同じように我夢はウルトラマンに変身すると考えると藤宮が言うようにウルトラマンも作戦に組み込むべきだと思う。だが、後の展開を見ると石室コマンダーウルトラマンの敗北が人類を絶望させる一番の方法だと言う事を予想していた可能性がある。
ところで石室コマンダーに「共に戦う仲間だ」と言われた藤宮は戸惑いながらも少し嬉しそうにも見えた。

 

米田リーダーが前の戦いで負傷したので今回は梶尾リーダーと稲城リーダーと言う珍しい組み合わせ。今まで反発していた二人の共闘体制は見物で、特に当初は他チームに敵意を見せていたチーム・クロウの稲城リーダーが撃墜された梶尾リーダーを守る場面は成長を感じる。
そう言えばXIGでチームを超えてのエピソードが米田リーダーと慧以外は殆ど無かったのは勿体なかったなぁ。

 

XIGの苦戦を見た藤宮はガイアにイナゴを一掃させて自分はワームホールに突っ込むと言う無茶な作戦を立てる。「再会の空」の時と考え方があまり変わっていない……。それに「宇宙怪獣大進撃」でワームホールの先が根源的破滅招来体の世界に繋がっているとは限らないと言う事が判明しているので、この作戦はリスクが高すぎると思う。
アグルの力が戻ってから藤宮はウルトラマンがなぜ二人いるのかをずっと考えていて、「幸いウルトラマンが二人いた」「どちらかが倒れてももう一人いる」と言う結論に達していた。この話を聞くと藤宮の特攻精神は変わる事は無さそうだ。ただ、自分が倒れてもまだ我夢がいると言うように今まで自分一人で全てを背負い込もうとしていたのが他人を信頼できるようになったのは大きな成長だと思う。

 

そこにやって来る敦子。気まずい顔をする我夢。事情を察してその場を離れる藤宮。
敦子「どうして……黙って行くのよ? どうして?」、
我夢「あ……」、
敦子「どうして皆に黙って行くの? どうして?」、
我夢「ごめん、そういうの……苦手で」、
敦子「ちゃんと、行ってきますぐらい言ってくれなくちゃ……。私には……頑張ってって言うくらいしか……何も出来ない……」、
我夢「敦子……、行ってくる」、
敦子「……うん」。
ここでの敦子の言葉は姉の律子を思わせるものだった。律子と同じように敦子も覚悟を決めたと言う事か。
ところでこの場面で敦子がいきなり泣くのが唐突過ぎると言う意見を聞いた。最終決戦で主人公を見送るヒロインとして『ティガ』のレナや『ダイナ』のリョウやマイに比べてやや弱いのは分かる。ただ、敦子と我夢は戦いが始まってからずっと同じオペレーション・クルーとして頑張ってきた仲で、それが生きるか死ぬか分からない戦いに行くとなれば送る側にこみ上げてくるものはあると思う。例えば、恋人ではないが同じクラスで席が隣同士で友達になった男子と女子がいて、その男子が生きるか死ぬか分からない戦いに行くとなったら女子がそれを平然と見送るのはちょっとおかしいと思う。
藤宮「最後かもしれない……。よく味わえよ」、
我夢「ああ……」。

 

ビルに共鳴する空気がまるで地球が悲鳴を上げているように聞こえる街中を徘徊するゾンビのようなボロボロな姿の人間。劇中では語られていないが、これは幽霊になって地上を徘徊する人類を予言したと言う根源的破滅招来体からの視覚メッセージとの事。「46億年の亡霊」で未来が「いつか人類だって幽霊となって地上を徘徊する時が来るのかも」と言っていたが言葉で済まされるのと実際に映像として見せられるのではやはりインパクトがまるで違う。
因みのこのゾンビは魚を思わせるデザインをしている。やっぱりクトゥルー神話がモデルなのかな。

 

外出禁止令が出ている中、田端さんはこんな時こそ事実を報道するとしてリンブンと一緒に街に出て魚人の存在を世間に知らせようとするが、人々の不安を煽る討論番組や不安で暴れ出す人々を映すインタビュー番組を見て「皆の絶望を煽るような中継に一体何の意味があるんだ」と考える。
個人的な意見だが世の中には真実の名の下に人々の不安を煽る人がかなりいると思う。隠すよりかはマシかもしれないが、それでも他の伝え方を選んでくれないのかなと思うものがある。

 

魚人に襲われる子供を助ける田端さんの所に我夢と藤宮がやって来る。
「どうしてウルトラマンは来てくれないの?」と言う子供の問いに我夢と藤宮は笑顔で優しく「ウルトラマンは必ず来るよ」と答える。
「僕達は自分達の出来る事をする」と力強く答えて去っていく我夢と藤宮を見てウルトラマンの正体を感じ取った田端さんは子供を家に送ると「家に帰ったら……TVを点けるんだ。そこにはきっとウルトラマンが映っているはずだ」と告げる。
笑顔が戻る子供。田端さんに再び報道の使命が燃え上がる。
田端「行くぞリンブン」、
リンブン「ハイ! ウルトラマン撮るんですね!」、
田端「決まっているだろう! あいつらだけが絶望した皆に希望を与えられるんだ。俺達の為に命を懸けてくれる奴らを……、そんな奴らを撮り損なったら一生後悔するぞ!」、
リンブン「ハイ!」。
上で真実の名の下に人々の不安を煽る人がかなりいると書いたが、逆に言えば情報には人々に希望を与える力もあるはずと自分は信じたい。

 

この場面に登場する子供はTVの前で番組を見ている子供達をイメージしたメタ的な要素を含んだものだと思われる。ウルトラマンの本質を説明するのに必要だったかもしれないが唐突な登場だったのは否めない。『ティガ』もだったが、いきなり子供を出すのではなく、もう少し自然な流れを作ってほしいなと思う。

 

暗雲の下、エスプレンダーの光が弱まっているのを見た我夢は地球の光が弱っている事を感じる。
我夢「光が……地球が弱っているんだ」、
藤宮「お前がいなければ、俺はここにいる事は無かった」、
我夢「え?」、
藤宮「悪い意味じゃない。俺は今、お前とここにいる事を誇りに思っている。感謝している、我夢」、
我夢「僕だってそうさ。……行こう!」。
弱った地球が与えられる最後の光か二人の周りを光が包み込み、二人はウルトラマンに変身する。
先程藤宮が言っていた「なぜウルトラマンが二人いるのか?」だが、もしウルトラマンが一人だけで我夢だけ藤宮だけだったらここまで来れただろうか? 我夢と藤宮と二人いて時に対立し時に助け合ったからこそ二人のウルトラマンは今ここにいるのだと思う。

 

イナゴの群れが合体したカイザードビシと戦うガイアV2とアグルV2。その様子を中継しようとする田端さんとリンブン。途中、リンブンがイナゴに襲われるが田端さんが身を張ってそれを阻止する。さすがは宇宙刑事! そしてリンブンの中継がKCBに届き、そこから世界各地へと放送される。
「たった今、緊急映像が入りました。地球を救う為、ガイアとアグル、2人のウルトラマンが出現しました。ウルトラマンがいる限り地球はきっと大丈夫です。だから皆さんも希望を捨てないで下さい」。
玲子の言葉の通り人々はウルトラマンの戦いを見て笑顔を取り戻していく。感動的な場面であるが「ウルトラマンが絶望した人々に希望を与える」と言う展開自体が根源的破滅招来体の罠でもあった。

 

カイザードビシとの戦いは触手に捕まったガイアV2をアグルセイバーで救出して、その後もガイアV2を庇う動きを見せるなど容赦が無かった初期の頃と違って今のアグルには他人を思いやる優しさがある事が分かる。
一方のガイアもアグルV2の助けをあえて制止して自らフォトンエッジでカイザードビシを撃破するなど初期の頃はアグルに助けられていたが今はもう一人で戦えるようになった事が分かる。

 

そらの闇を引き裂く光がカイザードビシと魚人を消し去る。呆然と人々が見上げる中、ゆっくりと地上に舞い降りる光をまとった存在、それは……「天使?」。
ゾグはこれまでのウルトラシリーズに登場した「怪獣」とも「宇宙人」とも違う存在で初めて見た時はこれからどうなるのか見当が付かなかった。

 

今回のエンディングは我夢と藤宮、そして二人に関わった様々な人の紹介になっている。

 

今回の話は助監督だった八木毅さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。