帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンガイア ガイアよ再び』

ウルトラマンガイア ガイアよ再び ー根源破滅海神ガクゾム 根源破滅飛行魚バイアクヘー 甲殻怪地底獣ゾンネル登場ー
2001年3月25日発売
脚本 小中千昭
監督・特技監督 八木毅

 

根源破滅海神ガクゾム
身長 65m
体重 7万7千t
遥か昔に地球に来て海底でずっと眠っていた根源的な悪意。
破滅をもたらす力を得る為にリナールの光を奪って実体化する。
ワームチューブで東京湾岸に出現した。
角や両手から光弾を発する。相手の攻撃を吸収して跳ね返す。
バイアクヘーを吸収して両手に鋭い鎌を持った姿へとヴァージョンアップする。
最後はガイア・スプリームヴァージョンのフォトン・ストリームとアグルV2のフォトン・スクリューを同時に受けて倒された。
根源的破滅招来体の生き残りか新たな攻撃の始まりかは不明。

 

根源破滅飛行魚バイアクヘー
身長 18m
体重 3千800t
ワームホールで太平洋上に出現した。
素早い動きと数に物を言わせて敵を粉砕する。敵に取り付いて電流を発する。
梶尾リーダーによると鼻先が弱点らしい。
ガクゾムとの関連は不明。
名前の由来はクトゥルー神話に登場する「バイアクヘー」かな。

 

甲殻怪地底獣ゾンネルⅡ
身長 86m
体重 9万5千t
地球の奥に棲んでいたが再び地上に姿を現してG.U.A.R.D戦車部隊の攻撃を受けてしまう。
実はガクゾムやバイアクヘーの出現を恐れての行動だった。

 

深海生命体リナール
身長 不明
体重 不明
海底に棲む人類の未だ知らない高い知性を持った生命体。
個体それぞれの名称は持っていない。
ガクゾムの存在を我夢や藤宮に知らせようとする。
自らの光でガイアとアグルを復活させた。

 

物語
根源的破滅招来体の脅威が去って数ヶ月。再び地球怪獣が現れて人類と争うようになる。
一方、我夢と藤宮の周りに深海のイメージが現れる。果たして誰からの何のメッセージなのだろうか?

 

感想
平成三部作のオリジナルビデオシリーズ第3弾。

 

今回のオープニング映像はTVシリーズにあった3種類のオープニング映像を組み合わせたものとなっている。

 

今回は『ガイア』のTVシリーズのその後の話となっている。
かつてアルケミー・スターズが開発したクリシスを上回る量子コンピューターが誕生して今まで謎だった地球内部の変動現象もいずれ解明されようとしていた。しかし、再び現れたゾンネルの排除が決定される等、技術は進歩しても人間の意識はまだ変化していなかった。

 

藤宮は怪獣排除妨害の容疑で指名手配されていた。「大地裂く牙」で「テロリスト」と呼ばれていたが、まさか指名手配までされてしまうとは……。仮面ライダーと違ってウルトラマンに変身する人間は多くが地球防衛軍のような公的な組織に属しているので藤宮のように指名手配されてしまう人物は他にいない。

 

一方の我夢は普通に学生生活を送っていた。ウルトラマンである事が世間に知られてもちょっとした有名人くらいの感覚で済んでいるのが意外だった。シリアスハードな『ネクサス』だけでなく比較的コミカルで明るい『ダイナ』や『R/B』ですらウルトラマンである事がバレたら色々危険な雰囲気だったのに。「地球の叫び」で恐怖心または歪んだ正義感で我夢達を追い回していたマスコミは一体どこに行ったのだろう?

 

我夢は大学を退学していたが大学側は休学扱いにしてくれたとの事。
アルケミー・スターズでウルトラマンがいれば良い宣伝になると言う事かな。

 

我夢がガイアだと知った女子大生達の「ガキっぽい」「自分はアグル藤宮の方が好み」と言う会話に顔がひきつる我夢。今まで比較されまくってきたんだろうなぁ。

 

ウルトラマンの友達と言うのを利用して女の子を誘うのがサトウらしい。
一方で女の子とかに興味無さそうだったナカジがいつの間にかサトウに似て女好きになっていたのは意外。傍にいたので影響を受けちゃったのかな。

 

XIGの一員として地球に生まれたものとして戦ってきた経験を本来やろうとしていた研究に役立てる決意をする我夢。そこに米田リーダーが操縦する懐かしのファイターがやって来る。
「我夢さん、お迎えに来ました。一緒に来てもらえませんか?」。
日常会話では普通に話をし、任務関係では敬語を使うとキチンと使い分けているのが米田リーダーらしい。でも、それなら講義中にいきなり教室の横にファイターを停めるのはどうかと思うが……。
サトウ達に見送られて旅立つ我夢。ファイターが上空を飛んでも人々はもう気にしなくなった。これは見慣れた光景なのだ。

 

米田リーダーはエリアル・ベース2号がもうすぐ完成する事とそれに合わせて自分ももうすぐスカイシフトに入る予定である事を話す。どうやらXIGのメンバーは根源的破滅招来体との戦いの後はそれぞれ別の道に進んでいたようだ。

 

今回は海底が舞台と言う事でTVシリーズでは哀しい程に出番が無かったチーム・マーリンが登場する事になる。
まさかTVシリーズの後期オープニング映像に登場したのに劇中には全く登場しないとは思わなかった。

 

藤宮の回想でゾンネルが再び出現した時の話が語られる。
再び現れたゾンネルと人間の衝突を防ぐ為に藤宮は新型のパーセルでゾンネルの方向を変えようとするが失敗し、ゾンネルとG.U.A.R.D戦車部隊の戦いに巻き込まれて負傷してしまったらしい。
ゾンネルが伝えようとしていた事を理解出来ない自分を悔やむ藤宮。どうやら藤宮は人類と怪獣の争いを回避する為の調整役を果たそうとしているようだ。この人類と怪獣の調整役は『コスモス』のムサシへと引き継がれる事になる。

 

TV番組で玲子は藤宮がゾンネルの排除を妨害したのは、かつてのように怪獣を使って人類を攻撃しようとしているのではなく、怪獣を地球に生きる仲間として救おうとしているからと擁護する。
玲子は髪が伸びて落ち着いた雰囲気になった。田端さんはボスニアに取材中と言う設定。リンブンはどうしているのかな?

 

夕方の波止場で光の無いアグレイターを見つめていた藤宮は深海のイメージに包まれてアグレイターが海底の奥底に消えていくのを見る。
「アグルの光……。そこにはもう無い」。
藤宮が気が付くと目の前に謎の少女が立っていた。
少女「そんな簡単に人は変われるはずがない。たとえ地球から光を授かったあなたでも……」、
藤宮「そう……、そうだよな。そう簡単に人は変われるものではない……。だが一つだけ大きな違いがあるんだ。人が努力を止めない限り、この地球は滅びない。人間には未来の事など分からない……。だからそれは今ここに生きている俺達人間の……決意だ」、
少女「同じ地球に生きるものへ武器を向けるのが決意?」、
藤宮「人の命が奪われそうになる時、怪獣を排除すべき敵として武器を向ける。だが俺は違う方法があると……」、
少女「信じて……いる?」、
藤宮「信じられたら……、もっと楽になれるのになぁ……」。
さすがに今まで色々あっただけに藤宮の言葉には重みがある。
かつてのように極論を振り回したり現実に悲観したり自分の意に沿わないものを拒絶したりするのではなく、現実を受け止め、それでも絶望せず、今の自分に出来る事を精一杯していくその姿はまさにヒーローであった。

 

「今のうちに告白しちゃえば」と我夢とアッコをからかうジョジー。このやり取りに無愛想な横谷リーダーも思わずニヤリw
以前と変わりないアッコとジョジーだが髪型が変わっている。TVシリーズの印象が強いからか二人とも新しい髪型に違和感を覚える。

 

同じ地球なのに殆ど人間が来た事が無い世界に足を踏み入れる事になり思わず身震いをする我夢。すると、そのスーツでは寒いと今井がカイロを渡してくれる。
我夢がウルトラマンだった事を信じられなかったが一緒に戦ってきたウルトラマンがこの地球に生まれた仲間だった事が嬉しいと語る今井。一見すると良い台詞に聞こえるが、これってウルトラマンが地球以外の星の出身だったらどうしていたのだろうかと言う疑問が生じる。
気のせいか『ガイア』は地球に生きるもの達の結束を強調するあまり段々と排他的になっていっている感じがする。

 

セイレーンは通信の発信源近くまで来るが周りの水流に異変が起きている事を知って横谷リーダーは攻撃準備を指示する。自分達の任務は攻撃ではなく調査で会話を求めてきた相手にいきなり武器を見せるのは反対だと訴える我夢に横谷リーダーは臨時のアナライザーは黙っていろと一喝する。
直後、真下から大量のアイアクヘーの襲撃を受けてセイレーンは操縦不能に陥って沈んでしまうが、パニくる我夢に対してマーリンは冗談を言い合いながらもセイレーンを修理していく。
危険な海底に身を置く者達のプロ感覚が見られる場面。横谷リーダーが我夢を邪険にしていたのは海底の素人を一緒に連れて行くのに反対だったのかな?(仲間とは笑顔で談笑していたので単に普段会わない人物には愛想を振れない性格なのかも)

 

藤宮を追うG.U.A.R.Dアメリカのスピノザ隊員は「君がこれまでしてきた事。個人的には拍手したい気分だ。青いウルトラマンが復活した時の事は忘れられない」「君が地球の怪獣を救おうとしているのも間違っているとは思えない。しかし、私はG.U.A.R.Dの隊員だ」と個人としての考えとG.U.A.R.Dと言う組織としての考えが違う中で動いている。
人間と言うのは難しい生き物で個人としては間違っていると思っていても組織に合わせて動かなければいけない事がある。だが、それでは「悲しみの沼」のような悲劇を生んでしまう事もある。今回の話でアグレイターが藤宮のところに直接戻るのではなくあえてスピノザ隊員のところに現れたのはウルトラマンに変身する人間以外の人も変わらなければいけないと言う地球からのメッセージだったのかもしれない。

 

空が闇に包まれて海からバイアクヘーの大群が現れる中、少女は光の粒となってスピノザ隊員の手から離れたアグレイターに宿っていく。
「私達には力が無い。あなた達には力がある。自分のすべき事を……して!」と言う少女の言葉と共に藤宮は光を取り戻したアグレイターを受け取り、その光景を見たスピノザ隊員は「私も……本当に自分のすべき事を探そう」と言って立ち去る。そして藤宮は叫ぶ。
「地球の怪獣はこれを恐れていた……。くっそう……、人間はつくづく愚かだぜ……! それでも地球は! 俺に光を預けると言うのか!! アグルゥー!!」。
『パワード』でもバルタン星人と言う敵がいるから人々はウルトラマンを味方だと認識できたと言う話があったが『ガイア』の人類も根源的破滅招来体と言う敵がいなければ同じ地球に生きる怪獣を味方と認識できなかった。
藤宮が変身したアグルV2を見てスピノザ隊員が「奇跡を見たんだ。我々だって変われるさ」と言っていたが、果たして本当に人間は変わる事が出来るのだろうか……?

 

暗闇広がる海底世界で光を発する存在リナール。この海底世界の描写は本当に美しかった。因みにこの海底世界がある場所は「セレファイス海溝」と言う名前になっている。おそらくラヴクラフト作品の「セレファイス」が由来だと思われる。
海底が舞台の話はTVシリーズの「妖光の海」を思い出す。この話も人類以外の地球生命の話で語られるテーマもあまり変わってはいないが我夢と藤宮の考え方が結構変わっている。

 

バイアクヘーの出現に対してチーム・ライトニングに出撃命令が下る。
「懲りない奴らだ。この地球にはXIGがいるってのがまだ分かっていない……。チーム・ライトニング、XIGの誇りにかけてミッションを遂行します!」。
梶尾リーダーにTVシリーズ初期のプライドの高いイメージが戻ってきていて懐かしい。バイアクヘーに後ろを取られて危機に陥ったところをアグルV2に助けられて「借りが出来ちまったな」と言うところも良い。

 

リナールの光を奪って破滅をもたらす力を得ようとするガクゾムが東京湾岸に現れ、それを受けてアグルV2も東京湾岸に降り立つ。
それをTVで観戦する人々の中にはらくだ便の清水がいる。アグルV2のスーツアクターは清水さんなのでこの場面は自分で自分を応援している形になっている。

 

いつもは冷静で物静かなイメージがある神山リーダーだが今回は「待っているだけじゃ駄目なんだ」「藤宮君、君だけじゃない。この星を破滅から守ろうとするものは!!」「我夢は必ず生きている!」と一体どうしたのかと驚くほど熱血だった。

 

TVでアグルV2の戦いを伝える玲子。
ウルトラマンは地球の救世主ではありません。地球で生まれ生きようとしている私達の希望です。私達がウルトラマンを応援する希望の光が破滅の闇を打ち破るのです!」。
ウルトラマンは神ではない」と言う話は何度かあるが「救世主ではない」と言う話はひょっとしたらここだけかな。ウルトラマンを「救世主」と言う個人ではなく「人間達の希望」と言う広いものにしたのは我夢や藤宮と言ったウルトラマンに変身できる人物にだけ地球の命運を背負わせるのではないと言う意味が込められていそうだ。

 

セイレーンの中で目を覚ました我夢が光の無いエスプレンダーに手を伸ばすとリナールが周りに集まってくる。
「君達も……僕ら人間と同じこの地球に生きてきたんだよね」。
リナールが宿った事でエスプレンダーに光が戻る。
「ありがとう」。
そして我夢は光の戻ったエスプレンダーを掲げる。
「ガイアァー!!」。
遂にガイア復活!!(ただ土砂が舞い上がる着地シーンが無かったのが残念。『ガイア』と言えばあの着地シーンなので)

 

ガイアV2はアグルV2を助け、ガクゾムはバイアクヘーを吸収してヴァージョンアップする。
ガイアV2とアグルV2は二人がかりでも苦戦を強いられるがXIGの援護を受け、さらにそらから降り注いだリナールの光でパワーアップし、ただ見ているだけでなく自分達の出来る事をしようとする人々の応援を受けて遂にガクゾムを倒すのであった。
今回は「地球はウルトラマンの星」でのゾグとの決戦の時以上に人々がウルトラマンを援護したり応援したりする場面が入れられているので皆で力を合わせての勝利と言うのがより強くなっている。

 

ガクゾムが倒された事で世界を覆っていた闇も消滅し、セイレーンも無事に海上に戻る事が出来た。……て、結局、今回もマーリンは根源的破滅招来体との戦いでは活躍が無かったりする。

 

戦いの後の我夢と藤宮。
我夢「……久し振り。元気そうだね」、
藤宮「ああ……」、
我夢「地球ってさ、不思議だね」、
藤宮「そうだな」。
二人の妙にぎこちない会話が久し振りに再会した恋人みたいでなんか笑える。
我夢「また僕達に光が戻った。でも、それを導いてくれる存在がいたんだ。僕らがこれまで知らなかったこの地球の仲間が……」、
藤宮「俺は多分、その一人と話をした……」、
我夢「話って言ったって……?」、
藤宮「俺は教えてもらった気がする。この星に生きているのは……この星を大切に想っているのは……、人間だけじゃないってな……」、
我夢「だけどこの星を破滅させないと言う意思と力を持ってる僕達人間が一番頑張らなくちゃいけないんだ」。
会話が終わり、藤宮は無言だが笑顔で立ち去り、我夢は藤宮とは反対側に歩き出した。
その後の場面では再び平和を取り戻した人々の日常が見られる。TVシリーズの最終回では見られなかった皆のその後が見られたのが嬉しい。
今回の話はTVシリーズの最終章に近い作りになっているが前回より人類が前に進めた感じがする場面があってTVシリーズの後日談として上手くまとめられていたと思う。

 

本作は後に未公開シーンを加えた完全版が発売されている。