帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「カオスヘッダーの影」

「カオスヘッダーの影 ーゴルメデ カオスゴルメデ登場ー
ウルトラマンコスモス』第2話
2001年7月14日放送(第2話)
脚本 大西信介
監督 北浦嗣巳
特技監督 佐川和夫

 

古代暴獣ゴルメデ
身長 54m
体重 6万9千t
以前にSRCが捕獲に失敗している怪獣。
口から火球を吐く。
EYESの抑制弾でエネルギー質量を10%までダウンさせられるが暴れ出して麻酔弾も効かなくなる。ルナモードのフルムーンレクトで大人しくなるがカオスヘッダーにエネルギーを吸い取られて倒されてしまった。
『Q』の「ゴメスを倒せ!」のゴメスがモデル。

 

カオスゴルメデ
身長 54m
体重 6万9千t
カオスヘッダーがゴルメデからエネルギーを吸い取って作り出したコピー体をさらにカオス化させたもの。
口から火炎を吐く。
用無しとなったゴルメデを倒すが、怒りのコロナモードによるブレージングウェーブで爆破させられた。

 

友好巨鳥リドリアス
身長 48m
体重 5万8千t
ムサシの危機を感じて鏑矢諸島のシールドを突っ切って駆けつけた。
ゴルメデと戦うがシールドを突っ切った時のダメージで苦戦を強いられる。
その後、コスモスによって救われ、EYESによって鏑矢諸島に戻された。
ゴルメデとは古来より天敵関係だったらしい。
『Q』の「ゴメスを倒せ!」のリトラがモデル。

 

物語
ヒウラキャップに誘われてEYESに参加したムサシに立ちはだかる現実の壁。
ムサシは暴れる怪獣ゴルメデを無事に保護する事が出来るのか?

 

感想
ムサシに興味を抱いたヒウラキャップは宇宙開発センターに出向いてムサシをEYESに誘う。
「決断力、行動力、パイロットとしての技量、怪獣に対する愛情と知識。正直、俺は君に惚れた!」。
本当に正直だよ、ヒウラキャップ。
怪獣保護を謳っていながら失敗が多いEYESに対して良い印象を抱いていなかったムサシは戸惑いを隠せなかったがヒウラキャップの「リドリアスの本当の心って分かるか? 俺は知りたい。彼らが何を考えているのか。どうしたいのか。彼らの本当の心……」と言う言葉でEYESへの参加を決める。

 

「人工の島トレジャーベース。ここには民間の総合科学研究機関SRCの精鋭で構成されたTEAM EYESの基地が置かれている」。
『コスモス』の序盤はナレーションで基本設定の紹介が行われている。自分はTV作品の基本は「TVだけを見て分かるように作られている」だと考えているので、このように劇中でちゃんと紹介がされているのは嬉しい。その後のEYESに参加したムサシに対して行われた隊員紹介も視聴者が隊員の名前と顔を覚える為に必要なものだと思う。

 

ドイガキ隊員は植物と話が出来る装置を開発中と言う設定があるが殆ど触れられないで作品が終わってしまった。名前にある「土」のエレメントと植物を関連付けたかったのかな? これで話が一つ作れそうな設定だっただけに勿体なかった。
後輩が出来たとして先輩風を吹かすアヤノ隊員がカワイイ。
シノブリーダーは前回の戦いでムサシが生還できた謎について問いただし、奇跡と言う答えに納得できずさらに追及しようとする。ここからシノブリーダーがムサシとコスモスの関係を探っていく展開になるのかと思われたがそれは無かった。他のウルトラシリーズにも言える事だが登場人物がウルトラマンについて調べようとしないのは気になるところ。

 

THE FIRST CONTACT』の頃から気になっていたが、ムサシは人付き合いがあまり上手くない。本人に自覚は無さそうだが意外と他人に対して失礼な言動をしている。しばらく付き合えば悪意が無かった事が分かるかもしれないが、そうでなければかなり嫌味な人物だと思われそう。今回もEYESに参加した初日でありながらアヤノ隊員が一番気にするちゃん付けで呼んで、EYESを前にして「怪獣保護があまり上手くいっていない」とハッキリ言ってしまっている。

 

「「怪獣保護」と言うEYESの目的に共感して来ました。その……今はその辺りが上手くいってないようなんで、僕はもっと積極的に怪獣を守……」と言うムサシの言葉をフブキ隊員は白々しい拍手で遮ると「ご立派なもんだ。現実の見えないお坊ちゃんは」と返す。
フブキ隊員の言葉にムサシは怒るが、シノブリーダーはそれを宥めると「私達は誰一人怪獣を倒したいなんて考えている人はいない。ただ現実的に守りきれない場合だってあると言う事……。これだけは知っておいて」と答える。
その言葉に黙るムサシに向かってフブキ隊員は「実際に動いてみれば分かる事だ」と言い、シノブリーダーも出動時に「見てみる? 現実を」と告げる。
ムサシは実際に怪獣保護をした事が無い。前回のリドリアスの時も実は失敗して命を落とすところだったのをコスモスに救われている。なので、ムサシは現実を知らないで頭の中の理想だけで怪獣保護を訴えているのは確かである。
フブキ隊員やシノブリーダーがムサシに厳しい態度を取るのはかつては同じ理想を掲げていたが今はその先の現実も知ってしまったから。ヒウラキャップがムサシをEYESに参加させたのは現実を知って諦めてしまった隊員達にもう一度理想を持たせる為だったと考えられる。

 

必要以上にムサシに突っかかるフブキ隊員。やたらと攻撃許可を求める姿を見ると「どうして防衛軍からEYESに参加したんだ?」と問い詰めたくなるが、そんなフブキ隊員もかつては今のムサシと同じように理想に燃えていた時期があって、それが現実を知って挫折してしまった。フブキ隊員がムサシに厳しく当たるのは今のムサシの姿に理想に燃えていたかつての自分の姿が見えて、そこからさらに今の挫折した自分の姿も見えてしまい、その今の自分への苛立ちが出てしまうのだと思われる。

 

ウルトラシリーズの伝統である特別チームが活躍する時のワンダバ!
ワンダバは作品ごとに色々なバリエーションがあって楽しい。

 

『コスモス』は戦闘機の出動はCGで描かれているが何か薄くて浮いている感じがしてイマイチだった。

 

ゴルメデの巨大感と重量感が良い!
以前にも現れたゴルメデについてドイガキ隊員が説明するが、それを聞いていたシノブリーダーはゴルメデの事を知らない様子であった。シノブリーダーならEYESが確認した全怪獣のデータを調べるくらいはしていそうなのでちょっと意外。

 

ゴルメデの捕獲が進む中、緊張で顔が強張るムサシを見てシノブリーダーは「怖い? リドリアスのように大人しい怪獣ばかりじゃないのよ」と語りかける。
その後、捕獲作戦が失敗してムサシ達が乗るテックサンダー2号が墜落してしまう。そこに迫るゴルメデを見てシノブリーダーは「これが現実……。怪獣はペットを捕まえるのとは訳が違う。私だって一匹だって多くの怪獣を救う事を夢見てEYESに入った。でも……」と本心を吐露する。

 

「僕は……諦めない! ギリギリまで頑張れば……、きっと奇跡だって起きる!」と叫ぶ
ムサシの言葉にシノブリーダーは「奇跡なんて……」と呟くが、その時、奇跡が起こる!
ウルトラシリーズでこういう時に起こる奇跡はウルトラマンの登場なのだが今回はなんと怪獣のリドリアスの登場であった。ウルトラシリーズで主人公のピンチに怪獣が現れるのは殆ど前例が無かったのでこれは驚いた。『ガイア』の終盤で地球怪獣が根源的破滅招来体と戦うようになったがそれが更に推し進められた展開であった。

 

今回のリドリアスとゴルメデの戦いは『Q』の放送第1話である「ゴメスを倒せ!」にあったリトラとゴメスの戦いをオマージュしたもの。
因みにリトラは人間の味方をしたウルトラシリーズ最初の怪獣となっている。

 

お互いに信じ合い助け合うムサシとリドリアスの関係はヒウラキャップが語った「怪獣の本当の心を知りたい」に対する一つの答えと言える。
今回のような怪獣同士の戦いや人間を助ける怪獣は少なかったので新鮮で面白くて燃えた。もっとやってほしかったが『コスモス』ではこの後あまり多くなかったのは残念。だが、この要素は後に『メビウス』のマケット怪獣、『大怪獣バトル』、『ギンガ』、『X』へと引き継がれていく事になる。

 

ゴルメデに苦戦するリドリアスを救う為にフブキ隊員のテックサンダー1号がゴルメデを攻撃する。これまでのウルトラシリーズだと「フブキ隊員ナイスだ!」と応援する展開なのだがムサシはゴルメデも救わなきゃ駄目なんだと訴える。
このままだと人間にとって良い怪獣であるリドリアスが倒されてしまうが、その為に人間にとって悪い怪獣であるゴルメデを倒す事はしてはいけない。理屈としては正しいが人間の感情としてはとても難しい話で、ここをどう描いていくかが『コスモス』に課せられた問題の一つとなる。

 

ゴルメデも救う為にムサシはラウンダーショット・ガンユニット装着形態を構えて閃光弾で誘導するがゴルメデからの攻撃を受けて思わず破壊弾で応戦してしまう。
「やっぱり、これしか……撃つ事しか出来ないのか?」と叫ぶムサシに向かってフブキ隊員は「そういう事だ。それが現実だ」と言い放つ。
しかし、ムサシはラウンダーショットを捨てて、あくまで力に頼らない。
そして崖に追い詰められた時、ムサシの持つ輝石が光ってコスモプラックに変わる。
「ムサシ……諦めるな」。
コスモスの声を聞いたムサシはコスモプラックを掲げるのであった。
「怪獣を倒す事を否定する主人公であっても自分の身が危なくなったら応戦してしまう」と言う場面をしっかり作った事は大いに評価できる。これがある事でそれでも怪獣を倒さないとするムサシの選択に重みが出た。

 

花のつぼみが開くようなコスモプラックによる変身シーンは『THE FIRST CONTACT』での花が咲くようだったコスモスの登場シーンを意識したものなのかな。
コスモスの着地場面はCGで作られていて、実写では出来ない真下から見た急降下を狙ったと思われるが、画面に遠近感が無かったので遥か上空から地上に舞い降りた感じが出ておらず、着地した時の衝撃もCGではイマイチであったりとやや残念な出来であった。

 

カオスヘッダーは前回の「光との再会」では光の状態で強力な物理破壊力を見せ付け、怪獣に寄生して暴れさせ、完全に融合する事で細胞変化まで起こさせた。そして今回では怪獣を蘇らせ、エネルギーを吸い取って実体化するを見せた。
こうして見るとカオスヘッダーは全ての生物を支配下に置ける存在に思えるが、前回の話でリドリアスがムサシの説得に心を動かされてカオスヘッダーを抑えると言ったカオスヘッダーにも弱点になり得るポイントがある事も示されている。

 

カオスヘッダーの名付け親はドイガキ隊員。いつの間にか名前を付けていて、それを現場で喋って既成事実を作って定着させたのは狙いか偶然か。
「コスモス(秩序)」に対抗しての「カオス(混沌)」なのだが劇中で名前の意味が説明されなかったのはちょっと残念。

 

コスモスは相手の攻撃を受け流しながら少しずつダメージを与えて弱ったところをルナエキストラでカオスヘッダーを切り離したりフルムーンレクトで大人しくさせたりしている。
しかし、ゴルメデを利用したあげくに用無しとして倒してしまったカオスヘッダー=カオスゴルメデに対して怒りを爆発させたコスモスはコロナモードにモードチェンジすると先程とはまるで違う戦い方でカオスゴルメデを圧倒し、最後はカオスゴルメデが吐いた火炎をブレージングウェーブで押し返して爆破している。
「ヒーロー=敵と戦って倒す」と言うイメージに即したのが今回の話。設定やテーマを考えると怪獣を無闇に倒すわけにはいかないので倒して良い絶対悪としてカオスヘッダーが設定されたのだが、怪獣は倒さないがカオスヘッダーは倒して良いと言うダブルスタンダードはやはり気になる。この矛盾や疑問点は『コスモス』後半の大きなテーマとなっていく。

 

カオスゴルメデとの戦いでコスモスのカラータイマーが点滅を始める。
ウルトラマンがこの星で活動できるのは地球時間のおよそ3分。頑張れ、ウルトラマンコスモス!」。
やっぱりこういうナレーションは必要。

 

戦いの後、EYESはリドリアスの様子を見に鏑矢諸島にやって来る。
リドリアスは絶対に元気になると言うムサシの姿を見てシノブリーダーが語る。
シノブ「キャップ。私達、確かに現実って言葉を逃げる為の口実に使っていたのかもしれませんね」、
ヒウラ「怪獣を救う為にもっと努力するとかか? ムサシに感化されたな。けどな、それは決して生易しい事じゃない。これから……色んな矛盾にもきっとぶち当たるだろう」、
シノブ「分かっています。でも努力すればきっと奇跡に出会える。そんな気がするんです。……変ですか?」、
ヒウラ「いや、俺だって……奇跡は見たいさ」。
人は皆、何かしらの理想(夢)を持つが、やがて現実を前に諦めてしまう事が多い。
しかし、最後まで諦めなかったら、いつか理想(夢)は現実になるかもしれない。
人はそれを「奇跡」と呼ぶのかもしれない。