「落ちてきたロボット ーイゴマス登場ー」
『ウルトラマンコスモス』第4話
2001年7月28日放送(第4話)
脚本 川上英幸
監督・特技監督 原田昌樹
友達ロボットイゴマス
身長 69m
体重 1万5千t
ビビン星の工場で生産された友達ロボット。言語解析装置も内蔵しているハイテクオモチャ。ボディは地球で言うソフトビニールのような素材で構成されている。
とても元気でイタズラ大好きなゲバンの持ち物だったが旅行中に宇宙船から落ちて地球にやって来た。そこで地球の子供達と出会って友達になる。
子供達をカプセルに入れて楽しませる。攻撃的な装備は無いがカプセルをそのまま相手にぶつける事で攻撃に転用できる。
自分に廃棄物処分シールが貼られて捨てられていた事を知るとゲバンを追い求めて暴れるが子供達の訴えを聞いて落ち着きを取り戻す。最後はコスモスに自分を壊してほしいと頼むがルナモードによって小さくされて子供達に託された。動かす電池は現在の地球の科学力では作り出せないが今の子供達が大人になった頃には……。
物語
束の間の休息を味わうEYES。
一方、退屈な日々に飽き飽きしていた子供達の前に宇宙から巨大なロボットが落ちてきた。
感想
ノンビリとお茶をするEYES。こういう日常シーンは各キャラクターの紹介に最適。
EYESは隊員服の下にそれぞれ色違いのアンダーシャツを着ている。ドイガキ隊員はやはり黄色だった。カレーは好きかい?
誰かが入隊する度に何かが起きるジンクスがあると言うフブキ隊員。ムサシが入隊したばかりなので何か事件が起きるかもしれないと言う皮肉なのだが、この後もジンクスの事を口にしている。意外と気にするタイプかもしれない。
この時の会話で呼び捨てにされたアヤノ隊員が怒るがフブキ隊員は「申し訳ありませんでしたね、アヤノお嬢様」と皮肉混じりに返している。性格悪いと言うか大人気無いと言うか……。
壊れたラジコンを見て新しいのを買わなきゃ駄目だなと呟き、最近イケてる事無いかなとイケてない台詞を吐く子供達。そこに謎のロボットが落下してきて子供達は「イケてるぅー!」と駆け出す。落下したロボットはイゴマスと名乗って子供達と自己紹介し合う。
イゴマスがビビン星のハイテクオモチャで宇宙人の落し物だと知った皆は持ち主はどれだけ巨大な宇宙人なんだと想像する。でも持ち主がオモチャより巨大でなければならないと言う決まりは無いと思う。現に巨大ではない地球の子供達でもイゴマスで遊べたわけだし。
ドイガキ隊員はイゴマスに書かれていた文字をポルトガル語に似た言語形式として解析を開始する。『THE FIRST CONTACT』の1420MHzもだったが、未知の言語や宇宙語で済まさないで間に一つ何かを挟んで解析するのが細かくて良い。
ゲバンの宇宙船から落ちてしまったと言うイゴマスの話を聞いたEYESは宇宙船を探すが残念ながら発見できなかった。
フブキ隊員は相手はオモチャであって生物ではなく、落し物は自分達の管轄ではなく警察の仕事だと話すが、ムサシはオモチャとは言えイゴマスには心があるように思えると返し、ヒウラキャップもたとえ生物でなくても心があるものはおざなりに出来ないと語る。
ムサシがイゴマスの事を想うのはゴンの事もあって納得。この時の生物でなくても心を持ったものとはしっかりと向き合うと言う考えは後のカオスヘッダーの話に繋がっている気がする。
因みに超常現象の調査もEYESの任務に入っているので宇宙人の落し物はEYESの管轄になると思う。
イゴマスが子供達をカプセルに入れたのを見たムサシはラウンダーショットを構えるがコスモスからイゴマスに敵意は無いとして信じる事も重要だと諭される。
平成ウルトラシリーズではウルトラマン自身の人格があまり描かれないので『コスモス』のように主人公とウルトラマンの人格が話し合うのは珍しかった。せっかくなのでムサシとコスモスの会話はもっと増やしてほしかった。
ところでムサシがイゴマスを信じる一方で警戒を怠っていなかったのはちょっと意外で驚いた。
退屈な日々に飽き飽きしていた子供達だったが宇宙から落ちてきたイゴマスと出会い、イゴマスとの会話で宇宙に興味を持ち、自分達の住む地球に改めて関心を持つようになる。そしてイゴマスのカプセルで空から自分達の住む街を見た子供達は地球の素晴らしさを実感するのであった。
日常に退屈していた子供達が非日常と触れ合って日常の素晴らしさに気付くのは子供にメッセージを送る作品の基本パターン。日常も非日常も描けるウルトラシリーズの強みだと思う。
自分に廃棄物処分シールが貼られていた事に衝撃を受けたイゴマスは変形して動き出し、攻撃装備が無くてもあの巨体で動き回られたら危険であるとしてコンディションレベル・オレンジが発令される。
この悪意が無くても巨体故に人間社会にとっては脅威になると言うのは怪獣保護の話と重なるところがある。
因みにコンディションレベルはイエローが調査でオレンジは捕獲でレッドは攻撃となっている。
今回のムサシの変身はいつもと違ったもので『THE FIRST CONTACT』を意識したようなものになっている。
イゴマスが街に入るのを阻止する為にEYESが立ちはだかり、ムサシはコスモスに変身して両者の間に立つ。EYESはコスモスを援護しようとしてイゴマスを攻撃するがコスモスはその攻撃を阻止する。
イゴマスを救おうとするもパワーに苦しめられるコスモスはルナモードからコロナモードにモードチェンジする。イゴマスを倒すのかと思われたが、おそらくイゴマスを押さえるにはルナモードでは力不足なのでコロナモードになったのだと考えられる。
暴れるイゴマスは子供達を戦いに巻き込んでしまうが子供達はコスモスによって助けられていた。「暴れないで」と言う子供達の訴えを聞いて落ち着きを取り戻したイゴマスはコスモスに頼む。
「ウルトラマン。僕ヲ壊シテ。篤史達 僕ノ友達。デモ僕ハコンナニ大キイ。キット 迷惑ヲ カケテシマウ。ソレニ イゴマスノ電池 モウスグ切レテシマウ。 替ワリノ電池 コノ星ニハ無イ。ウルトラマン。イゴマスヲ壊シ……テ……。スクラップニ……シ……テ……」。
コロナモードからルナモードに戻るコスモス。皆が心配そうに見守る中、コスモスは宇宙からも膨大なエネルギーを集めてイゴマスを小さくするのだった。
巨大な相手を小さくして問題を解決するのは都合が良くて安易なのだが今回は宇宙からも膨大なエネルギーを集めてコスモスが片膝を付くほど消耗させる事で奇跡を簡単に起こしたわけではないとしていた。
川原で小さくなったイゴマスを見付ける子供達。「篤史……、竜也……、尚子……。僕ノ……友達……。アリガトウ……」と言う言葉を残してイゴマスの目から光が消える。コスモスはイゴマスを地球の皆が遊べる大きさにしてくれたが現在の地球の科学力ではイゴマスの電池を作り出す事は出来ない。しかし、篤史は決意する。勉強して電池を作って、もう一度イゴマスと遊ぶ。その頃には自分達は大人になっているけれど、そしたら自分達の子供達に遊ばせればいいと。そして子供達は捨てようとしていた電池の切れたラジコンも手に持って家路に着くのだった。
今回はイゴマスと子供達の関係が感動的で泣かせる話となった。
画面に映し出されていた花畑が象徴するように話全体が優しい感じで包まれていて『コスモス』が目指す方向性の一つを指し示した話と言える。