帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「乙女の眠り」

「乙女の眠り ーインキュラス登場ー
ウルトラマンコスモス』第8話
2001年8月25日放送(第8話)
脚本 川上英幸
監督 小中和哉
特技監督 八木毅

 

夢幻魔獣インキュラス
身長 56m
体重 5万2千t
異次元から謎のオーロラで人々を眠らせて夢を見続けさせる。
可愛らしいピンクの羊の姿(スモールインキュラス)で夢の世界を闊歩している。
無数のピンクの羊が集まってインキュラスになる。
夢の世界だと自由自在に移動できる。キュラスターで相手をオーロラの中に閉じ込める。
EYES隊員としての自覚を持ったアヤノ隊員の攻撃を受け、最後はコロナモードのプロミネンスボールで光の粒となった。
名前の由来は「インキュバス夢魔)」から。

 

物語
謎のオーロラを見た人々が次々に夢の世界へと消えていき、アヤノ隊員も被害に遭う。
ムサシはコスモスと共にアヤノ隊員の夢の世界へと向かう。

 

感想
平成ウルトラシリーズで定番となった主人公と特別チームの女性隊員の恋愛話。今回は『コスモス』におけるその始まりと言える話となっている。

 

アヤノ隊員の呼ばれ方はムサシが「アヤノちゃん」、フブキ隊員が「アヤノ」、ドイガキ隊員が「アヤピー」。激怒したアヤノ隊員は子供扱いしないでちゃんと「アヤノ隊員」と呼ぶよう訴えるがカエルの騎士のキーホルダーを見付けたフブキ隊員は「こんな物ぶら下げて子供扱いするなと言ってもなぁ」とバカにし、「このカエルの騎士のキーホルダーにはEYESの一員としての自分の信念が込められている」と言うアヤノ隊員の言葉にもムサシ達は笑うばかりであった。ムキになって怒るアヤノ隊員はカワイイが、さすがにここまで来るとムサシ達の感じが悪い。
そこに事情を知らずにやって来たヒウラキャップはアヤノ隊員を「アヤピョン」と呼んでしまう。ヒウラキャップと並ぶと身長差からさらにアヤノ隊員が子供に見えてしまう。(因みに二人の身長差は30cmくらいある)

 

その夜、カエルのキーホルダーを眺めていたアヤノ隊員は夜空に輝くオーロラを見て眠るとそのまま16時間以上も眠り続けてしまう。新見医師が検査した結果、医学的にはただ眠っているだけで外的にも内的にも疾患は無く、ずっとレム睡眠で夢を見続けているとの事。
ここが新見医師の初登場となる。新見医師はウルトラシリーズでは数少ない医療関係の準レギュラーであった。

 

夢の世界に消えたアヤノ隊員はそこで9歳頃の自分を見る。
『カエルの騎士』と言う学芸会をしていたが上手くいかなくて邪魔にされ、さらに庇ってくれた男の子との仲をからかわれ、その男の子も迷惑から自分を邪険にするようになったと言う辛い記憶。
因みに『カエルの騎士』はオタマジャクシからカエルへとなった逞しい騎士が他の生き物を襲い続けてきた悪魔をやっつけ、悪魔に魂を売ろうとしていた狐を救い、国に平和を取り戻して全ての生き物達が皆仲良く暮らす事が出来るようにしたと言う内容らしい。
実は今回の話に絡んでいるようで意外と絡んでいない。悪魔に魂を売ろうとした狐をインキュラスに絡めるとかしてほしかった。

 

眠り続ける人々が続出して科学分析センターから大森博士が派遣される。
マッド・サイエンティストっぽい雰囲気で出番が少ないのに妙に印象に残る人物。
長年の研究の集大成とも言えるドリームシアターは睡眠中に発せられる脳波をキャッチしてモニターに映像として再生する事の出来ると言うさり気に凄い装置。
ピンクの羊は人々の頭の中ではなく別次元から夢を見させているとか、この状態が続くと命に危険があるとか、どうやってその結論に達したのか疑わしい台詞もこの人が言うと妙な説得力があった。

 

ムサシはアヤノ隊員の夢の中に入る事は出来るのかとコスモスに尋ね、可能だが未体験な空間に入るのは危険だと言う答えを得るとアヤノ隊員の夢の中に行く事を決意する。
『コスモス』はムサシとコスモスと言う二つの人格があるのでこのような話し合いの場面が何度か見られる。
ウルトラマンと人間が対面する時は巨大なウルトラマンが人間を見下ろす構図が多いのだがコスモスはムサシと同じ大きさになって目線もムサシと同じにしている。細かい部分だが『コスモス』らしさが出ている場面だと思う。
因みに今回の夢の世界に突入する展開は『セブン』の「悪魔の住む花」がモデルになっていると思われる。

 

アヤノに『カエルの騎士』の本を持ってきた前田さんは今度はケニアで密猟者から動物を守るんだと語り、それを聞いたアヤノは自分も動物が好きで大きくなったら前田さんのお手伝いをすると返すとさらに「そうしたら……あのね……。アヤノとね……。アヤノを前田さんのお嫁さんにして!」と告白し、それを聞いた前田さんは「いいよ」とあっさり受けると婚約指輪の代わりにカエルの騎士のキーホルダーをアヤノの左手の薬指に付けてあげる。
ところがその後、アヤノのもとに女の人と笑顔で写っている前田さんの写真が送られる。
アヤノ隊員「子供扱いされちゃったのよね。真剣だったのに……」。
こんなのいらないとカエルの騎士のキーホルダーを捨てるアヤノ。
アヤノ隊員「本当に……いらないの?」、
アヤノ「いらない!」、
アヤノ隊員「ねぇアヤノ……。私達まだオタマジャクシなんだよ」、
アヤノ「オタマジャクシ?」、
アヤノ隊員「大人に……カエルになる頃にはまた違う人を好きになる。でも野生動物を助ける夢は大切にしたいな。失恋は失恋。夢は夢だよ。かわいそうな動物達をアヤノ助けてあげたいなぁ」、
アヤノ「アヤノも助けてあげたい!」。
笑顔になる二人のアヤノ。それを後にアヤノ隊員の好きな人となるムサシが見る事になる。
ところでこれはあくまで現在のアヤノ隊員の夢の世界のお話で実際のアヤノは失恋した時に大人の自分とは会っていないはずなのでどうやって立ち直ったのかは不明となっている。アヤノ隊員は『THE FIRST CONTACT』のキョウコ隊員に感銘を受けたと言う設定があるのでそれが関わってくるのかな?

 

アヤノとの婚約(?)を破棄してしまったからか評判が悪い前田さん。
彼なりにちゃんとアヤノと付き合ったのだろうが、やはり子供としてカワイイ妹分としての付き合いだったのだろう。まぁ、本気で恋人として付き合われても困るが……。
でも、ヒーロー作品で小さい女の子との話があった時、ヒーローって今回の前田さんに近い態度を取っている時があると思う。さすがに「結婚する」とハッキリ言ってしまうヒーローはいなかったと思うが。

 

夢の世界でムサシの前に現れたピンクの羊は可愛らしい顔から醜悪な顔に変わると、さらに無数のピンクの羊が集まってインキュラスとなる。
戦いの舞台に学芸会を思わせる書き割りがあると言うのが面白い。戦う場面が現実世界ではない時はこれくらい遊んだ方が良いと思う。

 

眠り続けている人々と一緒に城に閉じ込められていたアヤノ隊員は苦戦するコスモスを見ると手にしたカエルの騎士のキーホルダーを見て決意する。
「そうよ……私! 私は……TEAM EYESの森本綾乃よ!」。
決意表明と共にパジャマからEYESの隊服に変わったアヤノ隊員はラウンダーショットでオーロラに閉じ込められていたコスモスを救出。アヤノ隊員と頷き合ったコスモスはコロナモードにモードチェンジしてプロミネンスボールでインキュラスを倒すのだった。
他の作品だと素直に盛り上がれる場面なのだが、アヤノ隊員は怪獣保護の為にEYESに入隊したのに戦う決意をする展開はちょっとズレている感じがした。インキュラスは夢魔みたいな存在だが『コスモス』は「怪獣を倒さない」と言うテーマがあるので何とかして倒さない展開を用意してほしかった。

 

インキュラスが倒された事で眠り続けていた人々が目覚め、アヤノ隊員も目を覚ます。ムサシは「アヤノ隊員」と言って落ちていたカエルの騎士のキーホルダーを渡すが「大切な婚約指輪」と口を滑らせてしまった為に思わぬ追及を受けてしまう事に。
アヤノ隊員はかなりしつこそうなのでこれからが大変そう……。

 

エンディングでは本編でカットされたアヤノ隊員の高校卒業式の場面が見られる。
ここでも男関係で何か嫌な事があったのかな? こうして見るとさり気に男運の無い人である。