帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「異次元の罠」

「異次元の罠 ーギギ登場ー
ウルトラマンコスモス』第17話
2001年10月27日放送(第17話)
脚本 武上純希
監督・特技監督 村石宏實

 

三面異次元人ギギ
身長 190cm~52m
体重 70kg~4万7千t
飛躍的に進んだ量子学を応用した次元移動システムでやって来た存在。自分達を「論理的で完璧」と評し、言語変換装置で地球人とコミュニケーションを取るが一方的な要求を出してきた。
自分達の次元が崩壊の危機に瀕しているので2000億の住民を移住させる計画を立て、縮小光線銃で人間を100分の1に縮小してモデルタウンへ移住させる実験の為にサワグチ女史の研究施設をシールドで封鎖して研究員に成りすまそうとした。
青(A)、黄(B)、赤(C)の3人がいて青がリーダー格。
3人が合体する事で3つの頭部を持つ巨人に変身する。壁をすり抜ける。高速移動で相手を翻弄して追い詰める。目から青、黄、赤の怪光線を撃つ。
サワグチ女史の開発した精密で完璧な装置では見抜けないが、ヒウラキャップの持つ大雑把で不完全なラウンダーグリップだと見抜く事が出来る。
コスモスを苦しめるががら空きだった頭上をEYESに攻撃され、さらにヒウラキャップに移送装置を破壊された事で存在が不安定になり、最後はコロナモードのネイバスター光線を受けて爆発した。
『初代マン』の「人間標本5・6」のダダがモデル。

 

物語
EYESアタッシュ開発を巡って対立するヒウラキャップとサワグチ女史。
そんな中、サワグチ女史の研究施設に異次元から侵入者が……。

 

感想
完璧すぎるサワグチと不完全なヒウラが対立するが実はお互いの気持ちが分かっていてエンゲージリングを渡すかどうかと言うほどの仲。それを知ってから見直すと二人の対立が全てノロケにも見えてしまうのが面白い。

 

今回は過去の話のオマージュが多い。
ギギはもちろん『初代マン』のダダで『初代マン』の時は実現できなかった三面のアイデアを実現させている。
他は人間を100分の1に縮小してモデルタウンに移住させる実験が『Q』の「1/8計画」、2000億人のギギが移住する計画が『初代マン』の「侵略者を撃て」と言ったところかな。

 

自信作であるEYESアタッシュを披露して「文句なんかあるはず無いでしょう」と言い切るサワグチ女史に対してヒウラキャップは「あえて言えば完璧すぎる」として「科学があって人間があるのではなく、人間がいて科学がある」と訴える。
個人的にはこれはいささか的外れな批判だったと思う。後にサワグチ女史の開発したものは超完璧で使う人間にも完璧さが要求されると言う理由が明かされているが、劇中見る限りはサワグチ女史の開発がそんなに使う人間の事を無視していたとは思えない。『ダイナ』の『光の星の戦士たち』に登場したプロメテウスみたいなものならさすがに納得できたのだが。

 

サワグチ女史はSRC創立時にヘッドハンティングされた超天才で次々と作り上げるメカも超完璧との事。「動け! 怪獣」に登場した猫じゃらしマシンとかは彼女の開発ではないな、絶対w

 

古いタイプの大雑把で不完全で攻撃装置さえ付いていない旧式のラウンダーショットであるラウンダーグリップを手にヒウラキャップは「皆は笑うかもしれないが、この中にはSRC創立の頃のスピリッツ、つまり熱気や勇気、心が詰まっているんだ」とそこに込められたスピリッツについて熱く語る。ヒウラキャップが開発者だったとはちょっと意外だ。
ギギに捕らわれて外部との通信も絶たれた時にヒウラキャップはラウンダーグリップを取り出して「あの頃の不完全なメカの方が役に立つ事もある」とテックサンダーと通信をする。それを見てサワグチ女史は「当たり前でしょう。2人のスピリッツが詰まっているのよ」と返す。あの頃の合言葉は「スピリッツ」だったのかな。因みに『コスモス』の主題歌は『Spirit』である。
今回登場したラウンダーグリップは『THE FIRST CONTACT』にも登場している。

 

サワグチ女史が新たに開発した個人レベルで怪獣を捕捉出来る画期的なシステム。
地球外生命体を見分ける事が出来るデジタルサーチシステムが組み込まれたのはカオスヘッダーやワロガの襲来がきっかけかな?
精密で完璧なメカほどちょっとした電磁波でも破壊されてしまうとしてギギの妨害で全て使用不能になってしまうが、そういう電磁波に対する備え等を全て済ませてこそ完璧と言うのではないだろうか?
それにしても新アイテム紹介の話で全く活躍が無いと言うのはさすがに問題があると思う。

 

今回のEYESは妙に攻撃的だった。確かにギギはサワグチ女史の研究施設を占拠して研究員を捕らえているので他の作品の特別チームなら攻撃しても違和感は無いのだが、いつもは怪獣保護チームとして攻撃に慎重なEYESが悩む事無く攻撃すると疑問が湧いてしまう。
ワロガ並みの悪意とコミュニケーションの無さがあればともかく今回のギギはまだ武力以外の解決の可能性があったと思う。それともワロガの件で宇宙人は倒すべき悪と言う認識が広まってしまったのだろうか?

 

ギギの移住計画を聞いたムサシは勝手だと非難するがサワグチ女史は人類を飛躍的に進歩させるチャンスかもしれないと交渉役を買って出る。ところがギギのあまりにも上からの物言いにキレて、「我々の解決方法は論理的で完璧」と言うギギの言葉に「大嘘吐き! 完璧なんて世の中にあるわけないでしょう!」と周りからツッコミ入りまくりな反論をしてしまう。

 

ギギによってモデルタウンに捕らわれたムサシ達だったが、ヒウラキャップがラウンダーグリップで外部と通信し、ムサシが人間大のコスモスに変身して脱出する。
この間、ギギ達が事態の推移をただ黙って見ていただけなのが不自然だった。わざわざシールドを展開して外部との通信を絶ったのだからヒウラキャップが通信に成功した時点で何らかの妨害を起こすべきだった。

 

コスモスによって元の大きさに戻されたヒウラキャップ達はムサシがいない事を疑問に思うがコスモスは「ムサシ隊員は先に救出した」と答える。
そう言えばムサシ以外の人間がコスモスと会話するのはこれが初めてだったりする。

 

ギギを倒す為に移送装置を破壊しようとするヒウラキャップ。
サワグチ女史は人類の科学を進歩させる大事な資料として反対するがヒウラキャップは「大丈夫。君の才能があればいつか作れるさ」と答える。
ここの展開は良い。でも、この後の完璧に分解してから破壊しないと危険と言うサワグチ女史の警告を無視してヒウラキャップが鉄パイプで移送装置を破壊してしまうのは問題。もし大爆発を起こしたらどうするつもりだったのだろう? これは「大雑把」や「不完全」ではなく「後先考えない無責任な行動」と言う。

 

事件が終わった後、相変わらず不完全だ完璧だとお互いに言い合う二人。文句を言っているように見えて実は二人とも笑顔であった。
そして一つの指輪が出てきて、
ヒウラ「まだしていてくれたんだ、俺のリング」、
サワグチ「あなたからの唯一のプレゼントだもんね」、
ヒウラ「でも、俺は一生変われそうにない。そいつの代わりにエンゲージリングを送る日は来そうもないな」、
サワグチ「仕方が無いわ。それがあなただから」。
そう言ってサワグチは左手の薬指に指輪を入れてヒウラに見せる。
て、二人とも皆の前でイチャイチャしすぎ! 後ろの隊員達がどうすればいいのか困っている。
そこに「おーい!」とのん気な声と共にムサシが二人の間に入ってきてしまう。空気読めよ!と言いたくなるところだがムサシのおかげで話にオチが付けられた。

 

ヒウラとサワグチを語る上で外せない指輪。
苛立ったり助けを求めたりまだ愛が変わっていない事をアピールしたりとサワグチの心情を上手く表現していた。