帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「二人山伝説」

「二人山伝説 ー戀鬼登場ー
ウルトラマンコスモス』第18話
2001年11月3日放送(第18話)
脚本 川上英幸
監督・特技監督 村石宏實

 

怨霊鬼戀鬼
身長 49m
体重 4万8千t
岩手県香野村の二人山にある刀石に封印されていた怪物。
戦国時代に敵対する国故に愛し合いながらも最後は心中した若殿と姫の魂が結ばれぬまま死んでいった無念で成仏できず怨霊鬼・戀鬼となって二つの国を滅ぼした。その後、錦田景竜と言う武士に倒されて二人山の地底に封印されると怒りを封じる刀石を供えられていたが、現代になってダム建設推進派が刀石を破壊した事で復活を果たした。
科学的兵器が通用せず、ルナモードのフルムーンレクトも効果が無かったが、自然現象を利用したコロナモードのサンダースマッシュで大打撃を受け、最後はシノブリーダーの訴えで自分達の過ちを認めて成仏した。
「戀」は「人を恋い慕う感情」「物事に執着する事」と言う意味らしい。

 

物語
休暇を利用して香野村にやって来たシノブリーダー。
そこには防衛軍時代に想いを寄せていた、かつての上官である竹越がいた。

 

感想
放送当時に2時間ドラマか昼ドラかとツッコまれた今回の話。
大人の雰囲気を漂わせるシノブリーダーだから出来た話であった。

 

シノブリーダーもフブキ隊員と同じくかつては防衛軍に所属していた事が明かされる。
回想シーンで竹越チーフに「命知らずなフライトは勇気とは呼べんぞ! しかし、それがお前の取り柄でもあるな」と評されている。今のシノブリーダーにそのような印象は見られないが昔はムサシやフブキ隊員のように若さと勢いで突っ走るタイプだったのかな。

 

来年は高校生になるみどりの年齢は15歳。
みどりとシノブが最後に会ったのはみどりが小学生の時で竹越が防衛軍を辞めて妻の故郷に引っ越した4年前だと思われる。
竹越の妻が亡くなったのは7年前で当時の竹越は33歳、シノブは21歳、みどりは8歳となっている。
シノブが竹越の事を男として意識し始めたのは妻が亡くなった翌年。
そしてシノブが防衛軍を辞めてSRCに参加したのは3年前で竹越が防衛軍を辞めた次の年となっている。
あっという間に過ぎ去った二人の時間について語るシノブと竹越。
「7年とか4年とか、いっぱい数字が飛び出すなぁと思って。……私は6年目です。厳しくて口煩いだけだと思っていた上官がそれだけの存在じゃなくなってから……6年目です」。
この言葉を受けて竹越はシノブには妻が死んだ後に色んな意味で助けられたと返すが、色んな意味とはどういう意味なのかとつい邪推してしまう。
ウルトラシリーズでもトップクラスに際どい二人の関係。お子ちゃまなアヤノには出せない、大人なシノブだからこそ出せる雰囲気。一応、シノブは「惹かれ始めて6年目」と竹越に惹かれ始めたのは妻の死後としているがシノブ役の坂上香織さんは不倫だっただろうと考えているらしい。
それにしても妻を亡くして落ち込む竹越に向かってシノブがいつまでも悲しみを引きずらないように訴え、カッとなった竹越がシノブを叩く場面は一体何のドラマだよ!とツッコミたくなるw

 

くじ引きで決められた休暇を取る順番。これは「動け! 怪獣」を受けてのお話。一番最後になってしまったアヤノ隊員の休暇はまだまだ先との事。まさか本当に夏休みが秋休みになってしまうとは……。
アヤノ隊員はシノブリーダーの恋物語を妄想して独り勝手にイラついたりと飽きる事無く騒がしい。それを見た男性陣はもう一度インキュラスに取り憑かれて眠り続けてもらおうかと冗談を言う。
平成ウルトラシリーズから以前の話を受けた会話や設定が登場するようになったが今回はインキュラスの話を持ち出す必要はあまり無かったかなと思う。(一応、男女の恋愛話と言う共通点はあるけれど)

 

二人山には古くから戀鬼と呼ばれる怪物が地底に封印されていると言う伝説があって、それを迷信としてダム建設を進めようとする自治体と世界各地で怪獣が出現している中で迷信として片付けるわけにはいかないとする地元住民とが対立する。
昔からよくある展開だが『THE FIRST CONTACT』で伝説で語られていた呑龍が復活した話を踏まえて怪物の伝説と怪獣出現を繋げていたのが細かくて良かった。
又、地元住民はあくまで刀石のある場所に建設するのに反対しているのであってダム建設自体には反対していないと言うのも意外と今までに無かった展開だった。

 

二人山の地下に何か巨大な生物がいるとしてランドダイバーが遂に登場する。
訓練以外では初めて動かすと言うフブキ隊員の発言を聞いたドイガキ隊員は若葉マークを付けた方が良いんじゃないかとアドバイス。因みに後にアヤノ隊員が初めてテックサンダーを操縦する時にちゃんと若葉マークが付けられていた。
ところでドイガキ隊員はフブキ隊員がランドダイバーを実戦で操縦した事が無い事に驚いていた。ドイガキ隊員はフブキ隊員より前にEYESに入隊しているのでフブキ隊員がランドダイバーを操縦した事があるかどうか分かっていると思うのだが……。
又、ランドダイバーが配備された時期が最近ではなかったとしたらスピットルやモグルドンの時にどうして使わなかったのかと言う疑問が出てしまう。
終わってみたら予告で堂々と登場が謳われていたランドダイバーは大した活躍も無く出番を終えてしまった。ぶっちゃけ、出番が全く無くても話になんら支障が無いレベルであった。むしろ、シノブと竹越親子を描く時間を減らしてしまっているので逆に登場しない方が良かったかもしれないと思う。ドリルメカは好きなんだけれどね。

 

戀鬼復活は辺りに立ち込める霧、おどろおどろしい音楽、不気味な唸り声、甲冑の音と雰囲気満点で、迫ってくる場面などはかなり恐かった。

 

戀鬼を封印した武士として『ティガ』の「よみがえる鬼神」で宿那鬼を封印した錦田景竜の名前が登場している。因みに錦田景竜は今回の脚本を担当した川上さんによって書かれた小説『白狐の森』で『ガイア』の魔頭鬼十郎とも因縁がある事が明かされている。怪獣や怪物より謎の多い存在だな、錦田景竜……。

 

戀鬼が父の研究所に迫っている事を知ったみどりはたった一人の肉親である父を助けに行こうとするがシノブリーダーはムサシにみどりを避難所に連れて行くよう命令すると自分が竹越の救助に向かう。ところがその後、ムサシの近くにみどりはおらず、ムサシはコスモスに変身。さらにその後、戀鬼に襲われるシノブリーダーと竹越の所にみどりがやって来る。
おいおい、ムサシはみどりを避難所に連れて行けと命令されていたのに、これではシノブリーダーの行動が全く意味を成さなくなってしまう。

 

恨みの声を上げて破壊を続ける戀鬼を見てシノブが秘めた想いを吐露する。
「もう止めて! 自分が苦しいだけでしょう! あなた達は逃げたんじゃないの! 自ら命を絶って! そんな人達がどうして人を憎めるの? いつの時代だって恋をするって大変な事なの。皆が……悩んで、苦しんで、そして傷付いたりしているの! 自分の恋が成就しないからって……、他の人を傷付けるなんて酷いよ……。誰よりも……自分に哀しいよ……」。
さすがに説得力あるなぁ。
シノブの言葉に気付かされた戀鬼は苦悩の末に消え去り、若殿と姫の魂は天へと成仏していった。

 

若殿と姫の魂が恨みから解き放たれたのを見届けたシノブは竹越との別れを決意する。
竹越に向かって姿勢を正し敬礼を送るシノブリーダー。
シノブ「思い出を……ありがとうございました」、
竹越「君の……幸せは?」、
シノブリーダー「TEAM EYESの一員である事」。
父には幸せになってほしいが母を忘れる事が出来ないみどり。
シノブの気持ちに応えようとするも亡くなった妻の願いに応えようと妻の故郷で生きる事を誓った竹越。
竹越に想いを寄せていながら、みどりの気持ちも竹越の妻への想いも感じていたシノブ。
最後にシノブが竹越に別れを告げるのは必然だったと言える。

 

事件解決後、ムサシは帰るのならシェパードで送ると言うがシノブリーダーは今は気の無い男とドライブする気分じゃないと答える。
何があったのかさっぱり分からなくて一人寂しくシェパードで帰る事になるムサシ。
前回の「異次元の罠」もだったがムサシって空気が読めないなぁ。