帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「星の恋人」

「星の恋人 ーアングリラ登場ー
ウルトラマンコスモス』第19話
2001年11月10日放送(第19話)
脚本 梶研吾
監督・特技監督 八木毅

 

TK銀河人ミゲロン星人
身長 レダ・180cm レカ・155cm
体重 レダ・68kg レカ・43kg
軍事衛星アンジェリカに宇宙船を破壊されて恋人のレカを失ったレダは地球人への復讐を誓うとアヤノ隊員を操りエイジャーMAXを使ってアンジェリカをジェルミナⅢと衝突させようとする。
ブレスレットから電撃を発して相手を気絶させ、さらにコントロールする事が可能。
アンジェリカの攻撃を受けた時にレダも深い傷を負っていて、怒りと憎しみの情念をアングリラに変えて地球人を襲うがムサシの訴えやコスモスの行動を見て迷いが生まれ、最後はレカの魂の訴えを聞き入れて残された力でアンジェリカとジェルミナⅢの衝突を回避させた。全てが終わった後、レダとレカの魂は光となって宇宙へと帰っていった。

 

情念化身獣アングリラ
身長 70m
体重 8万2千t
レダが自分の怒りと憎しみの情念を一匹の怪獣に変えた存在。
辺りを闇に包み、目から放つ破壊光線で地球人を襲う。
レダの感情に乱れが生じたところにルナモードのフルムーンレクトを受けて昇天した。
名前の由来は「アングリー(怒り)」と「シャングリラ(楽園)」を合わせて。

 

物語
旧軍事衛星アンジェリカの誤作動が問題になる中、トレジャーベースの施設見学日に謎の人物が現れる。彼の目的、その正体は……。

 

感想
ムサシがレダに向けて訴えた「復讐と破壊は何も生み出さない」と言う言葉が放送前に起きた9・11事件とその後の対テロ戦争と重なって話題を呼んだ話。
製作時期を考えると9・11事件の前なのでスタッフは意識していたわけではなかったのだが、この頃の世界を覆っていた「報復」と言う考えは『コスモス』のカオスヘッダーの物語に影響を及ぼしていく事になる。

 

買い物をするムサシとアヤノ隊員であったがデートと言うより単なる荷物持ちと言った感じで『初代マン』の「真珠貝防衛指令」でのフジ隊員とイデ隊員を思い出した。
やたらとお姉さんぶるアヤノ隊員であるが言動がまるっきり子供なのでおマセな妹にしか見えない。
それにしても好みの服があるからと言って道路に飛び出してしまうのは危ない。レダが助けていなければ轢かれていたぞ。

 

『コスモス』の世界では2004年に地球平和宣言が採択されて軍事衛星は宇宙に廃棄処分されたのだが、それは宇宙に地雷をばら撒く行為に他ならなかった。ムサシが人類も宇宙のマナーを守るべきだと宇宙の地雷の撤去を訴えるが莫大な予算が壁となって遅々として進まず、今回遂に恐れていた事態が起きてしまった。
因みに地球平和宣言が採択されたのは地球における人類同士の争いが減少したからだと思われるが、約10年後の2013年に怪獣や侵略者の増加を理由に軍事衛星の再配備が行われている。『THE FIRST CONTACT』で渡辺先生が掲げた「ファミリー・オブ・スペース」が実現するのはまだまだ先であった……。

 

一般の人にEYESの仕事を理解してもらう為にトレージャーベースの施設見学が定期的に催されている。このオープンさがEYESらしいが侵略者に対して警戒が弱いのも事実。アンジェリカは軍事衛星なので素直に考えれば防衛軍の管轄だと思われるがレダが防衛軍ではなくてEYESを狙ったのは防衛軍に比べてEYESの警備が手薄だったからだと考えられる。
ところで案内係はEYES隊員が順番で担当しているようだが、フブキ隊員はどう案内しているのか見てみたいなぁ。

 

アンジェリカの誤作動についての話を終えた後、ドイガキ隊員は植物班に寄っている。
忘却の彼方に追いやられた設定かと思いきやスタッフはちゃんと覚えていた。嬉しい。

 

車に轢かれそうになったところを謎の男性に助けられたアヤノ隊員は施設の見学日に男性と再会して向こうから声をかけられた事に舞い上がってしまう。
しかし、男性の正体は地球人への復讐を胸に秘めた宇宙人でアヤノ隊員は操られて利用されてしまう。「乙女の眠り」に続いて男運が無い……。

 

恋人を失ったと言うレダの告白を聞いてショックを受けるムサシ。考えすぎかもしれないが、レカを失ったレダにかつてレニを失った自分を重ねたのかもしれない。(ジェルミナⅢも出てくるし)
ワロガの件で侵略者に厳しく対処するようになったムサシだったが今後は相手の宇宙人の事情も考えるようになる。

 

ムサシが変身したコスモスはレダが生み出したアングリラと戦うが何故か反撃しない。そんなコスモスの姿にレダはムサシが訴えた「復讐と破壊は何も生み出さない」と言う言葉を思い出す。その時、レカの魂がアヤノ隊員の体に宿ってレダを説得する。
レカ「レダ……、私、あなたにこんな事してほしくない」、
レダ「僕は……君の為に地球の奴らに復讐してやろうと……」、
レカ「そんな事をしても何もならない! ミゲロン星と地球の間にまた新しい悲劇が生まれるだけ。私達みたいに……。レダ、お願い……!」。
『コスモス』では地球とミゲロン星の報復合戦は避けられたが、もしここでレダによって多大な被害が生じて地球がミゲロン星に報復を行うようになっていたら同時期に展開されていた『平成セブン』のような血を吐きながら続ける悲しいマラソンを始める事になっていたであろう。

 

アングリラが昇天した後、コスモスはコロナモードになって宇宙へ。今回の戦いのメインの相手は怪獣ではなく軍事衛星。他のシリーズだと異色になるが『コスモス』だとそれほど違和感が無い。
レカの訴えを聞いたレダは残された力をブレスレットから放出してアンジェリカとジェルミナⅢの衝突を回避。そこにコスモスがやって来てブレージングウェーブでアンジェリカを消し去るのであった。
て、コスモス、衝突予定時間に間に合っていない!? レダがアンジェリカの軌道を変えていなければ爆発していたぞ……。

 

宇宙へと帰っていったレダとレカの魂。
意識を取り戻したアヤノは自分の中にレカの心があった事を感じる。様々な想いを抱えたまま振り返った時、そこにはムサシがいた。
胸に飛び込むアヤノと黙ってそれを受け止めるムサシ。
「星空の彼方で二人はきっと……幸せになるわよね?」。
アヤノの問いかけにムサシは静かに頷く。
レダ……私達……いつまでも一緒ね」「あぁ……、いつまでも……一緒だ……」。
星空に一つの光が輝いた。

 

事件解決後、皆で星空を見上げる中、ヒウラキャップが語る。
「宇宙は我々人類だけのものじゃない。命あるもの全ての故郷なんだ。その事を決して忘れてはいけない」。
ところで今回のエンディングのヒウラキャップの場面がNGシーンのように見えるのだが……?

 

今回の話は漫画原作者梶研吾さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。