帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ムサシの空」

「ムサシの空 ーボルギルス登場ー
ウルトラマンコスモス』第20話
2001年11月17日放送(第20話)
脚本 林壮太郎
監督・特技監督 八木毅

 

電撃怪獣ボルギルス
身長 53m
体重 5万9千t
テクノプラズマを食料としていて2ヶ月前に動力部が作られたパリを、1ヶ月前にテクノプラズマキネティックシステムの最終テストが行われた上海を襲い、日本でもテックブースターの最終調整が行われた宇宙開発センターを襲った。
背中にある角でレーザーネットやテクノプラズマを吸収する。長い尻尾で攻撃する。口から火球を放つ。
コスモスにテクノプラズマ700年分の高エネルギーを与えられると大人しくなって鏑矢諸島に送られた。
『Q』の「虹の卵」のパゴスがモデル。

 

物語
オーバーワークで倒れながらも怪獣保護の為に無理を続けるムサシ。
そんな時、木本博士からテックブースターの最終調整の為に宇宙開発センターに戻ってきてほしいとの話が来る。
果たしてムサシは、EYESはどうする?

 

感想
THE FIRST CONTACT』の木本博士を再登場させて過去のムサシの夢だった宇宙飛行士の話を出しながらEYESでの怪獣保護と言う現在のムサシの気持ちを再確認させたTVシリーズでも大事な話。
因みに『THE FINAL BATTLE』で描かれる未来のムサシは宇宙飛行士と怪獣保護の両方の夢を頑張っている。

 

オーバーワークで倒れたムサシはドイガキ隊員の人工呼吸で一命を取り留めたと聞かされて本気で嫌な顔をする。まぁ、気持ちは分かる。画面越しでもきつかったし……。
因みに倒れたムサシを抱えて運んだのは実はフブキ隊員であった。でも素直じゃないので決して明かさない。

 

ムサシは新見医師の忠告を無視して任務に復帰するが再び倒れてしまう。
怪獣保護を頑張るその気持ちは尊敬できるが体を壊してしまったらEYESの皆に迷惑をかけてしまうし倒れて動けなくなかった分だけ怪獣保護が出来なくなってしまうので、結果的に最も駄目な行動をしてしまったと言える。

 

倒れたムサシを抱えて運んだり、ヒウラキャップに呼び出されたムサシの事が心配でわざとらしい演技をしてシノブリーダーにツッコまれてあたふた弁明したり、今日のフブキ隊員はなんか妙に可愛い。

 

休み無く出現する怪獣の為に自分が休むわけにはいかないと無理を続けて再び倒れてしまったムサシ。診察した新見医師の口調が優しいながらもかなり恐い。こういう人は怒らせてはいけない。

 

宇宙開発センターがムサシを必要としていると言うヒウラキャップの言葉にショックを受けたムサシはEYESの皆と一緒に怪獣保護を続けていきたいと訴える。
後に木本博士によってヒウラキャップは本当はムサシにEYESに残ってもらいたかったが、このまま怪獣保護を続ければまたオーバーワークで倒れてしまう心配があるとして苦渋の決断で宇宙開発センターに送り出した事が明かされる。
ヒウラキャップに直接語らせるのではなく木本博士を介して語らせた事で逆にヒウラキャップの様々な考えを感じ取れるようにしたのが上手かった。

 

「自己管理も出来ん奴が保護とか偉そうに怪獣の心配なんかしてんなぁっ!!! ま、TEAM EYESを辞める奴に言っても仕方が無いな。戻るんだろう、宇宙開発センターに。自己管理も出来ない上に足引っ張る奴はここには必要ねーからな」。
再び倒れてしまったムサシに厳しい言葉を投げかけるフブキ隊員だがこれはムサシを心配しての事。本当はムサシと離れたくないのに不器用な男だ。
この時の厳しいながらも優しさを秘めた叫びやムサシとの別れを思っての涙目やムサシ復帰に思わず出た微笑み等、この頃になるとフブキ隊員のキャラクターと市瀬秀和さんの演技がガッチリ合わさって名場面がどんどん生まれていった。

 

宇宙開発センターに戻る事になったムサシに対して気まずくなったドイガキ隊員はボルギルスが出現する理由を尋ねる。一方のムサシは怪獣を出来るだけ無傷で保護できる方法を考えてまとめたノートをドイガキ隊員に託す。
怪獣の生態について話すドイガキ隊員と怪獣保護を夢見るムサシと言う違いが出ていて面白い場面。

 

いよいよトレジャーベースを去るムサシをアヤノ隊員が廊下で待っていた。
ムサシ「僕を待ってたの?」、
アヤノ「本当に行くの?」、
ムサシ「開発センターで僕は必要とされているから……」、
アヤノ「強がっちゃって……。皆と別れて平気なの?」、
ムサシ「……じゃあね」、
アヤノ「怪獣達にも、ムサシ隊員が必要なんじゃないのかな?」。
その言葉にムサシは一瞬立ち止まるが振り返る事無く去って行ってしまう。そんなムサシの後姿を見てアヤノ隊員が呟く。「私だって……」。
乙女の眠り」や「星の恋人」でもムサシとアヤノ隊員の話があったが、この辺りから二人の間に特別な感情が入ってくるようになる。

 

今回の話でシノブリーダーだけムサシとのやりとりが無い。ムサシがEYESに入隊して最初の話がシノブリーダーとの話だったので残念。
今回の話が尾を引いたかどうかは分からないが、この後のシノブリーダーはムサシとの話が殆ど無くなり、結果としてムサシとコスモスの関係に気付く事も無く物語のメインから少し外れる事になる。「カオスヘッダーの影」を見ると一番最初にムサシとコスモスの関係に気付いてもおかしくない位置だったのだが……。

 

THE FIRST CONTACT』に登場したトロイトータルが懐かしくて感激。
ムサシを呼び戻した宇宙開発センターの研究顧問は木本博士であった。驚くムサシに「オモチャ作りに引退は無いからね」と言ってテックブースターを「今度のオモチャは宇宙へも行けるんだ」と説明するのが良い。こういう言葉をさらっと言える藤村俊二さんはまさにハマリ役であった。
ただ、『THE FIRST CONTACT』と比べてTVシリーズのメカは遊び心が少なくなっているので木本博士の意見がSRCの中でも通らなくなってきているように見える。この後に登場するメカもオモチャ的な部分が外されて攻撃的な部分が強化されていくが、それらを見て木本博士はどう思ったのだろうか……。
因みに『THE FIRST CONTACT』に登場したオリジナルセブンで再登場したのは今回の木本博士と『THE BLUE PLANET』のキド隊員だけであった。キョウコ隊員にも再登場してほしかったなぁ。

 

ボルギルスが接近して職員を避難させる時、木本博士は機械は破壊されてもまた作ればいいと述べるが職員はテックブースターを破壊されるわけにはいかないとして防衛軍に怪獣の排除を要請しようとする。
ワロガ事件で人々の怪獣に対する意識が厳しくなってしまったのか、近くにEYESの元隊員がいるのにSRC職員はEYESの怪獣保護ではなく防衛軍の怪獣排除を選択した。

 

EYESはテックサンダーのプラズマウェーブでボルギルスを引き寄せようとするが、すぐ近くの宇宙開発センターにテクノプラズマがあるせいか囮に喰い付いてくれなかった。そこでヒウラキャップは地上に降りて誘導弾でボルギルスを引きつけようとする。
「これ以上開発センターに近付かせない。俺達の大切なものを守るんだ。それを守りながら怪獣も保護する。TEAM EYES、オペレーション!」。
ヒウラキャップの言葉にEYESの皆はムサシの事を思い出して難しい注文としながらも成功させようと奮起する。「カオスヘッダーの影」と比べるとEYESの士気がかなり変わっていて、ムサシの入隊を決めたヒウラキャップの考えが正しかった事が分かる。

 

「怪獣を保護してテックブースターも守ります。両方守らなきゃ意味が無いんです! TEAM EYESを信じて任せてください!」。
EYESの隊服に袖を通したムサシはヒウラキャップと同じ言葉を発していた。
今のムサシの心がある場所を認めた木本博士が語りかける。
「やっぱり戻るのかい? ……。君が正しいと思うのならそうしなさい……。後悔しないように……君の道を進みなさい。怪獣を保護して、テックブースターも守ってください」。
元気に答えるムサシだったが、それを見送る木本博士は少し寂しそうだった。
宇宙飛行士は怪獣保護より昔から見ていたムサシの最初の夢。さらに子供時代の恩師である木本博士からの誘い。その上で宇宙飛行士より怪獣保護を選んだ事でムサシの決意はより強くなった。
「TEAM EYES隊員、春野ムサシ、配備に付きます!」。

 

EYESの危機にムサシはコスモスに変身。コスモスはボルギルスにテクノプラズマ700年分の高エネルギーを与えて大人しくさせる。700年分と言う量が凄いがコスモスは普段から宇宙を飛び回っていると考えたら当然のエネルギー量かもしれない。
だが、今回のようにコスモスが人間離れした奇跡を見せて事態を解決すればするほど人々はコスモスに依存していってしまうのであった。

 

EYESに二度目の入隊をしたムサシを記念して皆で写真を撮る事になる。
呆れながらもちゃっかり髪を直しているフブキ隊員に笑うw
今回撮った皆の写真は次回の「テックブースター出動せよ(前編)」で地球に一人残ったアヤノ隊員が宇宙に出動した皆を想う場面で使われる事になる。

 

今回の話は林壮太郎さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。