帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「夢みる勇気」

「夢みる勇気 ーカオスエリガル カオスヘッダー・メビュート リドリアス登場ー
ウルトラマンコスモス』第29話
2002年1月19日放送(第29話)
脚本 大西信介
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

カオスエリガル
身長 56m
体重 6万t
再び現れて強力な有毒ガスを吐く。両手の鎌で切りつける。
ルナエキストラクトを弾くがルナモードのフルムーンレクトを長時間受けておとなしくなる。しかし……。

 

カオスヘッダー・メビュート
身長 69m
体重 6万7千t
新たな実体カオスヘッダー。
エリガルの姿を借りてコスモスを動揺させ、エネルギーを消費させてから正体を現した。
眼から光弾を放つ。手から波動弾デストロビームを撃つ。
エネルギー切れのルナモードを倒した。

 

物語
コスモスでさえエリガルを救う事が出来なかった。迷うEYESの前に再びカオスエリガルが現れる。
今度こそエリガルを救う事が出来るのか?

 

感想
強さと力」の続き。

 

前回の予告で「一体何事!?」となったルナモードとコロナモードの戦いはムサシが見た夢であった。
他のウルトラマンのタイプチェンジが戦術の変化に関わっているのに対してコスモスのモードチェンジは「相手を倒すかどうか」と言う選択に関わっている。その為、怪獣を倒さないルナモードと侵略者を倒すコロナモードとで考え方まで異なっているように見えて本当に同一人物なのかと違和感を覚える事すらあり、今回のムサシの夢でもルナモードとコロナモードを二重人格のように扱っている。

 

コスモスでもエリガルを救う事が出来なくてその命を奪ってしまった。その事がトラウマになってしまったムサシは鏑矢諸島のリドリアスに自分はどうすれば良いのか尋ねる。が、次の場面で落ち込むアヤノ隊員を見て「恋の悩み?」とあっさり言ってのけてしまう。相変わらず周りの空気なんてお構いなしだ。
カオスを倒す力」から「地球生まれの宇宙怪獣」を経て「強さと力」に至る時もだったがムサシの心境が掴みにくい時がある。ここは一年通して一つの流れを作る大河ドラマ形式と一つ一つの話が独立している一話完結形式を合わせた弊害が出たと言える。

 

口には出していないがヒウラキャップ、シノブリーダー、フブキ隊員らもエリガルの件でショックは受けていた。ヒウラキャップ達3人の場面は台詞や目に見える動きが無くても画面からそれぞれの気持ちが伝わってきたのは流石。

 

自分は怪獣保護より怪獣の不思議な性質を知る事に興味があると語るドイガキ隊員がらしくて良い。皆がショックを受けていて自身も少なからずショックを受けているが、気持ちを切り替えてすぐに次の行動を始められるのが彼の強み。

 

ドイガキ隊員はエリガルが自力でカオスヘッダーを押さえ込んでいたのは抗体を持っていたからではないかと推理する。「光のウイルス」と言われていたカオスヘッダーに対抗するワクチンが出てくるのはなるほどであった。この辺りの伏線の張り方は自然で上手かった。

 

数千年に一度と言う7分を超える長い皆既日食を明日に控えて準備を進めていたSRC宇宙開発センターは太陽系の外れの宇宙座標P87ポイントに空間の歪みである重力場異常を見付け、さらにそこにカオスヘッダーのエネルギー反応を捉える。
ジュランの件で宇宙にカオスヘッダーがいる事は知られていたが、今回はそれとは違って、どこか遠くの宇宙から太陽系へのカオスヘッダーの通り道が発見されたのだった。実体化に続いて出現箇所が特定された事で今まで曖昧模糊としていたカオスヘッダーのイメージが固定化されてきた。
因みにP87ポイントはウルトラマンの出身地になる予定だったM87星雲が元ネタだと思われる。

 

THE FIRST CONTACT』に登場したショージが再登場。ショージがハンサムだと聞いたアヤノ隊員は非番なのにムサシに付いてくるが実際に会ってみたら大した事無いとガッカリ。おいおい……、失礼だぞ。
ショージの弟ユウキは足を怪我して車椅子生活を送っていたが、2年前にムサシがかつて自分が周りから嘘吐き呼ばわりされていた時に勇気を持つ事が出来た友達クレバーゴンを紹介し、クレバーゴンと友達になったユウキは勇気を出して手術を受けて見事成功したのだった。
この展開はクレバーゴンのモデルであるクレージーゴンが登場した『セブン』の「勇気ある戦い」が元ネタ。それならユウキをショージでなくマリの弟にすればゲストの人間関係も「勇気ある戦い」と同じになったのになぁ。マリにヤキモチを焼くアヤノ隊員とか見てみたかった。

 

ムサシがユウキにクレバーゴンを預ける時に語った「かつて嘘吐き呼ばわりされた」は『THE FIRST CONTACT』でムサシがウルトラマンに光を与えて蘇らせて一緒に空を飛んだと言った時の事。
話を聞いたアヤノ隊員がどうしてムサシにだけコスモスが見えたのかと問うとショージはムサシが子供の時も大人になってからも夢を失わないからと答える。
「夢を追い続けるって簡単じゃないよね。叶わない事だってあるし……。でもその夢を現実にしようとする勇気がある限り、夢を諦める必要なんて無い……。夢を見続けるのも勇気がいるんだよ……」。
THE FIRST CONTACT』であまり物語に関わっていなかったショージがいきなりそんな事を言い出すのは唐突で違和感を覚えた。この辺りの事を考えてもやはり今回はショージではなくマリに出てほしかった。
ところでこの時のショージを見ているとショージ自身はムサシと違って夢が破れたように思えるが一体何があったのだろうか……?

 

再び現れたカオスエリガルにヒウラキャップは威嚇弾での足止めを命じるが、フブキ隊員は「コスモスでさえ救えなかった」「怪獣保護にも限界がある」としてカオスヘッダーに取り憑かれたエリガルの捕獲は無理だと攻撃許可を求める。
一番信念が強そうで、物語の最初ではコスモスを当てにするムサシを殴り飛ばした事もあったフブキ隊員が一番自信を失ってしまったのは意外だったが、それだけ前回の件が凄まじい衝撃だった事が分かる。
EYESはコスモスが現れる以前から怪獣保護をしていたのだが様々な奇跡を起こすコスモスに知らず知らずのうちに依存してしまったのだった。

 

「コスモス、今の僕には何が出来るか分からない……。だけど! 苦しんでいるエリガルを助けたい! 今度こそ助けたいんだ! コスモスお願いだ! もう一度チャンスを! コスモース!!」。
コスモプラックに訴え変身するムサシ。コスモスはEYESの攻撃を止めてエリガルを救おうとする。ルナエキストラクトが通じない中、コスモスは今度はフルムーンレクトをいつもより長く放射する。なんとしてでも救おうとするコスモスの気持ちが通じたのか、ようやくカオスエリガルが大人しくなる。
エネルギーを大量に消費してコスモスのカラータイマーが点滅を始める。その時、カオスエリガルは新たな実体カオスヘッダー・メビュートに変身する!

 

コスモスのカラータイマーの点滅が速まる中、メビュートは手から放つ波動弾デストロビームで猛攻。コスモスはルナモードからコロナモードにモードチェンジしようとするがエネルギー不足で失敗してしまう。
救えなかったエリガルの姿でコスモスを動揺させてエネルギーを消耗させるカオスヘッダーの策略をシノブリーダーは「ずる賢い」と語る。殆どのウルトラマンは活動時間が限られているが、そこを狙った敵は少ない。それだけにコスモスのエネルギーを消費させてから正体を現したメビュートは卑怯ではあるが見事であった。この行動がカオスヘッダーが人間を分析した結果であるとするなら、先程の人間であるシノブリーダーの発言はブーメランとなって人間に返ってくる事になる。

 

前回のイブリースのデザインが左右非対称だったのに対し今回のメビュートは左右対称となっている。
前回は混沌とした人間の感情をまだ完全に分析しきれていなかったが今回は制御できない要素を取り除いて手に入れた人間の感情を自分なりに整理している。
混沌の名を与えられながらカオスヘッダーは秩序ある状態へ向かおうとしている。

 

メビュートの猛攻に苦戦するコスモスは最後の力を振り絞るが敗北。
EYESの前からコスモスの姿が消え去り、倒れたムサシの前に透明になったコスモスが横たわっていた。コスモプラックも元の輝石に戻り、全てがムサシとコスモスが初めて出会った時に戻る。
「コスモス。何故、僕と……離れた? コスモス……、もう……僕を……必要としていないのか?」。
悲痛な訴えをするムサシの前からもコスモスは姿を消し、地球上全ての人々の前からコスモスは姿を消してしまうのであった。

 

前回の「強さと力」で力を追い求めたムサシはコロナモードの力でエリガルの命を奪ってしまい、今回の話でなんとしてでもエリガルを救おうとする優しさをカオスヘッダーに付け込まれて悪意ある敵と戦う事が出来ないルナモードの弱さが露呈してしまった。
新モード誕生に向けてルナモードとコロナモード両方の欠点を取り上げたのは良かったが、次回のエクリプスモード誕生のインパクトでこれらの欠点が棚上げにされて後の展開にあまり活かされなかったのは残念。

 

コスモスの声がやたら高い時と低い時とがあるが、ムサシの人格が出ている時とコスモスの人格が出ている時の違いなのだろうか?

 

と言う事で次回「エクリプス」に続きます。