帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「フブキ退任?!」

「フブキ退任?! ーテールダス登場ー
ウルトラマンコスモス』第37話
2002年3月16日放送(第37話)
脚本 前川淳
監督 市野龍一
特技監督 鈴木健二

 

地底怪獣テールダス
身長 52m
体重 6万6千t
一年前に出現した時にフブキ隊員が放ったNX弾を受けたまま地中に逃亡した。その後、不発だったNX弾を身に付けたまま再び出現するが、EYESの牽引ビームでNX弾を引き抜かれた。
カオスヘッダーに取り憑かれるがコスモスに救われ、最後はEYESに保護された。
6つの眼は明るさを感じ取る高性能センサーのような働きをしている。

 

カオステールダス
身長 53m
体重 6万8千t
カオスヘッダーがテールダスに取り憑いた姿。
大跳躍で突進してくる。
エクリプスモードのコズミューム光線でカオスヘッダーを消去されて元に戻った。

 

物語
一年前にフブキ隊員が放ったMX弾を受けたまま逃亡したテールダスが再び出現する。
NX弾爆発を阻止するにはテールダスを殺すしかない? 苦悩の末、フブキ隊員が取った行動は……。

 

感想
防衛軍は日に日に凶悪化するカオスヘッダーの目的を地球侵略だと断じ、未知の侵略者に対して持てる力を結集して立ち向かわなければならないとしてEYESに傘下に入るよう要請。EYESの能力を評価しつつも今は怪獣保護と言っている事態ではないとして、その力を侵略者から人類を守る為の防衛戦力として存分に発揮してほしいと告げる。
カオスヘッダーをEYESの怪獣保護チームとしての立ち位置を揺るがす存在としたのが上手かった。
「侵略者から人類を守る為の防衛戦力」と言う言葉が他の特別チームでは基本なのにEYESだと違和感を生じるところが『コスモス』ならでは。外部からの敵に対して地球人は力を合わせなければいけないと言う展開は様々な作品で使われるものだが『コスモス』ではそのよくある展開にあえて疑問符を付けていく。

 

防衛軍からの要請にムサシより先にフブキ隊員が反対を表明する。
フブキ「EYESは……怪獣保護の姿勢は崩しません」、
佐原「フブキ……」、
西条「誰に向かって口を聞いている。元上官だぞ!」、
フブキ「今は! 自分はEYESの隊員です」、
西条「貴様……」、
フブキ「EYESは防衛軍とは違う! たとえ攻撃もやむをえないような場合でもギリギリまで怪獣保護の立場で対処する。それが……それがTEAM EYESです」。
防衛軍がEYESを傘下にしようとする流れに対して元防衛軍隊員であるフブキ隊員がEYESのスタンスを語るのが上手い。その後のトレジャーベースに戻ってのムサシの「フブキさん、成長しましたね!」の言葉通りフブキ隊員は変わった。

 

かつてSRCが開発したNX弾は怪獣はおろか半径500m以内の全てを吹き飛ばす破壊力を持っていた。そのあまりの破壊力に現在は搭載が禁じられているらしいがSRCの戦力が少し恐くなる。
もしSRCが攻撃に特化した開発を続けていたら今頃どうなっていたのだろうか? そう考えると防衛軍がEYESを戦力として当てにするのも理解できる。

 

かつて理想に燃えて防衛軍からEYESに移りながらも現実とのギャップに苦悩し、人々を守る為には怪獣殲滅は止むを得ないと言う決断を下したフブキ隊員。
奇跡を起こすコスモスとの出会いで何かが変わっていったが、NX弾を身に付けたテールダスの出現でかつて自分が犯した過ちと向き合う事になる。
自分のミスを消す為にテールダスを殺そうとした自分に絶望したフブキ隊員はEYESを去る決心をするが話を聞いたムサシが呼び止める。
「フブキさん……。逃げちゃ駄目だ! コスモスは逃げない……。どんな時も……どんな事があっても!」。
自分はフブキ隊員はムサシと出会って変わったと思っていたのでコスモスと出会って変わったと言う展開に少し戸惑ったが、一方で「夢みる勇気」でのフブキ隊員のコスモスへの依存の理由が分かった。

 

今回の話は『帰マン』の「怪獣時限爆弾」を思い出す内容になっているが、周りに頼らないで自分一人で解決した郷秀樹と皆で力を合わせて解決したフブキ隊員に両作品の違いが見て取れる。

 

ヒウラキャップの「命を懸けて戦っているんだ。コスモスもフブキも……」と言う言葉の通り、今回の話はカオステールダスと戦うコスモスといつ爆発するか分からない状態でNX弾の解除作業を続けるフブキ隊員が重ね合わせられている。フブキ隊員が勇気を振り絞るのと同時にコスモスが勇気のエクリプスモードになる展開は設定とテーマが合っていて良かった。

 

コスモスがカオスヘッダーを倒してフブキ隊員がNX弾を解除したのを見てヒウラキャップは「後は俺達TEAM EYESに任せてくれ」と言ってテールダスを保護する。
今回の話で防衛軍はカオスヘッダーとの戦いに勝利する為に怪獣保護を切り捨ててEYESを指揮下に収めようとしたが、EYESとコスモスはテールダスを保護する為に皆が自分の出来る事を考えて行動した。

 

トレジャーベースに帰還したフブキ隊員を迎え入れるEYES。
ヒウラ「フブキ……、俺はここにいる6人でTEAM EYESだと思っている。誰か一人でも欠けたら、それはもうEYESじゃない」。
そして涙ぐむフブキ隊員に向かってムサシが一言、「フブキさん……、また成長しましたね」。それを笑顔で聞いて手を差し出すフブキ隊員。握手かと思ってムサシが手を出すと掴まれて締め上げられてしまう。
フブキ「誰が成長したって?」、
ムサシ「何か気に障る事言いました?」。
仲がよろしい事でw

 

今回の話は前川さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。
又、東宝の平成モスラシリーズ、ミレニアムゴジラシリーズ、超星神シリーズを手掛けた鈴木健二さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。