帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「空の魔女」

「空の魔女 ーギリバネス登場ー
ウルトラマンコスモス』第47話
2002年5月25日放送(第47話)
脚本 鈴木智
監督・特技監督 原田昌樹

 

共生宇宙生命体リバネス
身長 48m
体重 4万6千t
空から現れた地球外生命体。人型と羽型に分離する事が出来、ドイガキ隊員によって人型を「ギリ」、羽型を「バネス」、合体した状態を「ギリバネス」と命名される。両者は共生関係にあり、バネスはギリに寄生して血液を吸い取る代わりに飛行能力を与える。
ギリは鋭利な爪で物体を切断して両手から光線を撃ち、バネスは目から光線を撃つ。
バネスはフブキ隊員のイメージを元にミサキ・アイに変身してトレジャーベースのシステムデータを奪おうとするが失敗してフブキ隊員に倒される。その後、ギリも自らの敗北を悟って自爆した。仲間の宇宙船団が地球に押し寄せていたがギリバネスの敗北を知って撤退した。

 

物語
3年前に行方不明になった同僚のミサキ・アイの事を想うフブキ隊員。
その頃、空から一つの生命体が舞い降りてくる。

 

感想
今から3年前、フブキ隊員とシノブリーダーがまだ防衛軍に所属していた頃、シノブリーダー指導の下で新人隊員CHARGERSの最終試験が行われたが、フブキ隊員が操縦ミスで積乱雲に迷い込み、救助に向かったミサキ隊員が行方不明になってしまう。
『コスモス』が始まってから1年近く経っているのでこのエピソードは3年前より4年前の方が良かった気がする。『THE FINAL BATTLE』のパンフレットには矛盾の無い年表が掲載されているがちょっと窮屈な感じになっている。

 

フブキ隊員はEYESの隊服より防衛軍の隊服の方が似合っているかも。

 

一緒に訓練を受けるミサキ隊員にフブキ隊員は最終試験が終わったら海の見える公園に行かないかと誘う。後の接し方を見てもやはり心惹かれていたと思える。カスミはどちらかと言うと妹に近い関係かな?

 

今回はミニチュアの他に実写との合成も多く使われていて巨大感を出していた。
他にもコスモスとギリの戦いをビルのガラス面に映したりと戦闘シーンに変化を付けようとしていて面白い。

 

領空侵犯は管轄になっているからか防衛軍が即行で出撃している。

 

リバネス出現と前後して現れた積乱雲に迷い込んだフブキ隊員はアイの導きで脱出に成功する。
一方、フブキ隊員が帰還しない事を受けてヒウラキャップは「空の魔女」の伝説を語る。
「昔、飛行気乗りは空に魔女がいると言って恐れていたらしい。空に心を奪われた人間は地上に戻ってこれなくなる」。
おいおい、実際に仲間が行方不明になっている時に言い出す話か……?
『ガイア』の「命すむ星」でも似た話が語られていたが、梶尾リーダーに比べてフブキ隊員は飛行気乗りの設定が強調されていなかったのでちょっと唐突な感じを受けた。

 

吸血鬼と化して人々を襲うアイ。
フブキ隊員はアイに頼まれてトレジャーベースのシステムデータを盗もうとするが、アヤノ隊員がフブキ隊員の首にある赤い痣に気付いて見破られる。こういう時のアヤノ隊員は本当に鋭い。
話を聞いたムサシは「大切な人の姿で心に忍び寄るなんて、なんて奴だ……!」と怒りをあらわにする。似た状況だったレニの事を思い出したのだろうか? そう言えば今回の話は構造が「時の娘(前編)」「時の娘(後編)」に似ているかも。

 

かつてアイは紙ヒコーキを大空に飛ばしながらフブキ隊員に空の魔女の伝説について話をしていた。
「早く空を自由に飛べるようになりたいなぁ。もし空に魔女がいたとしても私は飛ぶよ。空には太陽と雲があるだけ。それで雲の向こうも私の世界なの。空は私にとって安らぎなの」。
そして現在、トレジャーベースのシステムデータを持ってフブキ隊員はかつて約束した海の見える公園でアイと再会する。
「アイ、ここに一緒に来るのを何度も夢に見たよ」。
しかし、フブキ隊員はデータを海に捨ててアイにラウンダーショットを向ける。
「お前はアイじゃない。空は彼女の憧れの場所だった……。それを汚しやがって……」。
だが、結局は撃つ事が出来なかった。クールに見えて実は弱さを抱えるフブキ隊員らしい。

 

フブキ隊員から逃げ出したアイはバネスに変身してギリと合体する。
ギリが女性的なデザインだったので実はバネスの方がアイに変身していたのは意外で驚いた。

 

合体したギリバネスに苦戦するコスモス。自分の不始末が生んだ被害を目の当たりにしてフブキ隊員は攻撃を決意するが、そこにアイが現れる。
アイ「フブキ君、また会えなくなっちゃうよ……。一緒に飛ぼ……」、
フブキ「魔女め……。ここはお前らが住むような場所じゃねぇんだよ!」。
遂にフブキ隊員はアイの誘惑を断ち切ってバネスを攻撃。アイは憎しみを含んだまま消え去り、バネスも爆発。墜落したギリは何とか立ち上がるも自らの敗北を悟って自爆し、宇宙船団も地球から姿を消すのであった。
宇宙船団の数は数千と言うウルトラシリーズでもかなりの軍勢であったので、ギリバネス一体がいなくなっても地球侵略できそうな気がするのだが……。

 

戦いが終わり、フブキ隊員は独り言のように「空は争いの場所じゃない……。安らぎの場所なんだ……」と呟く。
そこに舞い降りる一つの紙ヒコーキ。それを飛ばしたミサキ・アイはフブキ隊員を見て満足気に微笑んで消えるのであった。

 

今回の話の肝であるミサキ・アイの話がイマイチであった。回想シーンは良かったのだが現在の状況がよく分からなかった。
まずバネスがミサキ・アイの姿をただ借りているだけなのか、3年前に行方不明になったミサキ・アイの体を利用しているのかが不明確。
どうやらバネスがフブキ隊員の中にあるイメージを察して変身した姿らしいので、これなら良心の欠片も見せなかった言動も理解できるのだが、そうなるとラストシーンの微笑むミサキ・アイをどう解釈すればよいのか分からなくなる。バネスとは別にミサキ・アイ本人の魂がフブキ隊員をずっと見守っていたのだろうか?
他にも3年前も今回も出現した謎の積乱雲とギリバネスの関係も気になるところであった。
因みにバネスが倒された後にギリが自爆したのはギリバネスには既に帰る場所が無く、バネスの死はギリにとっても死を意味するからだったらしい。これも本編を見るだけではちょっと分かり難かった。

 

今回の話は『G』で原案を担当していた鈴木智さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。