「最終テスト ーガモランⅡ ミーニン 鏑矢諸島の怪獣たち登場ー」
『ウルトラマンコスモス』第55話
2002年8月3日放送(第52話)
脚本 武上純希
監督・特技監督 村石宏實
超高度文明人ミトル
身長 135cm
体重 32kg
赤い光球に包まれて宇宙からやって来た。
様々な特殊能力を発揮する。
地球の文明が危険かどうかを測定する為のテストとしてガモランを暴れさせて地球人の反応を探る。一時は地球人は文明人とは呼べないと断じるがフブキ隊員の行動を見て考えを改めて最後は宇宙の中でも極めて高度で知的な存在なのかもしれないと評した。
隕石大怪獣ガモランⅡ
身長 50m
体重 7万t
ミーニンの一体がミトルにバイオコントローラーを付けられて巨大化凶暴化した。
ガモフラッシュ光線で街を破壊する。
以前にガモランにさせられたミーニンとは別個体で両肩の突起物が無い。
エクリプスモードのコズミューム光線でバイオコントローラーを外されてミーニンに戻った。
隕石小珍獣ミーニン
身長 1m
体重 10kg
鏑矢諸島で眠っているところを一体がミトルに連れ去られてガモランにさせられてしまった。
残ったもう一体はフブキ隊員に連れられてガモランの説得に向かった。
コスモスによってガモランからミーニンに戻され、二体は無事に再会を果たした。
鏑矢諸島の怪獣達
今回登場するのはリドリアス、モグルドン、ゴルメデβ、ボルギルス、ミーニン、タブリス、バデータ、テールダス、ネルドラント。
物語
ヒウラキャップから人類と怪獣の共生の道についてテストを出されたムサシ。そこに謎の少女がやって来て人類に最終テストを課すと告げる。
感想
時期的にも内容的にもTVシリーズの諸問題に決着を付ける話だったが提示された答えがイマイチだったので疑問と物足りなさが残ってしまった残念な話。
鏑矢諸島では皆が仲良く暮らしているみたいだと述べるムサシに対してイケヤマ監理官は互いの生活環境を邪魔しないように工夫されているので仲良くとは違うと告げ、互いのテリトリーを侵さなければ人間と怪獣も一緒に暮らしていけると言うムサシに向かって互いに息を潜めて生きていく事が理想的共生なのかと指摘する。それを受けてムサシはもっと互いに助け合って生きていけるのでなくては意味が無い事を再確認するのであった。
鏑矢諸島のようにたくさんの怪獣がいる場所はウルトラシリーズでも珍しいので鏑矢諸島を舞台にした話があっても良かったかな。
ヒウラキャップから「鏑矢諸島の怪獣達をレポートして人類と怪獣の共生の道を探る」と言う難問を課されたムサシ。どのような答えを出すのか楽しみだったがガモラン事件でうやむやになってしまって、結局、ムサシから明確で具体的な答えは聞かれなかった。TVシリーズにおける怪獣保護のテーマに関する答えとなるはずだったので非常に残念。
ミーニンの一体をさらった謎の少女ミトルを見てムサシは地球侵略の為にミーニンをバイオ兵器として送り込んだ張本人なのかと尋ねるが、ミトルはガモランは人類に課せられたテスト問題と答える。
ガモランは地球の文明が危険かどうか測定する為のテストだったのだが、地球人は最初は攻撃を行ったが途中で止めると言う不思議な反応を見せた。それに対してムサシは地球人は怪獣との平和的共存を目指して試行錯誤の最中なのだと説明するが、ミトルはコスモスの存在が地球人の行動に関わっていたとしてコスモスがいなければ地球人は文明的な行動をとったか分からないと告げるとミーニンにバイオコントローラーを付けてガモランにして暴れさせる。
今回の話は見ていてかなりの疑問が出てくる。最大の原因は試験官であるミトルの説明に矛盾が多すぎる点であろう。
ガモランは地球の文明が危険かどうか測定する為のテストだったと明かすが「空からのプレゼント」では「この箱を開けし文明を持てる者、ガモランにより滅ぼされるべし」と書かれてあった。破壊者である存在でも救えるかどうかと言う意味なのかもしれないがテスト問題としてはいくらなんでも酷い。
又、地球人がガモランへの攻撃を止めたのはコスモスの存在が関わっていたからでコスモスがいなければ地球人は怪獣を倒していたと言っているが、「人間転送機」のタブリス事件からコスモスが地球に留まるようになるまでの12年間で地球人の間で怪獣を倒すのではなく保護していこうと言う動きは既にあった。全ての怪獣を保護していたわけではないがコスモスがいたから保護していたとは決して違う。ミトルはコスモスの存在が地球人に大きく関わっているとしていながらコスモスとムサシの関係を知らなかったりと地球の事をちゃんと調べたのかかなり疑わしい。
そしてミトルに関して最大の問題はガモランで罪の無い人間を襲っていながら人間がガモランに反撃したら地球人全ての存在理由を否定しようとしたその考え方であろう。どう考えても今回の話で最も文明的でなくて危険な存在はミトル自身である。
暴れるガモランを見てEYESはバイオコントローラーを付けられたらミーニンではなくバイオ兵器のガモランだとして攻撃許可を求めるが、「空からのプレゼント」でバイオコントローラーを破壊したらミーニンに戻る事は分かっているはずなので、何もせずに攻撃以外の選択を放棄してしまうのはEYESらしくなかった。せめてバイオコントローラーが以前より強力になっていてEYESの現在の装備では外せなくなったとかの補足が欲しかったところ。
今回の話のテーマを考えるとこういう展開にする必要があったのは分かるが、今まで積み重ねてきたものを無視しての強引な展開だったのが残念だった。
シノブリーダーとドイガキ隊員は攻撃許可を求めるが、そこにフブキ隊員の声が届く。
「止めてくれ! ミーニンを殺さないでくれ! 他に方法は無いのか? ミーニンは救えないのか! ……あいつがいたらそう叫んでいるだろうな……。俺は……ムサシとは違います。白紙のままテスト用紙を提出するような事はしません。人と怪獣の共生の答えです」。
人類は怪獣と共生できるのかと言うのは『コスモス』のTVシリーズで1年以上かけて描いてきたテーマ。上に挙げたように明確で具体的な答えを出す事は出来なかったが、フブキ隊員の変化を見ていくと人類はいつか認識を変えられるのかもしれないと言う希望が見えてくる。
ただ、フブキ隊員が出した答えがバルーンに括りつけたミーニンに気を取られている間にガモランを捕獲すると言うのはイマイチだった。しかも、ミーニンが転倒して視界から消えてしまった事で結局はガモランが暴れだして失敗してしまっている。
危険を感じながらもミーニンと一緒にガモランの説得に向かった「空からのプレゼント」の子供達の方がよっぽど理想的な答えを示していたと思う。ミトルはフブキ隊員の行動を見て考えを改めるのだが、これで改めるのなら前回のテストは一体どこをどう見ていたのかと問い詰めたくなる。
全てが終わってミトルはある結論に達する。
「ウルトラマンコスモスのせいばかりではない。地球人は共生不可能とも思える怪獣とも手を取り合おうとしている。地球人の文明は宇宙の中でも極めて高度で知的なものなのかもしれない」。
ちょっと待て。怪獣と共生しようとする地球人が宇宙の中でも極めて高度で知的な存在だと言う事は宇宙の殆どの星では怪獣との共生が実現できていないと言う事になる。地球だけ怪獣を攻撃対象にしていたのならともかく殆どの星で怪獣との共生が行われていないのに地球だけ暴れる怪獣(しかも他者の手によって故意に)に反撃してはいけないと言うテストを課す理由が分からない。
サワグチ女史から直接会って話をしたいと宇宙開発センターで待っていると告げられたヒウラキャップだったが、ガモラン事件で忘れてしまって約束の時間に遅れてしまう。
ヒウラキャップらしいが約束は守ろう。約束の時間に会いに行くのは無理だとしても連絡は入れるべきだった。
結局、サワグチ女史はヒウラキャップに会う事無く国際研究機関と共同で移送装置の開発を行う為にジェルミナⅢへ行ってしまう。
大学時代と同じくまた落第だったと言うサワグチ女史の手紙を読んでヒウラキャップは抜き打ちテストは酷いと嘆くが、その後に書かれてあった「追伸、次に地球に戻る時、もう一度テストをやり直します。テストを受ける気があるなら、女心をお勉強して、そのチャンスを待ちなさい」を読んで笑顔で「はい!」と元気良く返事するのであった。
サワグチ女史はヒウラキャップが来ない事を薄々感じていたように思える。
二人は今の状態をこのまま続けていくような気がするが、サワグチ女史としてはいい加減にはっきりさせたいところがあるのかもしれない。
ヒウラキャップ、いつあるか分からない相手からの追試をのんびり待っていないで自分から決着を付けに行ったらどうですか?