帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「復讐の空」

「復讐の空 ーギラッガス登場ー
ウルトラマンコスモス』第58話
脚本 右田昌万
監督・特技監督 原田昌樹

 

共生宇宙生命体ギラッガス
身長 48m
体重 4万6千t
リバネスの同族で前回の戦いで仲間が犠牲になったのに地球侵略を諦めた上層部に反対して群れを追放される。地球を征服して生きていく以外に道は無いとして単身で襲来して防衛軍のCHARGERSを次々と襲う。
大気も重力も違う地球では短い時間しか巨体を保てない。
人型のギラッガスMは青い服の男に、羽型のギラッガスFはミサキ・アイの姿をした赤い服の女に変身する。共生関係にあるギラッガスFはギラッガスMと運命を共にする覚悟だったがシノブリーダーの説得を受けてギラッガスMを生かす為に地球から去る決意をし、ギラッガスMもコスモスにやり直していく決意を告げる。
ギラッガスは一族を追放された逃亡者を指す言葉らしいが劇中では語られておらず地球人にはギリバネスと呼ばれていた。

 

物語
防衛軍の戦闘機がギリバネスに次々と撃墜される事件が起きた。EYESが捕まえた赤い服の女は自分達の目的が殺された仲間の復讐だと明かす。

 

感想
空の魔女」の続編。
ミサキ・アイの事があってか今回のフブキ隊員はかなり感情的になっているが今回も赤い服の女を撃つ事は出来なかった。
今回の説明によるとバネスの一族はミサキ・アイの姿を借りているだけでミサキ・アイ本人とは無関係らしい。
後半になるとシノブリーダーと赤い服の女の話に移るのでフブキ隊員とミサキ・アイの決着が明確に描かれなかったのは残念。

 

捕らえられた赤い服の女に向かってシノブリーダーは死んだ仲間の復讐が目的なのかと尋ねる。
仲間を地球人に殺されたとする赤い服の女に対してシノブリーダーは彼女は自ら命を絶ったと告げるが赤い服の女はそこまで追い詰めたのは地球人だと反論する。
自分達はそれ以上に地球人を手にかけていたのだが復讐者にそういう理屈は通らないのかな。

 

シノブリーダーに続いて今度はムサシが赤い服の女に質問する。
ムサシ「君と共生している仲間に指示されてきたのか?」、
赤い服の女「指示? あなたは共生している仲間に指示されているのか?」。
それを聞いたシノブリーダーはムサシの方を見るが、
カワヤ「それは違う! 彼は彼女の弟みたいなもので、つまり、彼女と共生しているのは、だから……恋人は僕だ!」、
シノブ「捜査の邪魔」。
ムサシの共生相手とはもちろんコスモスの事。ウルトラマンと一心同体になった人間の事を共生関係としたのが面白い。
カワヤ医師のボケはあまりにもタイミングが良いのでムサシを庇ったようにも見える。
シノブリーダーは勘が鋭いのにこういう場面に遭遇していながらムサシとコスモスの関係に気付かなかったのはちょっと意外。

 

仲間が必ず助けに来てくれると言う赤い服の女の言葉を聞いたシノブリーダーは警戒を厳重にするよう要請するが、カワヤ医師は命を守ると言う目的の中では敵も味方も無いとして断る。
が、その晩、青い服の男に赤い服の女を奪還されてしまう。落ち込むカワヤ医師に向かってシノブリーダーは「いつも自分の理想ばかり言って……」と呟く。
昔はカワヤ医師の事を「中途半端な男」と評していたが付き合っていくうちに軽い態度の下にある医者としての確固たる信念を見抜いていったようだ。

 

空の魔女」でギリバネスが一体死んだだけで宇宙船団が引き返したのが疑問だったが、どうやら地球はもっと原始的な星だと思っていたが攻撃力の意外な高さを知って驚いて逃げ出したのとの事。一人倒されたら引き返すくらいなら最初から地球侵略なんてしない方が賢明だったと思う。
復讐を訴えて群れから追放された青い服の男は地球を征服して生きていく以外に道は無いと語るが、ギリバネスと比べて格段に強いわけでもなく、宇宙船団の後ろ盾も無く、おまけに環境の異なる地球では元の姿を長く維持できないと言う状況では地球征服は無理であろう。もっとも、本人もそれを自覚していただろうが。

 

シノブリーダーを助けにやって来たムサシは青い服の男と対峙する。
ムサシ「もう戦うのは止めましょう……。あなたは仲間を捨てた群れを憎んでいるのであって地球を憎んでいるわけじゃない。戻れる場所が無いなら、この星で生きればいいじゃないですか!」、
青い服の男「仲間を……殺した奴らとか!」、
ムサシ「争う力があるのなら、分かりあえる力だってきっとあります!」。
ムサシの訴えに青い服の男は考えるが、そこに防衛軍のベンガルスが出撃して特務部隊が突入する。
青い服の男「時間稼ぎか……。汚いな」、
ムサシ「誤解です!」。
特務部隊とギラッガスの戦いを見てムサシは「止めろ……。止めろ! 話し合いもしないで乱暴すぎるぞ」と訴えるが石井は「これが仕事なんでね」と返す。
話し合いで無駄な血が流れなくて済むのが理想ではあるが全てがそのように解決するとは限らず、話し合いを装って策略を巡らす相手がいる事も確かなので特務部隊のような仕事は必要であろう。
一方で今まで険悪だったムサシと特務部隊の関係は「ワロガ逆襲」から少し変わってきている。相手との話し合いを求めるムサシと疑わしき相手は先制して攻撃する石井の主張は相容れなかったが、石井は自分の考えをムサシに伝えるだけの信用は出来たようだ。ムサシの真っ直ぐな思いに感化されるところがあったのだろうか。

 

石井は赤い服の女を捕らえ、青い服の男はギラッガスMに変身してベンガルズに反撃する。ムサシはEYESに攻撃を止めてほしいと訴えるが事態は好転せずコスモスに変身。コスモスはベンガルズの攻撃を止めるがギラッガスMは仲間の仇としてコスモスに襲い掛かり、それを見たEYESはコスモスを援護しようとしてベンガルズも反撃に転じる。
泥沼の戦いを見たシノブリーダーの説得を受けて赤い服の女は自分で考えて一つの答えを出す。
「私が死なせない……。あの人を生かす為なら私……、何でもする!」。
フブキ隊員は共生しているギラッガスのMとFが一緒になったらもっと強力になると反対するが、シノブリーダーは「コスモスが信じているものを私達も信じましょう」と訴え、石井も赤い服の女にかけていた手錠を外す。
「ここは……私達の生きる星じゃないのよね……。ありがとう……」。
シノブリーダーにお礼の言葉を述べて赤い服の女はギラッガスFに変身してギラッガスMと合体。ギラッガスMは猛然とコスモスに襲い掛かるがギラッガスFは抵抗するギラッガスMを連れて空へと飛び立つ。
「一緒に帰ろう……。一緒に……」。
ギラッガスFの説得を受けてギラッガスMは抵抗を止めて黙って頷き、それを見たシノブリーダーは「帰ったのよ。自分達の仲間の所へ……」と語る。
復讐は新たな復讐の芽を生み出す。暴力による解決は新たな暴力に繋がると言うのが『コスモス』のテーマの一つ。身をもってその連鎖を断ち切ったギラッガスFの決断は大きい。

 

赤い服の女と青い服の男が帰っていったのを聞いて、
シノブ「共に生きれるパートナーがいるって言うのも良いものねぇ……」、
カワヤ「俺達も頑張ろうな」、
シノブ「あんたの事じゃないわよ」。
肩に手をかけようとするカワヤ医師をいつものようにあしらうシノブリーダー。
カワヤ「またぁ、やせ我慢して。それじゃ帰還のお祝いに王子様のチューを……」。
いつものように口づけを迫るカワヤ医師だったが、シノブリーダーは軽やかに振り向いて、
ちゅ
笑顔で去っていくシノブリーダーと固まってしまったカワヤ医師の対比が面白い。
二人山伝説」から始まったシノブリーダーの恋物語はここにハッピーエンドを迎えた。良かった良かった。