帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「カオス大戦」

「カオス大戦 ーカオスウルトラマンカラミティ登場ー
ウルトラマンコスモス』第60話
2002年8月24日放送(第55話)
脚本 梶健吾
監督・特技監督 八木毅

 

カオスウルトラマンカラミティ
身長 47m
体重 4万2千t
コスモスのエクリプスモードに相当する姿でエクリプスモードの技を学習している。
コスモスを倒して科学分析センターを破壊した。
バイオケミカルセンターでカオスキメラの合成が続けられている事を察知すると地球のカオスヘッダーとP87ポイントのカオスヘッダーが合わさって再び出現したが、カオスキメラ・プロトタイプを受けて体が不安定になったところをエクリプスモードのコズミューム光線を受けて倒された。

 

物語
カラミティへと進化したカオスウルトラマンの前にコスモスは敗北し、ムサシは生死の境を彷徨う。
絶望的な状況の中でもEYESは諦めずに戦い続ける。その時……!

 

感想
最大の侵略」の続き。

 

今回の前後編は『初代マン』の「さらばウルトラマン」と『セブン』の「史上最大の侵略 前編」「史上最大の侵略 後編」を下敷きにしている。単なるオマージュではなく『コスモス』の設定に沿って無理無く話が展開されていたのが良かった。

 

コスモスとカラミティの戦いはカラミティ優勢で進み、カラミティブレードとカラミュームショットを受けてコスモスは敗北。ゼットンに倒された初代マンを思わせるように倒れる。
その後、カラミティによって科学分析センターは破壊されるが、直前にハズミ主任とドイガキ隊員によってカオスキメラ合成の第一段階は終了していて別の場所でも続行可能な状態になっていた。コスモスは敗れたが時間稼ぎは出来た。

 

コスモスが敗北して救助されるムサシ。カワヤ医師によると命に関わるような傷は負っていないが、その体は長い間ずっと休まずに極限まで体力を使い果たした人間と同じ状態、すなわち死にかけているとの事。これは侵略者との激しく長い戦いで体を壊してしまったモロボシ・ダンを思わせる。
ムサシとコスモスは別々の存在であったが一体化していた期間が長くなったのでお互いのダメージが影響し合うようになってしまったと思われる。

 

謎の空間で会話を交わすムサシとコスモス。
コスモス「ムサシ……、ムサシ……」、
ムサシ「コスモス……?」、
コスモス「ムサシ……、私にはもう時間が無い……」、
ムサシ「どういう意味です?」、
コスモス「君達の星、地球で戦う為のパワーが限界に近付いているのだ」。
全く環境が異なる地球で活動していた為、コスモスの体は傷付き疲弊して限界が近付いていた。よく考えたら3分間しか満足に活動できない条件の下で毎回生きるか死ぬかの戦いをしていたのだから体が壊れて当然と言える。
コスモス「だがムサシ、私は逃げ出したりはしない。この身が宇宙の星屑になろうとも最後まで戦う。それが私の使命でもあるのだ」。
コスモスが何故ここまで悲壮な決意でカオスヘッダー打倒に挑んでいるのかについては後の「地球の悲鳴」で語られる事になる。

 

コスモスの決意を聞いてムサシが答える。
ムサシ「ウルトラマンコスモス。もうあなただけが戦う事はありません。地球は僕達人類が自分達の手で守ってみせます……! ウルトラマンコスモス……。僕が……戦います。もう……あなたの力を……借りずに……」。
ムサシの呟きを聞くヒウラキャップとアヤノ隊員。
ヒウラ「ムサシ……。お前一人だけに戦わせはしない……!」。
この展開は初代マンを見送った時のムラマツキャップとモロボシ・ダンの正体を知った時のキリヤマ隊長の決意を思い出す。今回はそれに加えてコスモスと一体化しているムサシの決意が新たに盛り込まれている。

 

バイオケミカルセンターでカオスキメラの合成が続けられていたがそれを察知したカラミティが出現し、怪我を押してヒウラキャップが出撃する。
「コスモス……。君は地球と人類の明日の為に一生懸命戦ってくれた……。その事を思えばこんな怪我くらい……!」。
カラミティ相手に善戦するがやはりダメージは大きく最後は撃墜されてしまう。しかし、それでも尚、ヒウラキャップはラウンダーショット片手にカラミティに立ちはだかる。カラミティの攻撃に怯まず前進し続けるヒウラキャップがメチャクチャ格好良い。

 

司令室で次々と倒されていく仲間達を見ていたアヤノ隊員の所にフラフラ状態のムサシがやって来る。
カラミティの映像を見て飛び出そうとするムサシをアヤノが止める。
アヤノ「待って!」、
ムサシ「……」、
アヤノ「そんな体で戦ったら、どうなってしまうか分からないわ!」、
ムサシ「……」、
アヤノ「だから……!」、
ムサシ「コスモスは……僕達地球人の為に……いや、この地球に生きる全ての命の為に戦ってくれたんだ……。ここで僕達が退くわけにはいかない」、
アヤノ「……私は! ……。私は……あなたの事が……」、
ムサシ「……ありがとう。大丈夫。やられたりなんかはしない。絶対に勝つ!」。
笑顔でアヤノに自分の決意を告げて戦場に向かうムサシ。
コスモス「ムサシ……。私は君と共にどこまでも戦う!」、
ムサシ「ありがとう。僕の気持ちも同じです! コスモース!!」。
この告白から変身に至る場面はモロボシ・ダンとアンヌの超有名シーンがモデルであろう。『セブン』ではウルトラマンであるダンが地球人アマギ隊員を助ける為に戦うのだが『コスモス』では地球人ムサシがウルトラマンであるコスモスを助ける為に戦うと言うのがポイント。
ただ、一つ言うなら、コスモスとムサシの決意がはっきり述べられているのに対してアヤノの告白がはっきりと告げられなかったのが気になった。アヤノがはっきりと口にするまで時間がかかったとは思うが、そこは男としてムサシにはもう少し待ってほしかったところ。こんな切羽詰まった状況ではっきり伝える事が出来なかったアヤノはこの後どういう状況で自分の気持ちをムサシに伝えたのだろうか……?(もう言わなくても分かる関係ではあるが自分は気持ちのけじめが無く流されていくのは何となーくイヤ)

 

EYESに止めを刺そうとするカラミティの前にコスモスが参上!
いつもの手を掲げるポーズを使った空からの登場シーンがスピード感あって良かった。

 

エネルギーの関係か今回のエクリプスモードはカラータイマーが鳴るのがいつもより少し早かったように思う。

 

ハズミ主任とドイガキ隊員によってカオスキメラのプロトタイプが完成。
フブキ隊員によってカオスキメラのプロトタイプがカラミティのカラータイマーに撃ち込まれ、続けて放たれたエクリプスモードのコズミューム光線によって遂にカラミティは倒された。
それを見届けて「コスモスと僕達の勝利!」と叫んだ瞬間に倒れて寝てしまうドイガキ隊員。ハズミ主任によるとカオスキメラの合成で一週間近く眠っていなかったらしい。同じ状況なのに全然平気なハズミ主任が凄い。やはり天才は違う?

 

カオスキメラのプロトタイプはゼットンを倒した無重力弾が元ネタであろう。
無重力弾はいきなり出てきた新兵器であったが、カオスキメラのプロトタイプは「カオスの敵」を含めると3話も引っ張っていて、形勢逆転の切り札としての説得力があった。

 

戦いが終わり、トレジャーベースの草原で目を覚ましたムサシはコスモプラックを見つめる。
ムサシ「ウルトラマン……コスモス……」、
コスモス「ムサシ……。戦いはまだ始まったばかりだ」、
ムサシ「コスモス。僕はあなたと共に、そして仲間と共に戦い続けます!」。
ムサシの決意と共にいつもより少し早く入るエンディング曲が効果を上げていた。
尚、皆が力を合わせて強大な敵に立ち向かうと言うオーソドックスな展開は今回の話で終わって、この後の話ではムサシが敵と戦う事そのものに疑問を抱くようになり、やがてヒーロー作品でも非常に稀な結末へと至っていく事になる。

 

ムサシ役の杉浦太陽さんの逮捕騒動を受けて初回放送では最終7部作からムサシを外して再編集した「特別総集編1 コスモス最大の危機」が放送された。
冒頭でコスモスが視聴者に向けてムサシが出演できなくなった事を伝える場面がある。
放送前日の夜中に編集が完成して翌朝始発で納品したと言う超突貫作業だったのに破綻無く話がまとめられている事に驚く。ウルトラシリーズの主人公はウルトラマンに変身する為に他の隊員と離れて行動する事が多いのが幸いだったのかもしれない。
ムサシの視点が無くなると今回のカラミティ編はヒウラキャップが主役だった事が分かる内容であった。