帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球の悲鳴」

「地球の悲鳴 ードルバ カオスドルバ カオスウルトラマンカラミティ登場ー
ウルトラマンコスモス』第62話
2002年9月7日放送(第57話)
脚本 増田貴彦
監督 市野龍一
特技監督 鈴木健二

 

カオスウルトラマンカラミティ
身長 47m
体重 4万2千t
EYESの誘い出し作戦を読んで逆にEYESを誘い出して攻撃した。
最後は力を合わせたコスモス、EYES、防衛軍、怪獣の前に敗れる。

 

古代怪獣ドルバ
身長 58m
体重 6万4千t
エクリプスモードのコズミューム光線でカオスヘッダーを取り除かれて元に戻った。
その後、カラミティに苦戦するコスモスを見て救援に入った。
退化した小さな羽根で空を飛ぶ事が出来る。
時の娘(前編)」「時の娘(後編)」のガルバスと同じ種類の怪獣でガルバスの着ぐるみを改造している。

 

カオスドルバ
身長 59m
体重 6万4千t
地中から現れてEYESが設置した1420MHz発信装置を破壊する。
口から火炎を吐く。
エクリプスモードのコズミューム光線でカオスヘッダーを取り除かれてドルバに戻った。

 

物語
カオスキメラ増殖に成功したEYESは遂にカオスヘッダーへの反転攻勢を仕掛ける。
コスモス、EYES、防衛軍、怪獣。全てがカオスヘッダーとの決戦に向かう中、ムサシは独り迷いを抱える。

 

感想
ソアッグ鉱石の導入でカオスキメラの開発は最終段階へ。これでP87ポイントのカオスヘッダーを一掃できると喜ぶEYESだがムサシは一人浮かない顔で鏑矢諸島に向かう。
ヒウラキャップは気が優しすぎるムサシはエスカレートしていく戦いに気持ちが追い付かず戦いそのものに疑問を持ち始めている事を感じ取り、状況によっては戦いから外す事も仄めかす。
「戦いが始まったら、もう悩んだり迷ったり出来ない。うまく自分の気持ちにケリを付けてくれればいいんだが……」。

 

鏑矢諸島にやって来たムサシはリドリアスの元気が無い事に気付き、イケヤマ管理官はカオスヘッダーの影響で鏑矢諸島の生態系が変わり始めていて地球環境そのものも変質していると告げる。
「悲鳴が聞こえるようだよ。この地球の悲鳴がな……!」。

 

キメラミサイルが遂に完成し、最終決戦を前にEYESは地球に残存するカオスヘッダーを誘い出して取り除く事を決める。
1420MHzのウルトラ信号を発してコスモスが現れたと見せかけて現れたカオスヘッダーをキメラミサイルで倒すと言う作戦だが、確か1420MHzはコスモス固有の信号ではなくて宇宙人の共通言語だったような……。

 

進化を繰り返すカオスヘッダーとの戦いを終わらせる方法はあるのかと言うムサシの疑問にドイガキ隊員はその度に戦って打ち勝つしかないと答える。これは『セブン』の「超兵器R1号」での「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」と同じ考え。

 

最大の侵略」でカオスヘッダーが目覚めさせた地球怪獣が遂に出現。後の「カオス激襲」でもエリガルが出現しているが、カオスヘッダーが乗っ取った怪獣以外は出現しなかったところを見ると殆どの怪獣は目覚めても地上に現れる気は無いようだ。やはり人間が手を出さない限り怪獣から何かする事は殆ど無いのかもしれない。

 

カオスヘッダーの殲滅のみを想定しているカオスキメラには怪獣からカオスヘッダーを切り離す効力は無く使用したら怪獣そのものを殺してしまう恐れがあった。打つ手が無いEYESに対してカオスヘッダーはカオスドルバを使って1420MHz発信装置を破壊してテックスピナーを撃墜する。
カオスヘッダーがドルバを使ってEYESを誘い出した事を知ったシノブリーダーは「なんて卑怯な!」と怒りを露わにしていたが、そういう自分達は何をするつもりだったのかとツッコみたくなる。

 

カラミティの攻撃を受けたムサシ。気付いた瞬間、周りには荒廃した世界が広がっていた。
ムサシ「ここは?」、
コスモス「ムサシ。ここは私の記憶の中にある風景だ」、
ムサシ「コスモスの……記憶?」、
コスモス「そうだ。地球に来る前、私はある星をカオスヘッダーの脅威から守ろうとした……」、
ムサシ「守ろうと……した?」、
コスモス「だが、私は守る事が出来なかった……。カオスヘッダーによって生態系が変えられた惑星はこのように死の星となってしまったのだ……」、
ムサシ「嘘だ! そんな……」、
コスモス「本当だ、ムサシ。だから私は救いたいのだ、この地球を。この地球だけは何としても……!」。
地球の悲鳴を聞くムサシ。
ムサシ「コスモス……。地球の……悲鳴……」、
コスモス「変身するのだ、ムサシ。地球の為に!」。
M78星雲と言うバックグラウンドがある昭和ウルトラシリーズと違って出身についてあまり言及されない平成ウルトラシリーズウルトラマンの過去が語られるのは珍しい。それも宿敵から人々を守れなかったと言うかなり衝撃的な内容であった。この告白によってコスモスの戦う理由が明確になってカオスヘッダーとの対立構造が分かりやすくなった。

 

変身してすぐさまエクリプスモードにモードチェンジするコスモスだったがカラミティの前に苦戦を強いられ、援護に入ったEYESも撃墜されてしまう。その時、助けてくれた恩を受けてドルバが勇猛果敢にカラミティに突撃する! 結局は倒されてしまうのだが怪獣が助けに入る展開は見ていて盛り上がる。
倒されていく仲間達を見て怒りに震えるコスモスはエクリプスブレードを撃つが止めを刺すには至らず、逆に力尽きて倒れてしまう。絶体絶命のその時、防衛軍の戦闘機が救援に来た!

 

防衛軍が参戦しガルズのナガレ・ジュンヤも姿を現す。
ナガレ「こちらナガレ。これからカオスヘッダーを……撃滅します!」、
西条「キメラミサイルは一発しかない。……外すなよ」、
ナガレ「俺を誰だと思っているんですか?」、
西条「そうだったな」。
不敵に笑い合うナガレと西条武官。
まさかネタではなく素直に西条武官をカッコイイと思える場面が来るとは思わなかった。西条武官はEYESから見たら悪役になるが、防衛軍内部から見たら対立する組織と戦って自分達の縄張りを守り、部下やスタッフの能力を高く評価している等、意外とイメージが良いのかもしれない。この場面を見るとナガレを準レギュラーにして西条武官とのやり取りをもっと増やしてほしかったなと思う。
ナガレによってキメラミサイルをカラータイマーに撃ち込まれたカラミティは体が不安定になり、最後の力を振り絞って立ち上がったエクリプスモードのコズミューム光線で消滅させられる。カオスヘッダー撃退後、ナガレはコスモスに敬礼を送り、コスモスは頷いて空へと帰って行った。

 

戦いが終わった後、EYESの前にナガレが立つ。
ナガレ「佐原司令官からの伝言です。我々防衛軍はEYESに全面協力。カオスヘッダー殲滅作戦案を支援・遂行する。以上です」、
ヒウラ「ありがとう。感謝していますとお伝えください」、
ナガレ「了解しました」。
敬礼を交わす両者。ここで長く続いたEYESと防衛軍の対立関係はひとまず終結。カオスヘッダーと言う強大な敵を前に一致団結する事となった。
手を取り合って喜ぶ仲間達だが独りムサシだけはその輪に入れない。
アヤノ「ムサシ! どこ行くの?」、
ムサシ「ドルバを鏑矢諸島に連れて行く」、
フブキ「ムサシ! お前の言う何かって言うのは見付かったのか?」。
フブキ隊員の問いに答えられないムサシ。それを見てフブキ隊員が訴える。
フブキ「……吹っ切れ、ムサシ! 迷ってたら戦えない! カオスヘッダーを倒さなければ俺達の未来は無いんだ!」、
ムサシ「本当に……それしかないんですか? 本当にそれしか……」。
そう言い残してムサシは皆に背を向けて再び歩き出した。
EYESと防衛軍の共闘の盛り上がりで見落としていたがEYESはカラミティに倒されたドルバを放っておいて防衛軍との共闘を喜んでいたのか……。防衛軍に感謝を伝えるのは当然だが怪獣保護チームなのでドルバの事も常に気にかけてほしかった。それだけカオスヘッダーとの戦いでEYESが基本理念を忘れかけていると言う事でもあるのだが……。

 

今回はコスモスとEYESだけでなく怪獣や今まで対立を続けていた防衛軍までもがカオスヘッダー打倒に集結すると言う燃える話になっていた。
話の構造は『ガイア』の「地球の叫び」に似ているが今回は主人公のムサシが戦いに迷いを見せると言う大きな違いがある。
対立していた両者が強大な敵を前に一致団結するのはヒーロー作品に限らず盛り上がる展開ではあるが今回の『コスモス』はその流れに加われなかった人物はどうなるかを描いている。
劇中でムサシは周りから外れて共闘ムードに水を差す浮いた存在となってしまっている。だが、皆が戦おうとしているのだから誰も彼も一緒に戦わなければいけないと言うのは実は恐ろしい考え。
放送時期を考えると、同時多発テロを受けたアメリカが世界各国にテロとの戦いに加わらなければいけないと訴えて、殆どの国がテロとの全面対決に加わる事を表明せざるを得なかった状況と重なる。
又、アメリカ国内でもテロへの報復に反対した人物が非国民として世論から糾弾されると言う事件が起きていた。
敵と戦うと言う大きな意思が戦いに迷いを見せる個々の意思を押し潰して全体を一つの決められた方向へと連れていく。それは後に明らかになるカオスヘッダーの押しつけの正義と何ら変わりがなかった。