帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』

ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』
2002年8月3日公開
脚本 長谷川圭一・川上英幸
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

異形生命体サンドロス
身長 67m
体重 8万5千t
砂漠化した不毛な環境を好む。
惑星ギャシーを死滅させた後、ギャシー星人を追って様々な星に怪獣兵器を送り込んだ。
ガス状のエネルギー生命体となって時空間に潜んで地球に襲来すると暗黒ガスで太陽を塞いで周辺を闇で覆って砂漠化させていった。
口から火球ギガレントラッシュを吐き、強烈念動波ハード・キネシスで相手の動きを操り、手を闇黒剣ブラックローベルに変形させて斬りつけてくる。
強き者は弱き存在を滅ぼすのが宇宙の真理でありルールであると自らの行為を正当化させてコスモスとジャスティスに戦いを挑むがエクリプスモードのコズミューム光線とジャスティスのビクトリューム光線で倒された。
名前の由来は「サンド(砂)」と「ロス(失う)」かな。

 

怪獣兵器スコーピス
身長 54m
体重 6万1千t
サンドロスによって送り込まれて様々な星を襲った。
戦闘形態と飛行形態を持つ。
赤い光弾ポイゾニクトで自然を砂漠化させ、滅却弾フラジレッドボムで全てを破壊し、毒を含んだ尾で相手を苦しめる。
大群で地球に襲来するがコスモス達に撃退され、生き残った者もサンドロスによって始末された。さんざん利用されて揚句に爆弾に変えられて特攻させられ、生き残れても最後は粛清されてしまうと『コスモス』の怪獣の中でも抜群に可哀想な存在。
設定によるとサンドロスに作り出された兵器との事。生物ではないのかな?

 

ネイチュア宇宙人ギャシー星人
身長 シャウ・157cm ジーン・172cm
体重 シャウ・40kg ジーン・60kg
美しい惑星ギャシーに暮らしていたがサンドロスに送り込まれたスコーピスによって赤い砂と有毒ガスに覆われた死の星に変えられてしまった。
サンドロスが放った追手によって多くの仲間を失ったが、自然を再生する為にモデルとなる星を求めて地球にやって来た。海底に作ったブルーエリアで生命そのものの実験を行っていたが無から有を作り出す事が出来ても生命を作り出す事は出来なかった。
K2電波でレイジャとコミュニケーションを取り、レイジャ特有の電気信号から強力なエネルギーシールドを開発する。
変身する事が出来る。指先から緑の光弾を発する。海中を移動する時は人魚によく似た水中形態になるので地球人に人魚として目撃されていた。
最初は地球人に心を閉ざしていたがムサシやマリと言った新しい仲間との出会いで心を開いていき最後は大切なものを取り戻した事で生命の実験も成功させる事が出来た。

 

海底怪獣レイジャ
身長 レイジャ・72m レイジャS&J・53m
体重 レイジャ・4万t レイジャS&J・5万9千t
エイに似た姿の怪獣で水中だけでなく空中でも素早い動きが出来る。
K2電波で仲間達とコミュニケーションを取る。
1年前から生息地域から姿を消していたが実はギャシー星人の事情に理解を示して力を貸していた。
ギャシー星人が額のコミュニティ・デバイスに一体化する事で戦闘フォームに変身する。シャウが一体化したレイジャを「レイジャS」、ジーンが一体化したレイジャを「レイジャJ」と呼ぶ。
口から波動弾オーシャライザーを放って戦うがスコーピスに倒されてしまう。
ギャシー星人が地球を去った後は元の環境に戻ったらしい。

 

ウルトラマンジャスティ
身長 46m
体重 4万1千t
惑星ギャシーに「光り輝く神」として語り継がれているもう一人のウルトラマン
コスモスと力を合わせてサンドロスを倒した。

 

物語
カオス大戦の終結から2年が経ち、アストロノーツの夢を叶えたムサシは怪獣保護の実現に向けて奔走していた。しかし、新たな世界は新たな出会いでもあった。

 

感想
『コスモス』は他のウルトラシリーズと違って映画から物語が始まってTVシリーズを経て映画で物語が終わると言う形になっている。
20世紀のヒーロー作品はTVシリーズでメインの物語を終えているが、21世紀に入るとTVと映画の連動が強くなって、物語の全てを知るには映画を見なければいけなくなっていった。

 

本作はマリアナ政府観光局の協力でウルトラ映画で初めて海外ロケが行われているが、アメリ同時多発テロの影響で色々大変だったらしい。

 

設定によるとカオス大戦が終結したのが2010年で、ムサシが宇宙開発センターに戻ったのが2011年、そして本作の出来事が2012年となっている。
真の勇者」から2年が経っていて、ムサシはコスモスとの約束を胸に少年時代からの夢だったアストロノーツになって宇宙船プラネット1で遊星ジュランへ向かう。
このテックスピナーKS・プラネット1はテックスピナーをベースにテックブースター以上の性能を誇るテクノプラズマSⅡエンジンを搭載していると言う設定。TVシリーズでは宇宙装備は少なかったので、あれからわずか2年でテックブースターを上回る宇宙船が出てくるのに驚いた。カオス大戦が終結して軍事関係以外にも予算が回るようになったのかな?
他にはジェルミナがⅢからⅣへと代替わりしている。

 

宇宙開発センターに戻ったムサシは怪獣達の新天地を求めて遊星ジュランへ。おそらく『THE FINAL BATTLE』で語られる「ネオユートピア計画」に関係するものだと思われる。
かつてカオスヘッダーによって滅ぼされた自然も大分回復したらしいが今度はスコーピスによって死の星にされてしまう。災難な星だ……。
パラスタン自身にはあまり戦闘能力は無いらしい。コスモスがもう少し早く来てくれれば……。

 

スコーピスに襲われるムサシの前にコスモスが現れて素早い動きでスコーピスを圧倒する。
新登場のスペースコロナモードはコロナモードの宇宙タイプで超能力が使いやすいスタイルらしいが劇中ではよく分からない。それもそのはずで、このスペースコロナモードは元々コロナモードだったのが撮影段階で変更されたもので脚本家さえ試写で初めて存在を知ったと言う代物。もっと早く登場が決まっていたらコロナモードとの違いがはっきり描かれたのかなと思うと残念。21世紀のヒーロー作品の映画は新モードが登場するのがお約束になっているがそれが悪い方向に出てしまった。
これまでコスモスは宇宙に出てもスペースコロナモードにモードチェンジしていないので、これはムサシと別れた後に新たに身に付けた能力と言う事になるのかな?

 

地球に戻ったムサシのもとに牧場を始めて北海道に移った父・勇次郎から映像通信が送られてくる。遊星ジュランが滅ぼされて怪獣保護計画が大きく後退した事に凹むムサシだったが、勇次郎は昔の仲間と会って初心に戻ったら良いとツトムが結婚する事を告げる。
ツトムはサイパン観光協会に勤務していて、そこで妻のリタと出会ったとの事。そしてサイパン島での結婚式にムサシだけでなくマリとショージとミツルも駆け付ける。マリも今はサイパンに住んでいて海洋生物の研究をしているとの事。
今回のツトムの結婚で『THE FIRST CONTACT』のロケット砦に掲げられたMMSTの旗に名前が書かれている4人全てに一度はスポットが当たった事になった。
ウルトラシリーズでは主人公の私生活はあまり描かれないのだが『コスモス』は子供時代から物語が始まっているので家族や友人と言った特別チームとは別の主人公の人間関係を見る事が出来る。

 

ムサシ達がお酒(だよね?)を飲んでバカ騒ぎするのはTVシリーズでは出来ない劇場版ならではの場面だった。個人的には大人の設定ならお酒を飲む場面があっても良いと思うのだが子供向け作品だと色々問題があるんだろうな。

 

レイジャに襲われたムサシはキド隊長からマリが行方不明になっている事を知らされる。
キドは木本博士に続いて再登場したSRCのオリジナルセブンとなった。
ムサシとキド隊長は『THE FIRST CONTACT』以来約10年振りの再会らしい。同じSRCに所属しているのに一度も会っていなかったとは意外。
その後、スコーピスがサイパン島に上陸してキド隊長率いるTEAM SEAが初出動する事になる。
キド「ムサシ、君も手を貸してくれるか?」、
ムサシ「はい!」。
キドにとって子供だったムサシが大人になって共に戦える仲間に成長したと言う関係が長い歴史を持つ『コスモス』らしくて良い。

 

TEAM SEAが使用するトロイASとトロイBSは『THE FIRST CONTACT』でSRCが使用していたトロイAとトロイBを、マリンダイバーはTVシリーズでEYESが使用していたシーダイバーを発展させたものとなっている。
ガンダムシリーズが好きな自分としてはこういう機体の発展の歴史があるのは色々なものを考察できて楽しい。

 

TEAM SEAはロタ島に本部を持つ海に生息する怪獣の保護・調査を目的に結成されたSRCの専門セクションとの事。「深海の死闘」に登場せず、ムサシも存在をよく知らなかった、レイジャの生態調査が初仕事と言う事からカオス大戦の後に結成されたチームだと思われる。
マカベ隊員はブルーエリアに酸素があるのか不安で潜水道具を持ち込んでしまうほどの心配症。シャウが握手を知らない事にいち早く気付いたりするなど他人の気持ちを察するのが得意。
カノウ隊員は物静かな学者タイプ。カノウ隊員役の加瀬尊朗さんはメガネがよく似合っていた。メガネをかけている隊員は少ないので今後増やしていってほしいと思う。
ヒュウガ隊員は勝気なエースパイロット。ヒュウガ隊員は斉藤りささんが『ダイナ』で演じたリョウと殆ど同じキャラクターであった。カノウ隊員を『ダイナ』でカリヤを演じた加瀬さんが担当して、ヒュウガ隊員とカノウ隊員の関係を『ダイナ』のカリヤとリョウのように描いていたので、おそらく狙ってやったのだと思うが、出来れば『コスモス』では『ダイナ』とは違うキャラクターを出してほしかった。

 

1年前からレイジャが全ての生息地域から消えて代わりに人魚の目撃が報告されるようになった。そしてサイパン島を破壊するスコーピスの前にレイジャと人魚が現れ、二人は一体化してスコーピスに立ち向かう。
地球出身のレイジャと宇宙人のギャシー星人が一体化して戦うと言う設定は実はウルトラマンと同じである。
劇中で描かれていないが、レイジャはギャシー星人の事情を理解して力を貸していたらしい。この関係は一方的な主従関係であったサンドロスとスコーピスと対比されている。TVシリーズでのムサシとリドリアスの関係とも繋がっているような気もするが残念ながらリドリアスの出番は今回無かった。

 

ギャシー星人は海中を移動する時は人魚によく似た水中形態になる。劇中ではシャウの変身だけだったがジーンも変身できるのだろうか? 想像してみたけれどなんか似合わない。

 

スコーピスに苦戦するレイジャを見たムサシの目に透明なコロナモードが姿を現す。
スコーピスと戦うファントムコスモス・スケルトンコロナモードだったがそれはムサシが見た幻で、コスモスはもういない事を再認識したムサシは自分の力でレイジャを助け出す。
ロケ先の関係で急遽登場させる事になったスケルトンコロナモードだがはっきり言って酷い。映画なので中盤にコスモスの活躍を入れる為に幻を登場させるのは分かるが、それを新モードとして意味ありげに紹介するのは問題。言っては悪いが詐欺に近いレベル。(これを新モードとするならエネルギーが低下して透明になったルナモードの方にこそモード名を付けてよと言いたくなる)
ところでムサシはスケルトンコロナモードを見てコスモスがいない事を再認識するのだが、遊星ジュランでコスモスと再会して、コスモスがスコーピスと戦っている事を知っているので、コスモスがスコーピスを追って再び地球に来ると考える方が自然だと思う。

 

マリがシャウの仲間の所にいる事を知らされたムサシ達はブルーエリアに案内される。海の底にある光のゲートを越えるとブルーエリアと言うもう一つの世界が現れると言う展開は『ガイア』の「ガイアよ再び」に登場したリナールを思い出した。
海の底に先住民族が暮らしていたと言う話は過去の作品にあったので今回は意図的に避けたらしい。シリーズものは過去の作品とのネタ被りも気にしなくてはいけないのが大変だ。

 

ムサシ達の来訪にジーンは利己的な存在である人間がブルーエリアを知れば必ず災いをもたらすと告げ、それを否定するシャウにどうしてそのような考えに至ったのかと問い詰める。
「考えたんじゃない。……感じたんだ」と言うシャウの答えにジーンは不満なまま一旦引き下がり、ムサシはシャウに感謝の気持ちを伝える。「ありがとう。僕達を信じてくれて」と手を差し出すムサシだったがシャウはその行動を理解できず、察したムサシはシャウの手を取って説明する。「ほら、こうすると互いの体温が伝わるだろう? 地球ではこうやって敵意が無い事を相手に伝えるんだ」。
因みに『ムサシ(13歳)少年編』ではシャウが少年ムサシに向かって「未来のあなたが私にそう感じさせた」と説明している。
握手の時、いきなり手を握られてビクッと強張るシャウがちょっと可愛かった。

 

マリはチャイルドバルタンのシルビィとメル友になって、その推薦でシャウ達の研究を手伝う事になり、左腕のブレスレットでシルビィやシャウと交信しているらしい。
ひょっとしてマリってムサシ以上に異星人とのコミュニケーションを進めているのではないだろうか。
ところでシルビィはマリとメールをするのにどうしてムサシには連絡してこなかったのだろう? ちょっと寂しい。

 

ギャシー星人は死滅した星を再建させる為にバルタン星人とコンタクトを取ったらしい。と言う事はバルタン星人の星の再建は進んでいるようだ。この死滅した星を再建させる技術は後の『THE FINAL BATTLE』にも関わってくる。
結ばれた一つの絆がまた新たな絆を結ぶ事になる展開は映画にTVシリーズにと長い物語を持つ『コスモス』の世界をより深いものにしている。あの時、ムサシとチャイルドバルタンが分かり合わなかったら、ギャシー星人と出会う事も無く、ムサシのネオユートピア計画も頓挫していたかもしれない。

 

砂漠化した不毛な環境を好み多くの惑星を死の星に変えたサンドロスはとんでもない存在に思えるが、木を切り倒された山、汚染された海、アスファルトやビルで固められた大地を見ると人間も不毛な環境を好み多くの自然を死に追いやっていると言える。
サイパンの美しい自然はそう言った不毛な環境と対比できるものだったが、劇中では美しい光景以上の意味を持っていなかったのがちょっと勿体なかった。

 

サンドロスが地球にスコーピスを送り込んだ事を受けてSRCのキノザキ副代表とアカギ審議官、防衛軍のイヌガイ司令官による会議が開かれる。
イヌガイ司令官はブルーエリアが侵略基地ではないと言う保証が無い、サンドロスの目的であるギャシー星人を追放すれば地球は助かると訴えるが、キノザキ副代表は人類は理性ある生命体としての努力を放棄してはいけないとして共同作戦を提案する。
SRCと防衛軍の幹部を演じたのは『ティガ』『ダイナ』『ネオス』で特別チームの隊長を演じた人達。
キノザキ副代表とアカギ審議官の立場がヒビキ隊長とイルマ参謀の逆になっているのが興味深い。アカギ審議官はイルマ参謀と比べると少し意志が弱いかな。
TVシリーズに登場していた佐原司令官と西条武官がどうなったのか気になる。佐原司令官はカオス大戦の後に身を引いていそうだが、西条武官は何かやらかして更迭とかされていそう。カオスヘッダー襲来と言う非常時だったので失態を犯しても許されていたようなところがあったし。
後のプロジェクト・ブルーの場面では防衛軍のヒジカタ副司令が登場。防衛軍にしては珍しくSRCに対しても節度を守った人物だった。アカギ審議官とヒジカタ副司令の関係は『ティガ』のイルマ隊長とムナカタリーダーを思い出す。もしムナカタリーダーがGUTSに入隊しないで防衛軍所属のままだったら二人はこういう関係になっていたのかな。
過去の作品に出演した役者さん達が見られるのは嬉しいが、過去の作品を思い出すところが多かった為に『コスモス』の独自性が削がれたところはあった。

 

洞窟の中でシャウはあの結婚式の夜に海から眺めていたムサシ達の楽しそうな姿を思い出して独りシャンパンシャワーを行う。
幻の友達に囲まれて楽しそうにはしゃぐシャウの姿が哀しい。シャウはギャシー星人の仲間がいるのに孤独感が漂っている。殆どのギャシー星人はジーンに近い考えを持っていてシャウはそこから外れているのかな。

 

ジーンがレイジャ特有の電気信号から強力なエネルギーシールドを開発してブルーエリアを覆っていた事から、そのシールドで地球上空の電離層に巨大バリアーを張ると言う前代未聞の作戦「プロジェクト・ブルー」が発案される。
地球の表玄関であるSRC宇宙開発センターがある北九州の周防灘にある新北九州空港建設地にK2電波シールドメインパラボラが急ピッチで設置される。
この北九州もサイパンと同じくタイアップ絡みなのだが舞台が増える事で物語のスケールが広がる事となった。
敵の襲来に備えて一週間も前から準備が行われるのはウルトラシリーズでは珍しい。大抵はいきなり敵が現れて一日で作戦が終了している。
因みに今回の作戦名は『セブン』の「プロジェクト・ブルー」に登場する地球と月を磁力線の網で包み込む地球防御バリアの「プロジェクト・ブルー」が元ネタ。

 

ムサシを危険視したジーンはマリを利用してムサシを無人の遊園地に呼び寄せて始末しようとする。
ムサシ「マリは本当は君は優しいと言った。故郷を滅ぼされて心を閉ざしているだけだって。そんなマリを君は……」、
ジーン「うるさい! 故郷を滅ぼされた者の無念がお前なんかに分かってたまるか!」。
って、いつマリが「ジーンは本当は優しい人」と言った!? ジーンの心境についての話はマリではなくてシャウがしていたはず。どこかカットされた場面があったのだろうか……?
今回はシャウとジーンの話かと思いきや実はマリとジーンの話だったと言うどんでん返しが面白いのだが、あまりにも唐突すぎた。なにせこの場面の前でマリとジーンの話は全く無く、顔すらまともに合わせていない。どんでん返しは結構なのだが前置きも何も無い状態でされてもこちらは戸惑ってしまう。

 

ムサシとのやり取りでジーンはマリとの出会いを思い出す。
生命を作り出すなんて最初から無理だったと弱気になるジーンをマリは「でも、それを待っている人達がいるんでしょう? 信じればきっと夢は叶うよ。ファイトファイト! ね!」と元気付けていた。
実は本作ではムサシは怪獣保護、ジーンは生命を作り出すと二人とも壮大な夢を追いかけているのだが結果が出ないで苦しんでいる。そこからムサシは父の言葉通りにマリやEYESやコスモスと言った昔の仲間との出会いで再び夢を追いかけるようになり、ジーンはマリやムサシと言った新しい仲間との出会いで夢を追いかける気持ちを取り戻している。
そして後の『THE FINAL BATTLE』ではムサシの怪獣保護とジーンの自然再建と言う二つの夢が合わさって遊星ジュランを舞台にしたネオユートピア計画が実現する事となる。

 

ムサシとマリの言葉で遂に立ち上がったジーンによってK2電波シールドが完成する。
K2電波シールドはスコーピスを完全に防ぐが、地球に辿り着いたサンドロスは逃亡するスコーピスを操って爆弾代わりにしてK2電波シールドを打ち破ってしまう。
躊躇いも無くスコーピスを爆弾に変えて特攻させるサンドロスはかなり非情な存在。おそらくこの展開によってコスモスやムサシがサンドロスを倒しても良いと言う理由付けがされたと思われるのだが、「サンドロスが酷い」と言うより「スコーピスが可哀想」と言う印象の方が付いてしまって、この後、コスモス達によって次々と倒されていくスコーピスの姿は見ていて思わず憐れみを感じてしまった。

 

出撃した防衛軍が壊滅した事を受けてTEAM SEAが出動し、さらにそこにEYESもやって来る。
ヒジカタ「怪獣保護チームの出る幕じゃない。下がれ」、
ヒウラ「今回の作戦には我々の仲間が参加しています。怪獣保護と言う大きな夢に共に立ち向かってきた大切な仲間が……!」、
ヒジカタ「春野……ムサシか?」、
ヒウラ「はい……!」、
シノブ「もう一度、彼と一緒に戦わせて下さい」、
ヒジカタ「……了解。だが、足手まといにはなるな」。
TVシリーズにヒジカタ副司令みたいな人がいたら防衛軍のイメージも変わっていたんだろうなぁ。EYESとの対立が薄くなると印象も薄くなってしまう恐れもあるが。
この時登場したテックサンダーは制御系駆動装置が高速化された改良機らしい。
ムサシの夢を蘇らせる者として昔の仲間であるEYESが登場するのは分かるが、怪獣保護を掲げるムサシの危機に駆け付けてするべき事がスコーピスと言う怪獣を倒す事だと言うのが腑に落ちない。一応、「悪い怪獣だから」と言う理由付けはされているがTVシリーズで怪獣に善いも悪いも無いとしたはず……。

 

この星の生命をこれ以上滅ぼさせはしないとして戦う事を決意したシャウとジーンはそれぞれレイジャと一体化する。この時にジーンがマリに送った「マリ、君と出会い、俺は夢を取り戻せた。……ありがとう」は殆ど遺言。
EYESとTEAM SEAとギャシー星人による共同戦線が行われる中、ムサシは避難している人々の中である少年と出会う。「ウルトラマンコスモス、来てくれるんよね?」と言う少年の言葉にムサシは「きっと来てくれる」と答える。
その後、シャウを庇ってスコーピスに倒されたジーンを見てムサシの想いが爆発する。「なぜ夢を奪うんだ! お前達にそんな資格があるのか! 僕に力を! 皆を守る力を! もう一度、僕に! コスモース!!」。
スコーピスの攻撃で爆発する中での輝石を掲げての変身は『コスモス』の中でもトップクラスのカッコ良さ。
ムサシの叫びに応えて太陽から地球にやって来た一つのコロナはスコーピスを焼き尽くしムサシを包み込む。そしてムサシの勇気を得たコスモスはエクリプスモードとして地球に帰還するのだった。
真の勇者」でムサシと分離したコスモスがカオスダークネスとの戦いでエクリプスモードにならず、今回のムサシとの再合体を経てエクリプスモードになった事から、エクリプスモードはムサシと一体化していないとなれないようだ。

 

地球に帰還したコスモスは新技エクリプス・ブローショットで上空のスコーピスを撃破する。
結構派手な技なのだが倒したのは実は一体だけだったりする。これで何体かまとめて倒したイメージがあったのだが……。

 

恐怖して逃げ出すスコーピスだったが謎のエネルギー生命体に始末されてしまう。そして地上に降り立ったエネルギー生命体はサンドロスの姿を現してコスモスに襲いかかる。
サンドロス「資格があるのかと叫んだが……、この星を支配する資格があるのかと……。強き者が弱き存在を滅ぼす。それこそが宇宙の真理。疑いようの無いルールだ!」、
ムサシ「違う! 心亡き者は……いずれ滅ぶだけだ!」、
サンドロス「ならばお前が滅びよ! 我が力の前に!」。
サンドロスの自分の行動に絶対の自信を持っているのは敵キャラクターとして実に魅力的であった。『コスモス』っぽくない敵ではあるのだが、こういう絶対悪と言うのもヒーロー作品には必要だと思う。

 

サンドロスの圧倒的な力で追い詰められるコスモスだったが、そこに新たな光、もう一人のウルトラマンジャスティスが降臨する。
ヒウラ「コスモスじゃない……」、
キド「もう一人の……ウルトラマン」、
シャウ「伝説の巨人……」。
ジャスティスアビリティによってエネルギーが回復したコスモス。コスモスとジャスティスと言う二人のウルトラマンがサンドロスを追い詰めるが、サンドロスは周辺を闇で覆い、闇に同化して反撃してくる。しかし、所詮は二人のウルトラマンの敵ではなく、コズミューム光線とビクトリューム光線で返り討ちにされた。
戦いが終わり、分離したムサシはコスモスにお礼を述べ、コスモスとジャスティスは宇宙へ帰っていった。
新たなウルトラマンであるジャスティスの登場だがいなくても話に支障は無い。逆にマリが「ムサシは負けない!」と叫んだ直後にジャスティスがいなければコスモスが負けてしまう展開になってしまったので、いない方が話はまとまっていたところがある。だが、次作の『THE FINAL BATTLE』を考えるとこの時のジャスティスの参戦はかなり大きな意味を持っていた事が分かる。『コスモス』の映画は当初から三部作を計画していたわけではなかったのだが、三部作の映画でよくある2作目と3作目が繋がっているパターンに近い形になった。

 

「戦いには勝った……。でも……」。サンドロスが倒されて地球の危機は去ったがジーンが犠牲になった事にマリの表情は暗い。しかし、そんなマリのもとにジーンが帰って来る。
ジーンの無事に駆け出すシャウだったが、そんなシャウより先にマリが駆け出してジーンに抱きつく。これにはさすがのシャウも驚き。シャウは二人がそういう関係だったと気付いていなかったようだ。
そこにやって来るムサシ。ムサシの顔を見たシャウの顔に思わず笑みが浮かぶ。
シャウ「ムサシ……」、
ムサシ「シャウ。初めて笑ったね……」、
シャウ「良かった……。皆無事で……」。
地球人の若者と宇宙人の若者が対立しながらも最後は笑顔で喜び合う展開はムサシの青春を描く『コスモス』らしい爽やかさであった。

 

ジーンはレイジャに命を助けられたらしい。両者がそこまでの関係だとは思わなかった。地球怪獣でありながら宇宙人に協力して最後は我が身を投げ出して救うまでに仲間として認めていた。そのドラマを正面から描けばムサシとリドリアスのように人間と怪獣の共生と言うテーマに繋げられたと思うが、劇中での描かれ方はギャシー星人がスコーピスと戦う為の戦力程度に留められていた。
おそらくこれは本作のテーマに「怪獣との共生」より「破壊に屈しない勇気」が選ばれたからだと思われる。本作はバルタン星人やカオスヘッダーやデラシオンとも分かりあった『コスモス』では珍しくサンドロスとスコーピスを絶対悪として倒している。
『コスモス』の最初の映画とTVシリーズがヒーローが敵を倒すと言う従来の構図を変えようとしたものになって、又、現実世界でもテロとの戦いによって正義や悪について議論が交わされるようになっていた中、ヒーロー作品は何をどのように描けば良いのか様々な人が様々な意見を出した事が本作を見ると感じ取る事が出来る。

 

ブルーエリアに帰って来たシャウ達はそこに生命の源が生まれていたのを見る。
今まで何度も失敗していたのにどうして?と言う疑問にムサシが答える。
「きっと……君達が大切なものを取り戻したから。そう……だから新しい生命の光が生まれた」。
因みにカットされた場面で、シャウが初めてムサシを見た場所、ツトムが結婚式を挙げた教会で、シャウがチャペルの鐘が鳴ると人間は皆幸せな顔になると呟き、ムサシが信じ合い、愛し合い、新しい命が生まれる事を教える場面があったらしい。これはシャウとムサシが信じ合い、ジーンとマリが愛し合い、やがて生命の源が生まれると言う展開に繋がるのでカットしないでほしかった。

 

スコーピスに破壊されたサイパンを元に戻すコスモス。
賛否両論あるだろうけれど子供向けの映画ならアリかなと思う。(まぁ、これが出来るならいつもやれよとツッコめてしまうのは事実だが)

 

夕暮れの中、コスモスとギャシー星人が宇宙へと帰っていくのを見送ったムサシとマリは海の彼方に緑色の光を見る。
冒頭でリタが夕暮れの水平線に緑色の光を見た恋人達は必ず幸せになれると言うグリーンフラッシュの伝説を語っていた。ブーケの件もあってムサシとマリがくっつきそうな感じではあるが二人の関係はあくまで幼馴染。二人はそれぞれ別の人生を歩むのであった。

 

本作に登場した怪獣は酉澤安施さんがデザインしたウルトラ怪獣第1号となっている。

 

新世紀ウルトラマン伝説』が同時上映された。