帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ULTRAMAN RISING』

ULTRAMAN RISING』
2024年6月14日配信
脚本 シャノン・ティンドル マーク・ヘイムズ
監督 シャノン・ティンドル
共同監督 ジョン・アオシマ

 

ULTRAMAN』に続くNetflix配信のウルトラ作品。
こちらも主人公が「ウルトラマンを継ぐ者」となっている。

 

それにしても『スター・ウォーズ』のILMが作ったウルトラ作品を見る事が出来るなんて昔の自分に言っても絶対に信じないだろうなぁ。

 

当初はウルトラ作品の予定ではなかっただけあって従来のウルトラシリーズではあまり取り上げられないものが色々あって新鮮だった。
TVのニュージェネレーションシリーズがあるのでNetflix配信の『ULTRAMAN』や本作のような異色作もやれるところがあるのかもしれない。

 

「子供は小さな怪獣」とは昔からよく言われるが実際に「小さな怪獣を子供にする」とした作品は珍しい。そもそも怪獣が出てくる作品が世の中にはそんなに多くないので、赤ちゃん怪獣が登場する本作は「ウルトラマンだから出来る話」と言う事が出来る。

 

海外制作のアニメ作品なので視聴する前はこれまでのウルトラ作品に比べてどこか遠いイメージがあったのだが実際に視聴してみると日本が舞台になっていて読売ジャイアンツ阪神タイガースと言った実在の野球チームが登場して松井や大谷と言った実在の野球選手の話題が出ているのでこれまでのウルトラ作品より身近に感じるところがあった。

 

本作では先代のウルトラマンは30年前から活動をしていたとなっている。
本作配信の30年前には何があったかなと思って調べたら『パワード』があった。劇中に登場するウルトラマンや怪獣達は『初代マン』を元にしていると思われるが『パワード』を思い出しながら見るのも面白い。目も青いし。

 

主人公のサトウ・ケンは野球選手でドジャースから日本のジャイアンツに移籍したと言う設定。ケンは変身前も変身後も「巨人」と言うのが上手い!
ウルトラシリーズで主人公が野球をしているのは『ダイナ』のアスカを思い出す。本当は心が弱いのに表向きはお調子者を演じて自分を守っているところも似ている。そう言えばアスカも「父と子」の話だった。
細かいところだが、ケンが最初の打席で左で打とうとするも左肩を怪我しているので途中から右で打つ場面があるがアスカも左でも右でも打てるっぽい。(「ウイニングショット」でヒムロと勝負しようとした時は右だったが「怪獣ゲーム」で子供達に野球を教えている時は左になっている)

 

ケンのサポートをしているスーパーコンピューターのミナは女性の声で母親代わり的な部分もある。ウルトラシリーズで近いのは『ジード』のレムであろうか。ケンとミナのお互いに引かない丁々発止なやりとりが実にアメリカ作品ぽくて笑えた。
自分は『ジード』のリクとレムや今回のケンとミナや『スパイダーマン:ホームカミング』のピーターとカレンのような少年と人工知能の女性のやりとりが好きなので途中で壊れてしまったミナにはどうにかして復活してほしかった。

 

ケンの父親であるサトウ教授は「ウルトラマンであり父親でもある」「右足を故障して杖を使っている」「海での戦いで右足を折られる」とセブンを連想させる部分があった。乗っている車も『セブン』のポインターぽかったし。

 

怪獣の赤ん坊を使って「主人公はウルトラマンに変身する前と後では姿がまるで違う」「身長2m弱の人間と身長40m級の巨人と言う全くの別物に見える存在が実は同一人物」と言うウルトラマンならではの設定を分かりやすく見せていた。

 

ウルトラマンとしての活動と人間としての仕事を両立させようとして過労になる」と言うのはウルトラシリーズでは昔からある展開だが今回はその「ウルトラマンとしての活動」を「怪獣との戦い」ではなくて「怪獣の子育て」としたのが面白かった。
怪獣との戦いも大変だがさすがに毎日24時間ぶっ続けで怪獣と戦い続ける事はそうそう無いので今回の「怪獣の子育てをしながら仕事もする」と言うケンの状況はウルトラシリーズでもトップレベルの過酷さだったと言える。

 

こういう展開の作品では赤ちゃん怪獣は非力で無害である事が多いのだがエミは小さくても怪獣で人間にとっては脅威なのがしっかり描かれていた。東京で好き勝手やっているエミをケンとミナが止められる感じが全くしなかったのでKDFの出撃も仕方が無いなと思えるところがあった。

 

KDFの隊員は怪獣によって同僚、友人、家族を失っていると言う設定。
防衛隊の過激派は過去の作品にも登場しているが『平成セブン』のカジ参謀や『コスモス』のナガレのように怪獣の被害に遭った人がいると説得力が段違いになる。
KDF長官のオンダ博士は家族の力を知っているからこそ疲れている部下に家族との時間を勧め、最後は家族がいる部下の命を守る事を選択した。一方で自分の家族を失った事で怪獣の家族を利用して怪獣を殺せるようになり、最後は家族がいない自分の命を捨てる決断が出来てしまった。
立ち位置としてはオンダ博士率いるKDFは悪役になるのだが、「家族」と言う存在によるメリットとデメリットは実はケン達とあまり変わっていないので、やろうと思えばオンダ博士を主人公にしても成り立つ話になっている。

 

エミの子育てが上手くいくようになっていくとケンの他人との接し方も変わっていって野球の状況も好転すると言う流れはベタだけれどやっぱり良かった。
エミが父親であるケンの真似をしようと野球の動きをするようになって、それを見たケンがエミに野球を教えるようになって、それが最終的にケンが野球のチームメイトにアドバイスをするようになってチームの優勝に繋がると「主人公が野球選手」「主人公が子育てをする」と言う一見すると両極端な設定が上手く繋がっていた。(さらにここから野球の思い出を使ってケンとサトウ教授の親子の和解がされて親子ウルトラマンの共闘へと繋がる)

 

カラータイマーの点滅を精神的なものにしたのはなるほどと思った。
これまでの作品でもそういう感じの展開は何度かあったが明確にカラータイマーの点滅はウルトラマンの精神に依っているとしたのは今回が初めてかな?

 

変身前の人間が年を取ると変身後のウルトラマンの姿も変わるのは今までに無い設定であった。
初代マンやパワードのような宇宙人との融合タイプではなく今回は人間が特殊な力でウルトラマンに変身していると思われるので変身前の姿に変身後の姿が引っ張られると言うのはなるほどであった。

 

クライマックスでの親子二人でのスペシウム光線は燃える展開であった。
今回は子育ての話なのでウルトラマンの戦いは少なめなのだが最終決戦で一気に盛り込んできた。

 

2時間と言う限られた時間に多くのキャラクターを出しているが全てが「親子」のテーマを持っているので理解しやすかった。
こういう作品では過激派の軍隊は否定的に描かれる事が多いが本作ではケンがエミを守ろうとするのもKDFが怪獣に容赦が無いのも理解出来るとどちらも完全に否定されない流れになっていた。
悪人を登場させずに「家族を守る」「家族を傷付けようとする存在とは戦う」で対立構図を作ったのは良かったが、その結果、オンダ博士が倒されて良かった良かったとならなかったので最終決戦に乗り切れない視聴者もいたかもしれない。

 

海外作品とは思えないくらいに日本のウルトラ関係の小ネタがあって驚いた。
自分はオタクなので小ネタ探しは楽しいのだが一方で「この世界のウルトラマンはどういう扱いになっているんだ?」と疑問に思うところもあった。同じく小ネタ満載だった『ゼアス』で真面目に考察しようとしたら小ネタのせいでこの世界の設定が分からなくなってしまうのに近いかな。特に今回は小ネタは多いのにウルトラマンや怪獣についての説明が少ないので「親子」と言うテーマに注目して見ると楽しめるが設定を気にしてしまうと色々引っかかってしまう部分があったと思う。(この辺りは同じアメリカ作品の『USA』に近いかな?)

 

 


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