帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「未来へ駆ける円孤」

「未来へ駆ける円孤」
ウルトラマンアーク』第1話
2024年7月6日放送(第1話)
脚本 継田淳
監督 辻本貴則

 

宇宙獣ディゲロス
身長 56m
体重 2万2千t
3ヶ月前に謎の巨人と戦った正体不明の怪獣。
謎の巨人は他にもゴモラレッドキングと戦っていた。

 

宇宙寄生生物ウーズ
身長 30cm~30m
体重 2kg~20t
16年前から星元市に突き刺さっている宇宙怪獣の角(モノホーン)の中から現れた。
宇宙怪獣に寄生して飛来すると宿主を変えながら栄養源の炭酸カルシウムを摂取する。
分泌するホルモンで宿主を急激に成長させる事が出来る。
宿主の死と共に仮死状態になって身を守る特性があり、モノホーンの中で16年に亘って眠っていた。復活してモノホーンから出るとシャゴンに寄生して体内で増殖する。シャゴンが倒されるとシャゴンの体内から現れてアークに襲いかかるがアークアイソードで倒され、残された増殖体も母体と共に死滅した。

 

鎧甲殻獣シャゴン
身長 5~54m
体重 3~4万7千t
獰猛な性格で、普段は地中に生息しているが時折地上に現れて人間や家畜を襲う。
肉食だったがウーズに寄生されて炭酸カルシウムを有している物を食べるようになる。
首を伸ばして口から強酸を吐く。甲殻の発光部分から発する閃光で相手の目を潰す。背中の甲殻から無数の光刃を放つ。
最後はアークのアークファイナライズで倒された。

 

物語
星元市に16年前から突き刺さっているモノホーンから宇宙寄生生物ウーズが現れる。
怪獣防災科学調査所SKIPは地球防衛隊・宇宙科学局から派遣された石堂シュウと共に事件に対処する事になる。

 

感想
第1話なのに主人公ヒーローの初変身ではないと言うウルトラシリーズでは珍しい作り。
既に3ヶ月に亘って地球で戦っている設定なのでウルトラマンに関する描写は抑えめにされて、その分の時間を世界観の説明、重要人物である石堂シュウの登場、今回のメイン怪獣であるウーズとシャゴンの描写等に回している。
ウルトラシリーズに限らずヒーロー作品は説明しなければいけない特殊な設定が多いのでどうしても第1話は情報を詰め込みすぎるところがあるのだが、『アーク』はウルトラマンに関する説明を第3話に回した事で第1話でありながら情報がギュウギュウに詰め込まれていない見やすい内容となっていた。
一見するとかなり異色な作りに思えるが、振り返ってみたら『セブン』も主人公ヒーローが初めて地球に来た時の話が語られるのは第1話ではなかったし、近年でも『ブレーザー』等は主人公ヒーローの初変身は第1話だが主人公ヒーローに関する詳細な説明が語られるのは第2話以降だったので、「第1話で主人公ヒーローの初変身や説明をしない」と言う『アーク』の作りは驚きではあったがこれまでのウルトラシリーズから大きく逸脱したものではなかったと言える。

 

謎の巨人や怪獣事件について語るレポーターの乾あかりは今後も準レギュラーで出続ける事になる。
残念ながらメイン回は無かったが、「『アーク』はどんな作品だった?」と考えた時に彼女が現場からレポートする場面が思い浮かぶくらいに自分にとって記憶に残る人物であった。

 

アバンタイトルは「ウルトラマンと怪獣の戦い」「地球の現状」「主人公である飛世ユウマのキャラクター」「ユウマとK-DAYやアークとの繋がり」「舞台となる星元市の雰囲気」と言った『アーク』の大事な要素が分かりやすく見せられていてウルトラシリーズの中でも上位に入る完成度だった。

 

オープニング曲はaccessの『arc jump'n to the sky』。
『アーク』はオープニングでその回の本編の一部が流れるのが面白かった。
実は自分は『コスモス』のアバンタイトルで本編のハイライトが流れるのが結構好きだったのだが、この作りだと本編の時間が削られてしまうので他の作品ではあまり見られないだろうなぁと思っていたので、『アーク』でオープニングの間奏部分に本編のハイライトを差し込んだのは「その手があったか!」と思わず唸った。

 

怪獣防災科学調査所SKIPは怪獣災害の調査や分析や予防を専門とした国立研究開発法人と言う設定。これまでのウルトラシリーズでも主人公チームとは別に怪獣の調査や住民の避難誘導を行う組織やチームが出ていたが今回はそれをメインに据えた形となっている。
SKIPはウルトラシリーズの特別チームでは珍しく戦闘機等の大型火力を有していない組織であるが、「怪獣を攻撃する」と言う選択肢が無くなった事でこれまでの特別チームより調査の場面に時間をかけられるようになったところがある。
敵キャラクターの生態を詳しく調査するのは同じヒーロー作品でも仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズではあまり見られないもので、調査がメインであるSKIPの設定は実にウルトラシリーズらしいものであると言える。

 

SKIPの星元市分所で活動するユピーは自立AI搭載型のサポートロボットと言う設定。
ぶっちゃけると放送が始まる前は「スーパー戦隊シリーズならともかくウルトラシリーズでこういうキャラクターをちゃんと扱えるのかなぁ……?」と不安を抱いていたのだが、実際に見たら特殊な装備を持てないSKIPの中で普通の人間では行く事が難しい場所に行って調査したりしていてかなり役に立っていた。そりゃ「ユピーにおまかせ!」が決め台詞になるよなぁと納得できるほどに万能で頼れる存在であった。

 

ユピーの正式名称は「ユピーザロボット」らしい。
おそらく『禁断の惑星』の「ロビー・ザ・ロボット」が元ネタだと思われる。

 

『アーク』は昭和のウルトラシリーズのようにCM前にアイキャッチがある。
配信等でTVドラマを見るとCMがカットされた事で本来なら繋がっていない場面が連続して映し出されて変な感じになる事があるので、アイキャッチを入れてそういう違和感が生まれないようになるのは自分にはかなりありがたい。(CM前の場面をCM開けにもう一度繰り返す構成にした事でCMがカットされる配信等では同じ場面が二回続けて流れる形になるのが個人的にはかなり嫌だったので)

 

「コーヒーの無い職場が存在するとは……!」。
SKIPにコーヒーが全く無い事を知った時の石堂さんの反応はかなり大げさではあるが、コーヒーが全く無い職場と言うのは確かに珍しいかも。SKIPにコーヒーが嫌いな人がいるわけでもないのにどうして全く無かったのだろう?

 

怪獣のデータは全研究機関で共有されているはずなのだが宇宙絡みの案件は防衛隊の情報管理が厳しくて全てのデータが公開されているわけではなかった。
リンさんが「協力体制は取っていても防衛隊とSKIPの間には高くて厚い壁がある」と説明していたので今後はSKIPと防衛隊の間で色々と揉め事が起きるのかと思ったがそういう展開はあまり無かった。そういう組織のしがらみやらは前作の『ブレーザー』で色々描かれたので今作でも続けてする必要は無いと判断されたのかもしれない。

 

SKIPの設定を聞いた時は『アーク』では戦闘機や戦車の出番は少ないかなと思ったのだが予想以上にガッツリと出番があって驚いた。
よく考えたら『アーク』の防衛隊はウルトラマンが現れる数年前から怪獣災害に対処していたので、街を破壊する怪獣が現れたら直ちに大規模な戦力が投入される形が出来上がっているのは納得である。

 

ウルトラシリーズの主人公は作中に登場するチームの中で一番新しい人である事が多いのだが、『アーク』ではSKIPに関わる最も新しい人物は主人公のユウマではなく宇宙科学局から派遣された石堂さんとなっている。
他にも主人公に向かって行われる事が多いチームメンバーの紹介が石堂さんに向かって行われたり、怪獣が破壊した建物の瓦礫から人を庇って下敷きになったりと主人公のユウマではなく石堂さんがウルトラシリーズの主人公がよくやる展開を担当していた。
もし、アークがユウマと一心同体になっていなかったら、今回の話でユウマを助けて瓦礫の下敷きになった石堂さんの行動に感動して一心同体になっていてもおかしくはない感じになっていた。

 

ウルトラシリーズに限らずヒーロー作品では「変身道具を普段はどこに収納するのか?」と言う問題があるが『アーク』ではユウマの中からアークアライザーが出現する形になっている。
『アーク』は想像力で何かを生み出したり編み出したりするのが重要な鍵となっているのでユウマの中から変身道具が出てくるのはテーマに合致していたと思う。

 

アークとシャゴンの長回しの戦いは様々なアイデアが盛り込まれていてレベルが高いものであった。
今回は画面の右上にウルトラマンが登場してからの時間が表示されているので「3分って思った以上にあっという間だなぁ」「3分ってこんなに色々盛り込めるほど長かったの!?」と言う相反する気持ちが同時に湧き出る事になった。

 

「ユウマ、想像力を解き放て……!」と言うアークの言葉を聞いてどんな事を考えつくのだろうかと思って見ていたら「バリアーを割って怪獣に突き刺す!」と言うまさかすぎる展開で驚いた。
ウルトラシリーズを長く見てきて大体の事は予想が出来るようになったかなぁと思っていたのだが、どうやら自分はまだまだ想像力が足りないようだ。

 

途中までは石堂さんがウルトラシリーズの主人公ムーブを担当していたのだがウルトラマンの登場後はきっちりと主人公のユウマが「おーい!」等と言った主人公ムーブを担当するようになって、逆に石堂さんはウルトラマンの戦いを近くで見て「いつかウルトラマンにお礼を言わなくては」と決意するウルトラシリーズの主人公の相棒やヒロインがよくする言動を担当するようになった。

 

「美しい円孤(アーク)だ……」と謎の巨人ウルトラマンに「アーク」と言う名前を付ける石堂さん。
本編だけでも普段は出来る限りポーカーフェイスに徹している石堂さんが胸の高まりを抑えられていないのが分かるがX(旧Twitter)で公開された「石堂シュウの日記」を読むと思った以上に石堂さんがウルトラマンアークとの出会いに脳を焼かれていた事が分かる。

 

ウルトラマンが飛び立つ時の虹色の円孤を見て「アーク」と言う名前を出す石堂さんはセンスが良いなぁと思ったが、X(旧Twitter)で公開された「おしえてツッピー!」を読むとアークの技である「アークメガパンチ」「アークギガバリヤー」「アークテラショット」「アークエクサスラッシュ」も石堂さんがユウマと相談して付けた名前らしい。技名に関しては意外とストレートなネーミングであった。

 

エンディング曲はARCANA PROJECTの『メラメラ』。
エンディング映像は「SKIPの扉を開けたらユピーが今回の話をダイジェストで見せてくれた」と言う形になっている。

 

『アーク』はウルトラマンのシンプルなデザインや『帰マン』を思わせるアイキャッチ等と言った昭和の懐かしい要素とSKIPの設定や石堂さんのキャラクターや目新しい演出と言った令和ならではの要素が上手く融合した作品となっていた。

 

今回登場したシャゴンのデザインは坂本トシミさんが担当している。
昭和怪獣っぽい下半身と平成以降の怪獣っぽい上半身が上手く融合している実に『アーク』らしいデザインになっていたと思う。

 

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