「さよなら、リン」
『ウルトラマンアーク』第9話
2024年9月7日放送(第9話)
脚本 根元歳三
監督 湯浅弘章
特技監督 内田直之
透明怪獣ネロンガ
身長 45m
体重 4万t
普段は透明だが電気を吸収すると姿を現す。
ユーに誘導されて近付いた電線から体内の蓄電器官が耐えられる限界以上の電圧で電気を与えられて過充電となって倒れた。
実は仮死状態になって危険が去るのを待っていて、SKIPの分析斑がいなくなったら活動を再開させた。
実はパゴスに追われて地上に現れていた。
アークが出現した後はパゴスよりアークを狙うようになるが、暴君電撃をソリスアーマーで防がれ、最後はパゴスと一緒にルーナソードクレセントで倒された。
地底怪獣パゴス
身長 30m
体重 2万t
ネロンガが活動を再開させると金色の虹と共に地上に現れた。
アークが出現した後はネロンガよりアークを狙うようになるが、分子構造破壊光線をソリスアーマーで防がれ、最後はネロンガと一緒にルーナソードクレセントで倒された。
物語
怪獣の細胞が横流しされているとして防衛隊はSKIP本部の管理責任者である山神を疑う。
山神の教え子でSKIPに入る時に推薦をしてもらったリンは防衛隊から調査の協力を求められる。
感想
「レギュラーメンバーの恩師で怪獣に関わる人物が登場する」と言う部分は「峠の海」と同じだが今回は結末が真逆になっている。どちらも脚本が根元さんなので、あえて対になる話にしたのかもしれない。
冒頭のネロンガ戦でネロンガの蓄電器官が耐えられる限界以上の電圧を可能にしたのは「ただいま怪獣追跡チュウ」に登場したカワミ重工のダイモードであった。
いきなり新兵器が登場するのではなく、以前に登場したものを上手く再利用したのが良かった。
今回はアークが登場する前にネロンガを戦闘不能にする事が出来たので防衛隊とSKIPは久し振りに完璧な怪獣の標本を入手する事が出来た。
山神さんによると最近はアークが光線技で爆破してしまうので怪獣の標本を入手できなかったとの事。確かに『アーク』の地球の現在の人間の科学力では巨大な怪獣を木っ端微塵に爆破する事は難しい。
「ウルトラマンが出現して光線技で怪獣を爆破するようになったので人間は怪獣の標本を入手して研究をする事が難しくなった」。「峠の海」では「怪獣が出現するようになって世界の何が変わったか」について、「あけぼの荘へようこそ」では「宇宙人が公の存在になって世界の何が変わったか」について語られたが、今回の話では「ウルトラマンが出現して人間の代わりに怪獣を倒すようになった事で世界の何が変わったか」について語られた。
海外で怪獣の細胞の違法な売買が行われていると言う話が出る。
富裕層の中には怪獣の細胞をコレクションにしている人もいるらしい。
まぁ、珍しい生物の細胞を欲しがる人は出てくるだろうなぁ。
『アーク』はウルトラシリーズの中でも軍関係の話が薄めの作品で、「人間が怪獣の細胞を入手する」と言う話も他の作品だったら「怪獣の細胞を使って強力な兵器を作る」と言う展開になりそうだが、今回の話ではそういう展開は無くて個人のコレクターやらエネルギー問題やらに留められている。
シャゴンは日本固有の怪獣との事。
ニュージェネレーションシリーズは製作の都合で新規の怪獣の数が限られていて同じ怪獣があちらこちらで何度も再登場する事があるので今回のシャゴンのように活動地域が限られているのは珍しい。
日本固有の怪獣であるシャゴンの細胞が海外で押収されたのを受けて防衛隊の情報部はSKIP本部の人間が売買に関わっていると考える。
防衛隊とSKIPは別の組織なので、前作の『ブレーザー』だと色々と面倒臭い事になりそうだが、『アーク』ではそういう組織の問題はあまり取り上げられず、今回も防衛隊とSKIPが協力して調査をしている。
以前に採取された細胞からネロンガ、ガボラ、パゴス、マグラの四種類の怪獣は祖先が共通なのではないかと言う説が出る。もちろんこれは『Q』から『初代マン』にかけての着ぐるみの改造遍歴が元ネタ。
山神さんは怪獣の力を活用できたら環境に配慮したより良い社会が出来ると考えていた。確かに石炭や石油やウランやプルトニウムを使わないで大きな電力を生み出せたらメリットは大きいであろう。
しかし、この直前に伴所長が語ったように怪獣には未知の部分が多くて細胞レベルでも扱い次第では環境や生態系にどんな影響を与えるか分からないと言う危険を孕んでいる。
今回の話は山神さんとリンさんの間に単なる先生と教え子とは違った雰囲気を感じるが実際には二人の間には何も無かったと思われる。
リンは山神に対して恩師だけでなく恋愛感情も抱いていたと思われるが、一方の山神はリンに対して自分に懐いている教え子以上の感情は無かったと思われる。
どうしてそう思ったかだが、今回の話をリンから見た場合、山神をリンと同じ性別=女性の先生にしたら成り立たないところがいくつかあるのだが、今回の話を山神から見た場合、リンを山神と同じ性別=男子の生徒にしても支障が無い。ぶっちゃけると、今回の話を山神から見た場合、教え子をリンからユウマに変えても山神の言動は殆ど変わらなかったと思われる。(おそらく変わったのはラストシーンでリンが自分にどのような感情を抱いていたのか知った瞬間の反応だけだと思う)
将来の進路に迷っていた高校時代のリンさんの背中を押したのは山神さんの「好きな事を続けるのが一番」と言う言葉だったのだが、山神さんは好きな事を続けた結果、リンさんが大学へSKIPへと山神さんを追いかけていっても、その山神さんは大学からSKIPへと移り、そこで怪獣の細胞の売買に手を染めて……とその度に遠くへ行ってしまった。
「皆、怪獣を倒す事ばかり考えている」と言う言葉は「満月の応え」に登場した精霊と同じだが、精霊と違って山神さんは怪獣の力を人間が活用すると言う「人間の都合」から怪獣を倒さない事を訴えている。
アークに怪獣を倒してもらったら人間が受ける被害は少なくて済むが、それでは怪獣を研究してその力を人間社会に役立てる事が出来ない。
そう考えると山神さんが今を犠牲にしてでも未来の為に怪獣の研究を進めるべきだと訴えるのも分からなくはないのだが、それは「たまたま防衛隊やアークが怪獣を倒す事が出来ている」と言う状況だから言える事で、もし防衛隊やアークが敗れて多少では済まされない規模の怪獣災害が起きてしまったらと考えると、今はまだ怪獣の研究よりも確実に怪獣を倒す事が選択されるのも仕方が無いのかもしれない。
どうしてアークはソリスアーマーを解除してから決着の一撃の放ったのかな?と疑問に思って調べてみたら、どうやらソリスアーマーには飛行能力が無いらしい。
「ソリスアーマーは接近戦が得意で防御力が高い」「ルーナアーマーは空中戦が得意で移動速度が速い」は劇中の描写だけでも分かったが「ソリスアーマーは飛べない」は設定を読まないと分からないかな。
ソリスアーマーになった為に空を飛べなくて危機に陥ると言う展開があったら分かりやすいかもしれないが、その時は今回のようにすぐにソリスアーマーを解除して飛べば良いので、「ソリスアーマーは飛べない」と言う弱点を劇中で表現するのは難しかったのかもしれない。
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— ウルトラマンアーク THE MOVIE/ジェネスタ公式 (@ultraman_series) 2024年7月30日
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今週は・・
「ウルトラマンアーク ソリスアーマー」
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どうしてラストシーンでリンさんを励ます役がユピーだったのかだが、これはリンさんがユピーの開発を立ち上げから担当していると言う設定があるから。
劇中でも高校生時代のリンさんが機械工学やプログラミングが好きでロボット工学の道に進むかどうか考えていると言う話があるので推測は十分に出来るのだが、劇中でハッキリと説明してくれた方がラストシーンが分かりやすくて良かったかなと思う。
ー #石堂シュウの日記📔 ー
— ウルトラマンアーク THE MOVIE/ジェネスタ公式 (@ultraman_series) 2024年9月12日
今週もシュウの日記を
覗いてみましょう〜🔍
夕日に佇むアーク、
たしかに少し憂いているような
悲しそうな雰囲気でしたよね🤔
来週もお楽しみに!#ウルトラマンアーク pic.twitter.com/Z6GZbV7MFl
リンさんがユピーを作ったと言う事は「リンさんはユピーの親」と言えるのかもしれない。ひょっとしたら、親になった山神さんと対になっているのかもしれない。
ラストシーンで傷心のリンさんを必死に慰めようとしているユピーを見ると、山神さんにもこういう子供がいるんだよなぁとなって、山神さんが逮捕されて子供はこれからどうなるのかと言う事を想像すると暗い気持ちになってしまう……。
こうして見ると山神さんって自分の家族の今や明日についての想像力がちょっと欠けていた人だったよなぁ……。
今回の話は湯浅弘章さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。