帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「さまよえる未来」

「さまよえる未来」
ウルトラマンアーク』第15話
2024年10月19日放送(第15話)
脚本 継田淳
監督 辻本貴則

 

宇宙獣ザディーメ
身長 66m
体重 6万t
星元市の狐ヶ森に現れたオニキスの封印を解く為に再び現れる。
セラクトーンの他にも両手からの光線と背中からの光刃を駆使して戦う。
アークを追いつめるが最後はオニキスの力でギャラクシーアーマーを手に入れたアークのギャラクサーファイナライズで倒された。

 

物語
星元市に現れた「オニキス」について石堂は防衛隊の機密事項をSKIPに明かす。
一方、スイードはルティオンがユウマに話さなかったある事について暴露する。
全てが明かされる中、ユウマとアークは新たな力を手に入れる!

 

感想
これまでの『アーク』は縦軸の話があまり無かったように思えたが実は色々な話が色々なところで繋がっていた事が判明する。
ゼ・ズーが派遣した宇宙獣はモノゲロスとディゲロスとザディーメだけであるが、モノゲロスに寄生していた事でウーズが地球に運ばれてしまったし、ネズドロンやリヴィジラやホムガー等が星元市に現れたのもオニキスが原因だったと思われるし、ゼ・ズー ゲートが開かなければヌマタさんが地球に取り残される事は無かったし、フィオの星と地球が交信してノイズラーが地球に辿り着いたのもオニキスが関係していたし、ギヴァスが地球に探しに来た新しい月もオニキスの事だったし、直接関係は無いがリオドが目覚める事になったのもオニキスによって星元市の怪獣出現数が急上昇したので森を開発してマンションを建設しなければいけなくなったからだしと『アーク』で起きた事件の殆どがゼ・ズーがゼ・ズーゲートを使用した結果であった。

 

オニキスを危険視した防衛隊がパニックを避ける為にオニキスに関する情報を統制していた事を知ったリンさんは「市民の安全の為には情報の共有こそが大事」と反論する。
ここからSKIPと防衛隊の対立が始まるかと思われたが、オニキスの爆発が超新星破壊に匹敵して地球がまるごと吹き飛ぶレベルであった事が判明して、さすがに防衛隊の対応を批判する状況ではなくなる。
どこにも逃げ場が無い状況でオニキスの情報を市民に明かすのはさすがに厳しい。何か解決方法があればパニックにならないよう市民を説得する事が出来たかもしれないが、防衛隊は解決方法どころかオニキスの場所すら把握できていなかったわけだし。
自分達の住んでいる星が消滅する恐怖を考えるとゼ・ズーやスイードがゼ・ズー ゲートの使用を強引にでも進めようとしたのも理解できる。せっかく自分達の星の滅亡を回避できる方法を見付けられたのに「見知らぬ星の人達を犠牲には出来ないから時間が無いけれど別の方法を考えよう」と言われたら「それで間に合わなくなったらどうするんだ?」と不満を抱くのも無理は無い。見知らぬ星の人達を犠牲にするのは後ろめたいかもしれないが、自分達が確実に今すぐ助かる方法をそう簡単には捨てられない。

 

石堂さんの説明で過去に現れた怪獣達が紹介される。
自由の女神の前に現れるタッコングは『帰マン』第1話の怪獣、湖に現れたエレキングは『セブン』制作第1話の怪獣、ピサの斜塔に現れたベムスターは『帰マン』初の宇宙怪獣でペギラ成田亨さんと高山良策さんのコンビが手掛けたウルトラ怪獣第1号……と言いたいところだが、ピサの斜塔に現れた怪獣は耳があるのでペギラではなくてチャンドラーであった。

 

今回の前後編のキーマンであるゼ・ズーの腹心スイード
ルティオンもスイードも「使命の為に自分の身を差し出す」と言う覚悟は同じだが、ルティオンが「自分達の銀河を救う為に他の星を犠牲にする事は出来ない」とするのに対してスイードは「自分達の銀河を救う為に他の星は犠牲になっても構わない」としている。

 

仮面なので表情が動かないルティオンと違って佐藤江梨子さんが演じるスイードは表情豊かで感情も分かりやすくて動きも色々あってと主人公ヒーローのアークやユウマより人間味を感じるのが面白い。
強大な敵なのだが一方でユピーに見付かってビックリしたりとなんだか憎めない人物であった。

 

オニキスに防衛隊が近付く事も出来なかったりと全体的にゼ・ズーやスイード達の能力は地球人を上回っていたのだが一方で姿を消したスイードがユピーに見付かってビックリする場面もある。
「何だ!? こいつは!?」と言って最後まで自分がユピーに見付かった理由が分からなかった感じなので、ユピーの能力はスイードの考えを超えたものであった可能性がある。ひょっとしたら、ある分野においては地球の技術はゼ・ズー達を超えているのかもしれない。もしそうなら地球人達の知恵も使えたらルティオン達の銀河の危機を救う方法が生み出されていた可能性もあったかもしれない。

 

アークはスイードを倒しても地球の破滅は回避できないと知ったユウマが絶望して二人の心が引き離されて戦えなくなってしまう事を怖れていた。実際にスイードの話を聞いたユウマは一瞬諦めかけていたのだが、それでもウルトラマンが一体化した地球人を信じ切れなかったと言うのは驚きであった。
アークは16年に亘ってユウマを見てきたわけだが、その間のユウマが常に強くて前向きだったとは限らない。ユウマをずっと見てきて彼の弱さも知っているからこそ、アークはユウマがスイードの話を聞いて絶望する事を怖れたのであろう。
思えば『帰マン』や『コスモス』や『タイガ』等ではウルトラマン達は最初に郷秀樹やムサシやヒロユキ達の凄さを見てから一体化しているのだが、アークは戦いに巻き込んでしまったユウマを助ける為に一体化しているので、他のウルトラマン達と違って一体化した理由に「ユウマの強さ」は無かった。だからこそ、変身の際にアークはユウマを守るようにしているのかもしれない。今回はそのアークの「ユウマを保護しようとする気持ち」が悪い方に出てしまったと言える。

 

多くのウルトラマン達と違ってアークは「主人公の勇気に感動した」が戦う理由ではなかった。アークは戦いに巻き込んでユウマの両親を死なせてしまった事を後悔し、その贖罪の意味もあってユウマと一体化して彼の命を救った。その後、アークはユウマを通じて地球人を知って地球人を愛しく大切に思うようになっていく。そして、ユウマが持っていた未来を思う想像力で新たな力と姿を得たアークは「ユウマが守りたいものは自分が守りたいもの」と自分とユウマが一つである事を宣言する。
多くのウルトラマン達が「主人公の勇気ある行動に感動する」と言う一瞬だが大きなインパクトを受けて地球人と共に戦う事を決める中、アークはじっくりと時間をかけて地球人と共に戦う事を決めていった。

 

こう考えるとユウマとアークの関係はウルトラシリーズの中でも実はかなり特殊なものなのかもしれない。

 

これまではアークがユウマに「想像力を解き放て」と言っていたが今回はユウマがアークに「想像力を解き放て」と言って、その言葉を聞いたアークはオニキスを新たなアークキューブにしてギャラクシーアーマーを生み出す。
この場面はアークがユウマの影響を受けて変わった事をハッキリと示していて良かった。当初はユウマを「保護するもの」と見ていたアークが様々な出来事を経て今はユウマを「自分と対等の存在」と見るようになった事が分かる。

 

イードとザディーメはルティオンを後一歩まで追いつめたがユウマやユピーや石堂さんと言った地球人の協力によって形勢を逆転されてしまう。
時系列が明らかになっていないのでここからは想像になるが、ルティオンが地球人と協力関係を結んだ事でより強力になったのを受けてゼ・ズーもレポ星人と言う別の星の住民と協力関係を結んだのかな?

 

ギャラクシーアーマー登場!
ソリスアーマーがパワー系で、ルーナアーマーがスピード系で、今回から登場したギャラクシーアーマーは超能力系となっている。こうして見ると『ティガ』『ダイナ』のタイプチェンジをモデルにしているのかな?
ギャラクシーアーマーはゼ・ズー ゲートの力を有しているのでワームホールを使って時空を移動する事が出来る。『ドラゴンボール』のセルゲームで孫悟空がセル相手に使用した「瞬間移動かめはめ波」みたいな事が出来る能力と考えると凄さが分かる。ただ、『ドラゴンボール』はセル相手だと瞬間移動を使わないと不意を突けなかったのだが、『アーク』ではルーナアーマーのスピードを上回る敵があまりいないので、ルーナアーマーの超スピードを駆使したら今回のギャラクシーアーマーと似たレベルの攻撃は出来そうな感じはする。この辺りは漫画やアニメと実写の表現の違いが出ちゃったかなと思う。

 

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