帰ってきたウルトラ38番目の弟

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「白い仮面の男」

ウルトラマンアーク

「白い仮面の男」
『ウルトラマンアーク』第22話
2024年12月14日放送（第22話）
脚本　本田雅也
監督　越知靖

 

楽園夢想人白い仮面の男
身長　175cm
体重　65kg
楽園を夢見るただの男。
長年にわたって人類の歴史における「楽園」について研究をしていて、かつて地上に存在した楽園の一部を発見して「柱」と名付けると、古代の人々がしていたように柱を使って人々の心の憂いを消していって完璧な楽園を築こうとした。
名前も顔も捨てて楽園に身を委ねていて、白い仮面の下には既に人間の顔は無く、いずれ柱の一部になると語っていた。

 

楽園夢想遺構柱
身長　40m
体重　8万4千t
白い仮面の男が発見した楽園の出土品。
その存在を知るものにしか見る事が出来ない。
「不安」や「苦しみ」と言った心の憂いを吸収する力がある。
アークのアークファイナライズを受けて爆散すると世界は色と記憶を取り戻した。
因みに柱と白い仮面の男の仮面のデザインは越監督が担当している。

 

物語
怪獣が出ない日々が続くSKIP。
平穏な日々で気が抜けてきたのか、星元市の皆はちょっと忘れっぽくなっていた。
そんなある日、ユウマ達はSKIPが無くなった事に気付いて……。

 

感想
ニュージェネレーションシリーズでは珍しい作りの回で、どちらかと言うと『Qdf』や『ネオ・Q』にありそうな話。
昔からウルトラシリーズはこういう異色回が何度か作られている。ニュージェネレーションシリーズは全2クールなので、こういう話が差し込まれる事は無いかなと諦めていたので作ってくれて嬉しかった。

 

平穏な日常が異常な世界に少しずつ変わっていく。
「忘れる」のではなく「存在そのものが消える」。
世界の仕組みそのものが変えられてしまう展開はウルトラの異色回らしい。
そんな非日常的な異常をリンさんの「空き地になる前はどんな建物があったのか思い出せない」と言う誰もが経験する日常のものに落とし込むセンスが見事だった。

 

白い仮面の男の目的は「怪獣についてのあらゆる記憶や物事を削り取る事で、やがて怪獣が存在したと言う事実そのものを消し去る」であった。
人間が怪獣の事を忘れても怪獣は変わらず存在し続けるのではないかと思ったが、『アーク』は「想像力」が一つの鍵になっていて、想像力によって色々なものが生み出されている。それはつまり「人間の心が存在を生み出している」と言う事で、今回はそれを逆にして「人間の心は存在を消し去る事が出来る」とした。
今回は一見すると異色回であるが実は「想像力」がテーマである『アーク』で「人間が想像する事や考える事をやめたら世界はどうなるのか？」と言う事を取り上げた非常に大事な話であった。

 

『アーク』の地球ではアークは「怪獣を倒してくれる存在」として多くの人に認識されているので、アークが地球に存在し続ける事で人々は怪獣の事も思い出し続ける事になる。だから、白い仮面の男はユウマにアークとの関係を絶つように告げる事になる。
もし「アークがいなくなれば怪獣は出なくなる」と言う話だけだったらアークもユウマも白い仮面の男の提案を受け入れる可能性があったかもしれないが、白い仮面の男と柱は「怪獣が存在していた世界を怪獣が存在しない世界に変える」として、これまでの地球の歴史や人々の人生を歪めてしまった。これは怪獣と同じ「破壊行為」であり宇宙人と同じ「侵略行為」である。だから、最終的に柱はアークによって倒される事になる。

 

シュウさんの腕の傷等についての詳細は劇場版の『光と闇のアーク』で語られる事になる。

 

今回の話は子供達のトラウマになりそうなホラーな雰囲気であったが、見返してみると肉体が切断されたり血が流れたりするような場面は無く、むしろ「喫茶店を開いている伴所長」「空き地にユウマ一人だけがいる」「ユウマの足下の道路に水が流れる」等と言ったその場面だけを切り取って見たら意外と怖くない場面が多かったりする。しかし、それら一見すると普通の場面が話の流れで異常な感じに見えてしまうように作られていた。
人は生きていくと「世界とはこういうものだ」と言う事を段々覚えて理解していく。世界のパターンや流れが分かっていくわけだが、今回は我々が「こういうものだ」と思っていた世界のパターンや流れがどんどん崩されていった。「怪獣作品とはこういうもの」としてある程度のパターンや流れが分かる怪獣による街の破壊シーンより今回の白い仮面の男と柱によって行われた「こういうものだ」と人々が思っている世界のパターンや流れが破壊される方が我々の心をざわつかせる事となった。

 

 

imagination.m-78.jp