「厄災三たび」
『ウルトラマンアーク』第23話
2024年12月21日放送(第23話)
脚本 足木淳一郎
監督 越知靖
ビオルノ
身長 不明
体重 不明
ルティオンと志を同じくする者。
恒星ソニアの膨張を食い止める糸口が見付かった事とゼ・ズーがゼ・ズー ゲートの使用を強行しようとしている事をユウマに告げる。
宇宙獣トリゲロス
身長 59m
体重 2万3千t
ゼ・ズーが新たに送り込んできた宇宙獣。
「三本角のディゲロス」から「トリゲロス」と名付けられた。
ゼ・ズー ゲートを見付け出す能力を持っていて、ユウマの中にある事を突き止める。
アークを倒す為に存在していて、アークの攻撃に完全に対応する事が出来て、アークアーマーと互角の能力を持つ半月状の物体「トリゲロスフープ」を駆使する。
頭部から強力な破壊光線を撃ち、両腕から光の刃を出して戦う。
一度はアークを磔にする事に成功するが防衛隊の援護を受けたアークの反撃を受け、最後はアークファイナライズを受けて大爆発を起こした。
名前の由来はギリシャ語で数字の「3」である「トリ」から。
物語
ディゲロスが現れた時と同じ陽炎が星元市の上空に再び現れる。
ルティオンの同志であるビオルノからゼ・ズー ゲートに関する現状を聞いたユウマはトリゲロスとの決戦に向かうが……。
感想
最終章突入であるが、『アーク』は第24話と第25話で精神的な話が多くなる為か、第23話である今回の話で従来のウルトラシリーズだと最終回になりそうな総力戦を展開している。
最終章突入と共にユウマの体調が悪くなる。最終章で主人公の体調が悪化するのは『セブン』の頃からのウルトラシリーズの伝統。
体調が悪くても仕事を続けようとするユウマに向かってリンさんは「厳しい言い方になるかもだけど、現場で倒れられるくらいなら来てくれない方が良いかな」と告げる。体調不良の主人公が無理をして事態が悪化するのも『セブン』であったのでリンさんの判断は正しい。
全体的に『アーク』はブラック企業的なところは外そうとしている作品なので、ここでSKIPがユウマに無理をさせなかったのは自然な流れだったと思う。細かい部分ではあるが、こういうところで『アーク』は昭和や平成とは違った「令和ならでは」な作品を作ろうとしているのかなと感じる。(自分の意思でとは言えシュウさんやユウマが職場で徹夜をしてしまう場面があるので完全にブラック企業的なところを外せているわけではないが)
ルティオンの仲間であるビオルノはユピーの電子頭脳を通してユウマに声を届ける。
元ネタは『初代マン』の「侵略者を撃て」でアラシ隊員の脳髄を借りて科特隊と対話したバルタン星人かな。
従来のウルトラシリーズだとユウマとビオルノの会話はインナースペースのような不思議な空間で行われたと思うが今回は現実世界にあるSKIP星元市分所が舞台となった。
映像ではユピーよりビオルノの姿が前に出ているので気にならないが、実際は可愛らしいユピーからビオルノのイケメンボイスが出てきていると言う想像したらちょっと可笑しい場面になっているはず。
辻本監督によるとビオルノはルティオンの「上司」と言うより「同志」との事。
最終章にウルトラマンの仲間が地球に来ると言ったら『初代マン』の「さらばウルトラマン」に登場したゾフィーや『セブン』の「史上最大の侵略 前編」「史上最大の侵略 後編」に登場したセブン上司等を思い出すがそれとはちょっと違うようだ。
そう言えばウルトラシリーズは最終章に仲間のウルトラマンが登場する事は昔からよくあるが「主人公より上の立場ではないウルトラマンが最終章に登場する」と言う展開は意外と思い浮かばない。『パワード』の「さらばウルトラマン」に登場した「パワードの友達」あたりかな?
ビオルノによると恒星ソニアの膨張を食い止める糸口を掴んだのだが不確定要素が含まれている為、ゼ・ズーは不確かな方法にすがるより地球が犠牲になっても自分達は確実に助かるゼ・ズー ゲートの使用を強行しようとしているらしい。
ビオルノ達が見付けた恒星ソニアの膨張を食い止める手立てがどのようなものなのか分からないが、ゼ・ズー達が全面協力していたら不確定要素は無くなったと言うような事は無かったのかな?
ゼ・ズーが自分達が協力しても不確定要素は無くならないと判断したのならゼ・ズー ゲートの使用を強行しようとする気持ちも分からなくはないが、もし、ゼ・ズーが自分の案以外は最初から受け入れられない狭量な人物だったらゼ・ズーの正当性は揺らぐ事になる。
「さまよえる未来」で無くなったと思われたオニキス=ゼ・ズー ゲートは実はユウマの中にあった。
ギャラクシーアーマーにオニキス=ゼ・ズー ゲートの能力が含まれていて、アークのアイテムはユウマが生み出していたのでこれは予想が出来たかな。
ユウマがトリゲロスに狙われている事を理解したシュウさんは「君を失いたくない」と呟く。
シュウさんがこのような発言をしたのはユウマから多大な影響を受けたと言うのもあるが、シュウさんの以前の仲間が宇宙人に殺されたと言うのもあると思われる。
物語序盤のシュウさんは「仲間を殺された」為に「宇宙人に対して「警戒」の気持ちを強く持つ」となっていたが様々な話を経て宇宙人への怒りや憎しみより「仲間に対して「守る」と言う気持ちを強く持つ」に変わっていったところがある。
ユウマは皆の未来を守る為には走り続けるしかないと思ってSKIPに入隊したが、自分の力ではどうにもならない事ばかりで、SKIPの皆が一緒だったから立ち止まらずに済んだと語る。
「想像力を解き放て!」でユウマのSKIP初仕事の日はアークに初めて変身した日でもあったとなっている。つまり、ユウマはSKIPとしてウルトラマンとして戦ってきたこれまでの日々を「自分の力ではどうにもならない事ばかりだった」と言っている事になる。
SKIPの活動でユウマの怪獣に関する知識はかなり役に立っていたし、アークの戦いもユウマの想像力で勝利を掴んだ事が何度もあったのに、ユウマ自身はそれらを「自分の力ではどうにもならない事ばかりだった」と考えていた。
こちらが思っていた以上にユウマの自己評価が低かった事に驚くが、自己評価の異常な低さも一種の自己虐待と考えると、それだけ子供の時に両親を残して自分だけ生き残ってしまった事がユウマの心を傷付けていたと言う事かもしれない。そう考えると、ユウマがトリゲロスから逃げるシュウさんの車から降りて一人でトリゲロスに向かっていく流れがちょっと怖くなる。
ユウマはモノゲロスの襲来で両親を失って自分だけが生き残ってしまった後、今度は皆を守る為にSKIPやアークとして戦い続けたが、ここにきて自分の中にオニキスがある為にトリゲロスが襲来して皆が危機に陥ってしまった。この状況からの一人でトリゲロスに向かっていくのは自己虐待の末の自殺行為に近い。そう考えると、この後のトリゲロス戦でアークが磔にされるのはユウマが自分自身に課した「罰」や「死」と見る事も出来る。
トリゲロスが使用するトリゲロスフープはこれまでに無かったタイプの武器で印象に残るものであった。
アークの危機に冷静さを失うシュウさんの場面が良い。
『アーク』は人物が感情的になって声を荒げる場面が少ないので今回の感情的になってしっちゃかめっちゃかになってしまったシュウさんの場面が印象に残る事になった。
又、シュウさんが感情的になって混乱してしまったからこそ、感情的になっても決して混乱はしなかった伴所長の頼もしさも引き立つ事となった。
アークの絶体絶命の危機に救援にやってくる防衛隊。
まさかここまで活躍があるとは思わなくて驚いた。
ここまで来たらチラッとでもパイロット達の名前や顔が出ても良かったかなと思うが、「名前や顔が出てこない人達も思いは主人公達と同じ」だからこそ良いと言うのもあるので難しいところ。
今回の防衛隊の活躍を見て改めて思ったが、ウルトラマンと地球人が助け合う場面を描くとなったら、やっぱり戦闘機や巨大ロボットと言った戦力を持つ組織はあった方が良いのかな。