帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『モスラ対ゴジラ』

モスラ対ゴジラ
1964年4月29日公開
脚本 関沢新一
特技監督 円谷英二
監督 本多猪四郎

 

ゴジラシリーズの第4作」であるが「『モスラ』の続編」と言った方がしっくりとくる内容になっている。

 

ゴジラモスラについては過去の作品で色々と語られているからか、本作では怪獣に関する調査や説明の場面がかなり少なくなっていて、代わりに人間達のやりとりが多くなっている。

 

映画の前半では虎畑や熊山と言った悪役だけでなく主人公の酒井や中西も自己中心的な人物として描かれていて、自己中心的ではないが小美人ですらインファント島以外の人間を信じられなくなって酒井達の救援要請を一度は断っている。
それが物語が進むにつれて中西達は社会や人々の為に動くようになって一つにまとまっていき、最後は名も無い人々とも力を合わせてゴジラから子供達を助けに行く事になる。一方で虎畑達は最後まで自己保身や自分の利益と言ったエゴを捨てる事が出来なくて最終的に自滅する事となった。

 

虎畑役の佐原健二さんの悪役演技が実に素晴らしい。正義の役が似合う人だけれど、個人的には佐原さんの憎たらしい演技が大好きなので、本作の見所の一つとして挙げたい。

 

本作は「正義対悪」の構図で語られる事があって実際に「正義のモスラと悪のゴジラ」「正義の酒井達と悪の虎畑達」と言う構図になっているのだが、本作は単純な「正義対悪」の構図で終わってはおらず、「マスコミの力について意見をぶつける酒井と中西とデスク」「お互いに利用し合おうとしている虎畑と熊山」と正義側も悪側も各々の主張や思惑がぶつかる内容となっている。

 

台風で浸水した伊勢湾の干拓地を排水すると地面からゴジラが姿を現す。
前作の『キングコング対ゴジラ』でゴジラは熱海の海中に姿を消したが、そのゴジラが地中に入って伊勢湾まで移動したのかな?

 

「キンゴジ」と並んで人気がある「モスゴジ」が登場。
名古屋に現れたゴジラは「テレビ塔に尻尾が挟まって暴れる」「名古屋城のお堀につまずいて倒れた勢いでそのまま城を破壊する」と全体的に「街にある建物が邪魔で暴れてしまう」となっている。
名古屋にいる人達はたまったものではないだろうが今回のゴジラは猫や犬と言った動物を思わせる動きをしていてキンゴジとはまた違った可愛さがあった。

 

虎畑と言う日本政財界の大物ですらゴジラが建物の近くを通りかかった時の尻尾の一振り二振りで呆気なく命を落としてしまう。
ゴジラと言う怪獣の強大な力を感じる場面であった。

 

モスラ』の時と比べてインファント島の自然が失われていて原水爆実験の放射能の恐ろしさを改めて感じた。

 

モスラゴジラの戦いは羽ばたきでゴジラが踏ん張れないほどの強風を起こすわゴジラの尻尾を掴んで引きずるわ放射熱線を受けないようにゴジラの背後を取るわと親モスラのパワーとスピードに驚かされる。
もしモスラが万全の状態で戦えていたらゴジラの放射熱線を直接受けるような事も無くてあのまま圧勝していたのかなと思える。

 

撮影のアクシデントかもしれないが夜中に自衛隊の攻撃を受けたゴジラの頭部が燃え上がったのが格好良くて好き。

 

ゴジラシリーズに何度か登場する高圧電流による攻撃は今回はなんと最大3000万ボルトとなっている。10年前に公開された『ゴジラ』では5万ボルトだった事を考えると少年ジャンプのバトル作品もビックリなインフレ具合である。

 

高圧電流による攻撃はゴジラに対してかなりの有効打であるがゴジラに1分ほど我慢されて装置を破壊されたら終わってしまうと言う弱点があった。なので今回の「頭にかけられたものを取り外す」と言う行為を普段はしていないはずのゴジラに特殊帯電ネットを被せて長時間に亘ってゴジラに高圧電流を浴びせたのは見事であった。
結局は電圧を無理に上げたせいで装置が故障してゴジラに破壊されてしまうのだが、あのまま電圧を無理に上げないでゴジラに高圧電流を浴びせ続ける時間を長くしていたらゴジラに致命傷を与えて場合によっては倒せた可能性もあったと思われる。なんとも悔やまれる判断ミスであった。

 

名古屋を破壊した時のゴジラの動きは動物的でちょっと可愛いところがあったのだが、終盤の岩島に向かったゴジラの場面では動物的な動きが抑えられて怖い感じになっていた。

 

卵から孵った新たなモスラはなんと双子であった。
「生まれたばかりのモスラゴジラに勝てるのか?」と言う疑問に「双子で二対一なので数的に有利」と言う答えを持ってきたのはなるほどと思わず唸った。

 

二対一とは言え生まれたばかりの幼虫モスラゴジラに勝てるのか?と思って見たら「岩山を盾にしてゴジラの放射熱線を受けないようにする」「ゴジラは同時に二つの場所を攻撃出来ないので二手に分かれて戦う」と見事な作戦で完勝を収めた。

 

幼虫モスラが吐いた糸でゴジラは上半身をグルグルに封じられてしまう。先の自衛隊との戦いで帯電ネットを頭に被せられた時に判明した「ゴジラは腕が短いので頭にかけられたものをすぐに取り外す事が出来ない」はこの幼虫モスラ戦に向けた伏線でもあったのかな。

 

実はゴジラモスラの戦いはどちらが正義でどちらが悪と言うものではなかったりするのだが「逃げ遅れた子供」を出す事で結果的に子供達を危険にさらしたゴジラが悪で子供達を助ける事になったモスラが正義と観客が感じるように誘導したのは娯楽作品として上手い作りだったと思う。

 


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