帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『三大怪獣 地球最大の決戦』

『三大怪獣 地球最大の決戦』
1964年12月20日公開
脚本 関沢新一
特技監督 円谷英二
監督 本多猪四郎

 

ゴジラシリーズの第5作。
ゴジララドンモスラの地球三大怪獣が力を合わせて宇宙超怪獣キングギドラと戦う娯楽編となっている。

 

オープニングではゴジララドンモスラが登場し、キングギドラもチラッと姿が現れる等、キャラクターを前面に押し出したものとなっている。

 

宇宙円盤クラブや金星人と言った宇宙関係の設定が登場するが「脳波信号」「予言者」「次元の裂け目」「金星人の本能」と言ったちょっとオカルトチックな感じになっている。
宇宙円盤クラブの人が「脳波信号」と言う言葉を出してきた時は「大真面目にそういう事を言う人達が出てくる作品なのか……」とちょっと頭を抱えたが、その後の小美人の場面でこの世界では既にテレパシーの存在が証明されていた事を思い出して、脳波信号を受け取った宇宙人が小美人のような性格だったら円盤に懐疑的な直子を警戒して呼びかけに応えなかったのも理解出来るようになった。

 

本作の主人公である新藤兄妹は東宝特撮怪獣作品では意外と珍しい兄妹の主人公コンビ。
自分は昭和の東宝特撮怪獣作品によくある軽口を叩き合う男女の主人公コンビが好きなのだが、今回は兄妹と言う事でいつも以上に遠慮が無いやりとりになっていて面白かった。

 

ボーイッシュな金星人の格好が自分好み。
本作の若林映子さんは一見すると男性か女性か分からない金星人と美しいサルノ王女と言う全く違うキャラクターを演じた。
本作の人間ドラマは『ローマの休日』をモチーフにしているらしいが、王女が普通の女の子になるのではなくて金星人になってしまうところがさすが東宝である。

 

金星人の使命は一人でも多くの地球人に危機を知らせる事であった。
それならもう少し具体的に分かりやすく危機を知らせてほしい。(この分かりにくさのおかげでサルノ王女の暗殺を企む男達は金星人とサルノ王女が同一人物なのかどうか確信するまで時間がかかって暗殺に失敗する事になるのだが)

 

阿蘇からラドンが登場する。
今回のラドンは『空の大怪獣ラドン』に登場したつがいの子供か、それともあの時点ではまだ卵から孵っていなかった個体が他にいたのか。
金星人が「復活」と言う言葉を使っているので実は『空の大怪獣ラドン』に登場した個体が復活した可能性もある。

 

「あの方はどうしているのでしょう?」と言うTV番組に出演する小美人。
モスラ』『モスラ対ゴジラ』であった事を考えると小美人がTV番組に出てマスコミの取材に応じてくれるほど日本人を信じてくれるようになった事に感動する。『モスラ対ゴジラ』の酒井達が頑張ったのかな。

 

モスラ対ゴジラ』で双子だったモスラは一体が既に死んでしまったとの事。
生まれたばかりでゴジラと戦ったのはやはり負担が大きかったのかな。

 

ゴジラアンギラス、メガヌロン、ラドン、バラン、モスラ、マグマ、キングコング、マンダとこれまで登場した地球怪獣は口から熱線を吐く等の特殊能力を持ってはいるが姿形は既存の生物に近いものであった。しかし、ドゴラやキングギドラと言った宇宙怪獣は我々が地球で見てきた生物とは違った姿形をしていて地球とは違う場所で誕生した事が分かるようになっている。

 

ドゴラはそれまでの地球怪獣とは違った新しい姿形をしていたが全体的にインパクトに欠けるところがあった。それに対してキングギドラは「全身が金色に光り輝いている」「三つ首」「隕石から現れた炎が実体化する」「口から光線を吐く」と印象に残る姿形や場面があってドゴラにあったインパクト不足と言う課題を見事に解決している。

 

ゴジラは口から熱戦を吐く」「ラドンは高速で移動し、空から攻撃する」と言うのを見せた後で「キングギドラは口から光線を吐き、空から攻撃出来る」とキングギドラゴジララドンを合わせた能力を持っているとして強敵感を見せつけた。

 

前作の『モスラ対ゴジラ』では「モスラは幼虫でも二体がかりならゴジラを倒せる」となっていたが本作ではモスラが一体だけになっているので確実にゴジラに勝てる状況ではなくなっている。
又、本作の中盤ではゴジララドンの戦いが繰り広げられるが、「ゴジラは尻尾や岩でラドンを地面に落とせば勝つ事が出来る」「ラドンは素早くゴジラの背後に回って頭上から攻撃すれば勝つ事が出来る」とどちらも自分に有利な条件に持ち込めば勝てるとなっている。
このようにゴジララドンモスラの実力に大きな差は無いとした事で「実力が近いライバル達が宇宙からの危機を前に協力する事になった」と言うシチュエーションが完成した。
自分はバトル作品は主人公一人の実力が抜きん出ているより主人公と同じくらいの実力者が何人かいる方が好きなので本作でゴジララドンモスラの実力が殆ど同じだったのは嬉しかった。

 

ゴジラが言った「我々が人間を助ける理由は何も無い。人間はいつも我々をいじめているではないか」は正しい。ゴジラからしたら人間達の水爆実験によって怪獣に変えられ、地上に姿を現したら問答無用で人間達から攻撃され続けたのだから、そんな人間達を助ける理由はどこにも無い。
ゴジラの言葉に「そうだそうだ」と言っているようにラドンも『空の大怪獣ラドン』で人間達の攻撃によって命を落とした個体がいるわけだし、小美人とモスラも『モスラ対ゴジラ』で人間不信に陥って人間を助けるのを躊躇した時期があった。モスラの説得にゴジララドンが反対した事について「分からず屋」と人間が憤っていたが、ハッキリ言って人間にゴジラ達を批判する資格は無い。

 

小美人が人間全てが悪人ではないと思えるようになったのは『モスラ』の福田達の存在が大きかったと思われる。小美人とモスラキングギドラの脅威を危険視ししてゴジララドンを説得していなかったら地球は金星のように滅びていた可能性があったと考えると『モスラ』で福田達が小美人をネルソンから助け出した事は回り回って人間達を滅びから助け出す事になっていたと言える。

 

本作では『キングコング対ゴジラ』と同じように怪獣の動きが擬人化されていて、喧嘩大好きな悪ガキ二人な感じになったゴジララドンが可愛いかった。
そして一番大人しくて弱そうなモスラが相手の顔に繭の糸を吐きつけると言う実力行使でゴジララドンの喧嘩を無理矢理止めるのが面白かった。このゴジララドンモスラの力関係が面白かったのでこのトリオのやりとりはもっと見たかった。

 

怪獣の中では小さい方だとは言えそれでも体重が数千トンはある幼虫モスラキングギドラの引力光線で軽々と吹き飛んだ場面はインパクトがあった。

 

これまでの作品ではゴジラは心を通わせる存在がいなかったので、モスラのピンチを見たゴジラが急いで助けに向かい、尻尾を使ってモスラの移動を助けた場面は感慨深いものがあった。

 

三大地球怪獣とキングギドラの戦いは「ゴジラの耐久力ならキングギドラの引力光線の直撃を受けても耐えられる」「ラドンの飛行能力なら空中戦でキングギドラ相手にも負けない」「モスラの吐く糸ならキングギドラの動きを封じる事が出来る」とゴジララドンモスラの能力を上手く活かした展開になっていた。

 

ゴジララドンモスラの三体を相手にしていながら全く見劣りしない強さと存在感を見せつけたキングギドラはさすがであった。

 

本作も『宇宙大怪獣ドゴラ』と同じく怪獣の話と人間の話が並行して描かれているが、本作も『宇宙大怪獣ドゴラ』と同じく怪獣をメインにして見るのではなくサルノ王女暗殺計画をメインにして「暗殺者達の計算が怪獣によって狂わされていく話」として見た方が色々と腑に落ちると思う。

 

戦いが終わってインファント島に帰るモスラを見送るゴジララドン
本作はゴジラシリーズで初めてゴジラが倒される事無く話を終えた作品となり、以降のゴジラは人間にとって脅威の存在ではなく宇宙怪獣や侵略者と言った脅威と戦うヒーロー的なキャラクターへと変わっていく。

 

*「東宝チャンピオンまつり」では本作は『ゴジラモスラキングギドラ 地球最大の決戦』と言うタイトルになっている。ラドン……。


www.youtube.com